産業用ロボットが熟練技術の担い手に!?リンクウィズ 吹野氏【Tech Note MAKERS COLLECTION Vol.9】

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産業用ロボットが熟練技術の担い手に!?リンクウィズ 吹野氏【Tech Note MAKERS COLLECTION Vol.9】

製造業大好き女子がユニークかつ先端的な取り組みを行っているモノづくりの現場に直撃インタビューするコーナー「Tech Note MAKERS COLLECTION」。女子ならではの切り口と、笑顔、時には体当たりのパワーで、モノづくりの魅力をたっぷりご紹介します。

第9回は、産業用ロボットのシステム開発や技術コンサルティングを行うリンクウィズ株式会社代表取締役の吹野 豪氏。ソフトウェアエンジニアからキャリアをスタートし、経済産業省の「グローバル起業家等育成プログラム」で20人に選ばれてシリコンバレーに派遣されるなど、ユニークな経歴を持つ吹野氏に、これからの産業用ロボットについて伺いました。

Tech Noteレポーターの福田りえは、久々に製造現場の取材で、元製造業女子の血が騒ぎっぱなしでした!

福田りえ

インタビュアー 福田 りえ

静岡県出身。製造業(自動車下請け会社)に4年半勤務経験あり。 特技は走ること、おやじギャグ。過去の経験を活かしながら、製造業の皆さんのさまざまな取り組みを「実践形式」で、楽しくわかりやすくお届けします。ご覧になる皆さんの息抜きや、アイデアのヒントになるような記事にしていきたいと思ってます!

<もくじ>

  1. ソフトウェアで広がる産業用ロボットの可能性
  2. 産業用ロボットの用途は「単純作業」から「頭を使う作業」へ?
  3. データが製造現場を変えていく
  4. 2週間のシリコンバレー滞在で学んだこと

1. ソフトウェアで広がる産業用ロボットの可能性

溶接ロボットシステム

溶接ロボットシステム

福田 りえ(以下、りえ): リンクウィズは、産業用ロボットのシステム開発を行っていると伺いました。早速見せていただけますか?

吹野 豪氏(以下、吹野):こちらが、溶接ロボットです。

りえ:速い! 想像していたより、すごく動きが速いです。そしてとても正確に動きますね。

吹野:最近のロボットは、価格の割にとても高性能になりました。当社では、ロボット自体の性能に加えて、センサーとソフトウェア技術を駆使しています。例えば従来のロボット技術であれば、溶接を開始する位置から終了するまでの位置と、その経路を手動でセッティングする必要がありました。

しかし、当社のシステムでは、アーム先端のセンサーで自動的に溶接対象の位置を把握し、その3次元計測データをもとに、ロボットがリアルタイムで溶接位置を認識し、溶接します。細かい調整を人間が行う必要がないので、溶接時間が短縮されて、熟練作業者でなくても使えます。

溶接アーム先端のセンサー

溶接アーム先端のセンサー

センサーが計測した3D計測データ。ツールはリンクウィズオリジナル

センサーが計測した3D計測データ。ツールはリンクウィズオリジナル

りえ:賢いロボットですね! そういった技術は、すでに製造業の現場に普及しているのでしょうか?

吹野:徐々に普及し始めています。最近の産業用ロボットの発展を支えているのは、ソフトウェア技術です。私のように、ソフトウェアのエンジニアだった人間にとって、モノづくりの現場は、まだまだ発展する伸び代があると考えています。

りえ:吹野さんは、もともと製造業の方ではなかったのですか?

吹野:製造業とは関係の深い3次元スキャナーやCADシステムを開発していました。ソフトウェア専門の人間にとってうれしいことに、最近ではロボットのハードが安くなり、第3者が制御しやすくなりました。これまでの産業用ロボットは、ロボットメーカーとクライアントだけで工場のラインを作っていました。これからは、われわれのようにソフトウェアの知見を駆使した産業ロボットの「システム」を提供する企業が必要とされています。

2. 産業用ロボットの用途は「単純作業」から「頭を使う作業」へ?

溶接の位置設定は結構大変です

溶接の位置設定は結構大変です

りえ:産業用ロボットを導入する企業は、具体的にどのような効果を望んでいるのでしょうか?

吹野:これまでの「産業用ロボット」には、とにかく単純作業を早く安くやらせるイメージがありました。ロボットは、全く同じ動きを繰り返していました。一方、最近活躍しているロボットは、先ほどお見せしたように、溶接する位置を自分で毎回考えて少しずつ異なる動きをします。

そうやって、単純な反復作業ではなく、これまで人間が行っていた頭を使う作業もロボットが行えるようになりました。つまり、従来よりも、熟練度が必要とされる作業や、製造の工程を抜本的に変えるような作業が、ロボットに求められています。

りえ:ロボットが製造の工程を変えるとは、どのような意味ですか?

吹野:例えば、板金のプレス加工では、どうしても反りが発生してしまいます。上下どちらに反りが発生するかは毎回異なります。次の工程が非熟練者や単純作業のロボットによる作業の場合、反っている板金を扱うのは非常に難しいです。そのため、高額な治具を使って、そもそも反りが発生しないようにしていました。

ところが、ロボットが毎回異なる反りの方向を見極め、その誤差を補正するような作業を行えば、問題は解決します。高級な治具も熟練者の技術も、どちらも必要無い工程を作ることができるのです。

りえ:なるほど! 吹野さんのロボットは、人間であれば頭を使う作業もできるのですね。ロボットに任せることができる作業の範囲が、広くなってきたといえるのでしょうか。

吹野:そうですね。ここ数年の製造業の課題は、団塊の世代がリタイアすることに伴う技術の喪失と、その技術を継承する若者が不足していることです。今後の産業用ロボットの意義としては、単純労働の担い手ではなく、技術継承の担い手になってくるのではと思っています。

溶接の保護メガネ!

溶接の保護メガネ!

NEXT:これからの製造業に求められるものとは?

産業用ロボットが熟練技術の担い手に!?リンクウィズ 吹野氏【Tech Note MAKERS COLLECTION Vol.9】

3. データが製造現場を変えていく

オフィスに移動してお話しを伺いました!

オフィスに移動してお話しを伺いました!

りえ:スマートな産業用ロボットは、どのような作業が得意ですか?

吹野:溶接の位置ずれ補正や、プレス加工の反りに合わせた加工など、誤差を吸収するような作業が得意です。あとは、センサーを多用するので、必然的に収集できるデータも多くなります。これらのデータは生産性と不具合を分析するために非常に有益です。データを取得する価値がある重要な工程でも、ロボット化が進んでいます。

りえ:そうなると、ソフトウェアだけでなく、データ分析の専門家も必要になってきますね。

吹野:はい。これまでとは違った技術が、製造現場でも求められるようになります。現場の人は、新しい技術をどんどん受け入れていかなくてはなりません。心理的なストレスを減らすためには、システムUIの使いやすさや、オペレーションの専門家の存在が重要になります。

りえ:私も製造業で働いていたので、新しい仕組みの導入って、とても大変なのが分かります。正直なところ、ストレスになってしまうこともあると思います。

吹野:そうですね。製造業ではスピード感も求められます。現場がスピード感を持って、新しい技術を取り入れていける仕組みが必要だと感じています。

4. 2週間のシリコンバレー滞在で学んだこと

実はシリコンバレーから戻ったばかりの吹野氏

実はシリコンバレーから戻ったばかりの吹野氏

りえ:吹野さんは、最近まで経済産業省の事業でシリコンバレーに行っていたんですよね? いかがでしたか?

吹野:経済産業省のグローバル起業家等育成プログラムのシリコンバレープログラムに選抜され、2週間シリコンバレーに滞在してきました。

りえ:どんな企業を訪問したのですか? 日本の製造業との違いはありましたか?

吹野:セールスフォース、IDEO、テスラモーターズ、シリコンバレー・ロボティクス、日本からシリコンバレーに進出しているWHILLなどを訪問しました。製造業については、現場のレベルは日本の方が進んでいるなと感じました。ロボットやシステムが進んでいるのと、トヨタ生産方式(カンバン方式)のような人間による管理のレベルが高いです。

りえ:確かに、日本の現場は整理整頓も行き届いていて、とてもシステマチックですよね。企業訪問の他には、何をしましたか?

吹野:スタンフォード大学の学生とのディスカッションや現地でのプレゼンテーションの大会を行いました。カルチャーショックだったのは、シリコンバレーの学生にとって、AppleやGoogleのような大企業に就職することはダサい、あるいは単なる腰掛け期間と考えている学生が多いことです。これはシリコンバレーが特殊なのかもしれません。

チャレンジし(起業する)成功するという事がクールで学生時代から起業を目指している方が多かった気がします。それから、日本側のプレゼンに対して、「なぜスペック(機能)の話ばかりするのだ。その技術がどのように世界を変えるのか話してほしい」という意見が多かったです。シリコンバレーと日本の違いを感じました。

りえ:面白いですねー。起業や技術により、どのように世界を変えるのか。そこに興味があるんですね。リンクウィズが、日本や世界のモノづくりを変えていくことを楽しみにしています。

吹野:ありがとうございます! がんばります!

りえ:今日はありがとうございました!

楽しい取材でした!

楽しい取材でした!

会社プロフィール
リンクウィズ株式会社(静岡県浜松市)

リンクウィズ株式会社

リンクウィズ株式会社は、今までにないインテリジェントロボットソフトウェアを提供する会社です。3D CAD開発で培ったコアテクロノジーをベースに、ロボットが自動で物体認識する新しい価値を提供します。

詳細は、こちら をご覧ください。

<撮影協力>
大建産業株式会社(静岡県浜松市)
大型製缶加工、大型機械加工、設備・機械組立を中心に展開。
詳細は、こちら をご覧ください。

りえ‘sコメント

久々の製造業の現場で、とても楽しかったです! 工業用ロボットを見るのははじめてで、とても高性能であることに驚きました。どの企業も人材不足という話を聞くので、ロボットの活躍によって解決されるとうれしいです。