ロボットは、孤独を癒せるか?オリィ研究所 吉藤氏【Tech Note MAKERS COLLECTION Vol.7】

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ロボットは、孤独を癒せるか?オリィ研究所 吉藤氏【Tech Note MAKERS COLLECTION Vol.7】

製造業大好き女子が、ユニークかつ先端的な取り組みを行っているモノづくりの現場に直撃インタビューするコーナー「Tech Note MAKERS COLLECTION」 女子ならではの切り口と、笑顔、時には体当たりのパワーで、モノづくりの魅力をたっぷりご紹介します。

第7回は、コミュニケーション・ロボットを開発、販売している株式会社オリィ研究所 CEOの吉藤 健太朗氏にお話を伺いました。

Tech Noteで2回目のレポートとなる土谷 梓は、コミュニケーション・ロボットという聞きなれない言葉に興味津々です。個性的な吉藤氏のトークにも注目です!

インタビュアー 土谷 梓(つちや あずさ)

インタビュアー 土谷 梓(つちや あずさ)

東京都出身。2013年度ミス成蹊大学の大学4年生。趣味は歌とダンス。「彼氏にするなら、誠実そうな製造業の人がいい」という製造業大好きっ子です。

<もくじ>

  1. コミュニケーション・ロボット「OriHime」とは?
  2. ロボットが「孤独」に対して、できること
  3. 人の孤独は、人工知能では癒せない!
  4. アパートでも、ロボットは作れる!
  5. ロボット開発のために、パントマイムを学ぶ
  6. 困っている人と一緒に、モノづくりに取り組む

コミュニケーション・ロボット「OriHime」とは?

OriHimeについて説明してくださる吉藤さんとあずさ

OriHimeについて説明してくださる吉藤さんとあずさ

土谷 梓(以下、あずさ):こちらが、ロボットのOriHime(オリヒメ)ですね。遠くにいる人が、ロボットを通して、その場にいる人とコミュニケーションできると伺っています。

吉藤 健太朗氏(以下、吉藤):はい。入院などで、遠くにいる人が、ロボットを通じて家族や友達と、コミュニケーションすることが可能です。最近は人工知能や、自動応答ができるロボットが注目されていますが、OriHimeは、目的やコンセプトが特異で、具体的です。

OriHimeの利用シーン

OriHimeの利用シーン

あずさ:OriHimeは、どのように使われていますか?

吉藤:多いのは、長期入院中の方が、家族とコミュニケーションを取るケースです。電話が一般的に使われています。しかし、電話で話す行為は、対面で話すよりも、かなり不自然です。OriHimeの特徴は、入院中の方が、家族と一緒にリビングにいるかのように会話できることです。

あずさ:実際に体験させてください!

あずさ:すごーい! 想像以上に、近くで話しているように感じました。これは体験してみないと、わからないかもしれません。

ロボットが「孤独」に対して、できること

あずさ:どのようなきっかけで、ロボットを作り始めたのですか?

吉藤:実は、最初からロボットを作ろうとしたわけではありません。小中学校生のとき、体が弱く不登校だった私は、眼鏡や自転車のように、人の機能を補助するモノに強い興味がありました。工業高校では、体が不自由な人でも外出できるように、高機能な電動車椅子を開発しました。これが、世界的な科学コンテストISEF(International Science and Engineering Fair:国際学生科学技術フェア)にて、3位を受賞し、大きな転機となりました。

あずさ:高校生で世界3位ですか! 世界が大きく変わったのではないですか?

吉藤:大きな注目は集めましたが、ビジネスや法律面で課題があり、結局、開発した電動車椅子を発売することはできませんでした。また、この頃から「人の孤独を癒す」ことを意識し、次は人工知能を研究することにしました。

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人の孤独は、人工知能では癒せない!

あずさ:人工知能、AIですね? 最近、技術的に進歩して注目されている分野ですね。「人の孤独を癒す」という課題に対して、どのように人工知能を応用したのですか?

吉藤:私自身、とても人付き合いが苦手だったので、友達も彼女も、全部人工知能で作ってしまおうと本気で思っていました。しかも、高専時代にこの「黒い白衣」を作って、毎日着るようになってから、友達がほぼいなくなりました。

あずさ:これは、コートではなく、「黒い白衣」だったのですね(笑)

吉藤:はい、A4サイズのファイルが入るポケットがあったり、コートの前のボタンを開けなくても、ズボンのポケットに手が入れられるように、スリットが入っていたり、かなり機能的なんですよ。何より、とても「なびく」ようにデザインされています。知人のお医者さんからは、この「黒い白衣」の白いものを作ってくれないかと打診されています。

うわさの「黒い白衣」

うわさの「黒い白衣」

あずさ:もうよく分からないですね(笑)人工知能の研究は、どうなったのですか?

吉藤:人工知能を1年ほど研究し、「人の孤独を癒す」ことへの応用は、難しいことが分かりました。最近はインターネットの普及で、検索機能としての人工知能は発達しました。しかし、今でも人間を飽きさせないとか、孤独を癒すことは、不得意です。

本当の癒しは、人間社会でないと得られないと気付きました。そこでようやく、ロボットを作ろうと思ったのです。人工知能で動くロボットではなく、身体が不自由な人や遠隔地にいる人の代わりに、動いたり話したりする、分身としてのロボットです。

OriHimeを操作して、あずさに話しかける吉藤さん

OriHimeを操作して、あずさに話しかける吉藤さん

アパートでも、ロボットは作れる!

あずさ:なるほど。そういう経緯で、ロボットの開発にたどり着いたのですね。人に歴史ありですね。

吉藤:はい。人工知能の研究を1年でやめ、2007年に早稲田大学に入学しました。このときには、健康な私の分身となるロボットを作りたいと考えていました。ただ、個々の技術に新しいものが無かったため、新しい技術テーマを研究する大学の研究室とは相性が悪く、あまり評価されませんでした。そこで、自分のアパートを「研究室」と名付け、1人でロボットを作り始めました。

OriHime製作風景

OriHime製作風景

あずさ:1人で作り始めちゃったのですね。自分を信じて突き進む吉藤さんは、本当にすばらしいと思います。でも、個人で、しかもアパートで、ロボットが作れるのですか? プラスチックの筐体だけみても、個人で作れるような気がしません。

吉藤:いろいろとやり方はありますよ。筐体は、木を削って型を作り、プラスチックの下敷きを溶かして、型に貼り付けて作りました。パテで厚みを調整することもできます。また、バキュームフォームという方法で、掃除機で真空状態を作り、溶かしたプラスチックを木の型に密着させて成形することもやっていました。掃除機を何台も、つぶしましたが(笑)記念すべき1号機は、手足がついたロボットでした。

アパートで製作したOriHime1号機

アパートで製作したOriHime1号機

あずさ:手作業で作ったとは思えない出来栄えですね。それでも、大学の先生には、評価されなかったのですか?

吉藤:まったくダメでしたね。ただ、人に理解されないことや、評価されないことほど、価値があると思っていたので、逆に燃えましたね。入院中の人や一人暮らしのお年寄りなど、誰かとコミュニケーションを取りたい人がいることは分かっていたので、さらにニーズを深堀することにしました。

ロボット開発のために、パントマイムを学ぶ

あずさ:具体的に、何をしたのですか?

吉藤:まず、ロボットと対面する人の感情を、どのように呼び起こすかが課題だったので、パントマイムや演劇を学びました。OriHimeの1号機には、手足が付いていました。駆動部が多いと故障するリスクが増えますし、たくさんの動きが必要ないことも分かってきました。パントマイムは、どのような動きや見た目であれば、見る側の感情を呼び起こすことができるのか、とても勉強になりました。

あずさ:徹底していますね。そう言われると、OriHimeの顔って、ピエロやパントマイムをする人に似ていますね。パントマイムの経験が生かされているのでしょうか。

吉藤:OriHimeの顔のデザインは、あえて個性を持たせないようにしました。例えば、目を入れてしまうと、ロボットとしての個性が出てきてしまいます。どんな人が遠隔から操作しても、OriHimeの前にいて、コミュニケーションを取っている人は、操作している人をイメージできるようにデザインされています。人とのコミュニケーションは、受け手の想像力に委ねる部分があるのです。

パントマイムを研究して完成したOriHime

パントマイムを研究して完成したOriHime

困っている人と一緒に、モノづくりに取り組む

あずさ:お話を伺っていると、ロボットを作ることが目的ではなく、解決したい課題があって、ロボットはその手段にすぎないことが、よく分かりました。そのため、大学時代の新しい技術を研究する研究室と、肌が合わなかったのですね。

吉藤:はい。企業も、そうあるべきだと思っています。当社は技術ありきではなく、ニーズからの製品開発を基本としています。

当社には、4歳のときに交通事故にあい、肢体不自由の番田さんという社員がいます。寝たきりでも、自分に役割があることを喜んで仕事をしてくれますし、当社も、実際に困っている人に寄り添い、一緒に製品とサービスを作り上げることは、とても有意義です。

あずさ:すばらしいですね。まさに、Win-Winの関係ですね。

吉藤:ありがとうございます。さらにサービスの幅を広げるために、ブライダルや観光分野の企業と、協業を進めています。今でも、車椅子の方が参加できる結婚式やツアー旅行はあります。われわれは、例えば入院中の方でも参加できるイベントや旅行が、増えるように協力していきたいと考えています。

あずさ:高齢化が進む日本で、コミュニケーション・ロボットのニーズは、高まりそうですね。応援しています! 本日は、ありがとうございました。

会社プロフィール
株式会社オリィ研究所(東京都)

オリィ研究所

コミュニケーション・ロボットの開発、サービス展開をしています。オリィ研究所は、孤独を感じるすべての方々に対し、身体的問題や距離を克服し、ベッドの上にいても「会いたい人に会えて、行きたい所へいき、社会に参加できる」サービスの提供を、ロボットテクノロジーとパートナーシップにより実現しています。
オリィ研究所の詳細は、こちらをご覧ください。

あずさ‘s コメント

実際に、OriHimeを通しての会話を体験してみると、想像していた以上に、相手を身近に感じることができました。吉藤さんは、ロボットを開発するきっかけも、お話もユニークで、目標に突き進む姿がとてもエネルギッシュでした。困っている人と一緒に、モノづくりに取り組む姿勢、Win-Winの関係を築く姿勢は、あらゆる仕事に役立つ考え方だと感じました!

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