製造業に回帰したGEが、デジタル部門を立ち上げた理由とは?:日本能率協会2017ものづくり総合大会レポート

2017年2月15日~17日に開催された日本能率協会主催の「2017ものづくり総合大会」。2日目には、「GEのインダストリアル・インターネット ITを駆使した新たな製造業を目指して」というテーマで、GEデジタル(以下、GE)インダストリアル・インターネット推進本部長 新野 昭夫氏が講演を行いました。製造業に回帰するという方向性で会社を変革してきたGEが、2011年にデジタル部門を立ち上げました。その背景は何でしょうか?

GEデジタル インダストリアル・インターネット推進本部長 新野 昭夫氏

GEデジタル インダストリアル・インターネット推進本部長 新野 昭夫氏(写真提供:日本能率協会)

1. GEがデジタル化を進める理由

BtoCのビジネスモデルから抱く危機感

近年、AppleやUBER、Airbnbなど、ハードウェアをほぼ持たずにソフトウェアで利益を上げる企業が台頭しています。10年前には影も形もなかった企業が、タクシー業やホテル業の企業からシェアを奪い、利益を上げる破壊的なビジネスモデルを築いています。米国ではUBERの登場でタクシー会社が倒産しました。このような潮流は、BtoCに限った話ではありません。このように、ソフトウェアを武器にした企業が製造業に参入してくると、今までのシェアや利益が奪われてしまう可能性があります。そうなると、製造業は下請けになってしまうという危機感もあります。そこで、GEが率先してやらなければいけないという意識で、デジタル化を進めています。

ハードウェアの稼働率をいかに上げるか

AppleやUBER、Airbnbのビジネスモデルをインダストリー視点で見てみました。彼らのビジネスモデルは、ハードウェアの稼働率をいかに上げるかというものです。UBERは、運転する人と乗りたい人をマッチングさせ、車の稼働率を上げています。この点から、ハードウェアの稼働率アップにIoTソリューションを使えば、インダストリーに大きなビジネスチャンスをもたらすでしょう。これまで、GEはさまざま産業用機器を作ってきました。これらを作り続けてきた知見と、使用しているお客様のノウハウを組み合わせれば、新しいITを使ったサービスができるのではないかと考えています。

図1:GEが作ってきた産業機器の例

図1:GEが作ってきた産業機器の例

インダストリー事業の生産性が鈍化

生産性の視点からインダストリー業界を見てみました。直近5年(2011~2016年)のインダストリー業界の生産性は、年1%の伸びしかありません。しかし、1990~2010年の生産性は、年4%で伸びていました。この時期には、IT(ERPなど)を導入することで生産性を上げてきました。直近5年では頭打ちとなっています。しかし、IoTを進めているBtoCの企業を見てみると、直近5年では20~30%の伸び率となっています。いかにGEを含むインダストリーの企業がIoT技術を使いこなせていないということが分かるのではないでしょうか。

2. 工場のIoT化への取り組み

ソフトウェア開発会社の立ち上げ

GEは、2011年に米国にソフトウェアの拠点を設立し、ソフトウェア開発部隊としてスタートさせました。2014年までに約1,000名を採用し、そのほとんどが外部からの技術者やデータサイエンティストでした。狙いは、ハードウェアしか売ってこなかった企業の文化を、IT・デジタルに変えることです。2013年後半からクラウドビジネスにも力を入れ始め、2015年にGEデジタルが発足しました。数年間による試行錯誤の結果、IoTを提供する売り方は、普通の物売りとは違うということを実感しました。

ブリリアントファクトリーとは?

ブリリアントファクトリーとは、スマート工場のことです。GEには全世界で約430の工場があります。2016年では75か所の工場を選び、スマート工場化に向けた試行錯誤を行いました。コンセプトは、デジタルスレッドです。デジタルスレッドとは、設計から工場、サプライチェーン、アフターサービスをデジタルでつないで情報共有を行う考え方です。工場の情報をつなぐことで、どこに無駄があるのか明確になるため、さらなる改善が期待できます。現在では、どの工場でも5~10%の生産性向上がありました。

図2:ブリリアントファクトリーのイメージ

図2:ブリリアントファクトリーのイメージ

GEヘルスケア日野工場の改善事例

MRIやCTなどの医療用機器を作っている日野工場の事例を紹介します。日野工場は、改善の視点から評価をすると世界中のGEの工場の中でも、5指に入ります。元々改善がいき届いた工場なので、IoTを導入しても効果は見込めないのではないかといわれていました。しかし実際に、プロセスモニタリングツールを導入したところ、さらに改善が見られました。改善が進んでいる工場が多い日本では、IoTを導入することでより高い改善効果が見込めるのではないでしょうか。

今までの産業革命はリニアな成長(1、2、3のように1歩ずつ成長すること)をしてきました。しかし、IoTに関しては指数関数的な成長(1、2、4、8、16のように倍々で成長すること)になります。そのため、IoT導入を他社が成功してから自社も始めようとすると、その時には先に始めたところがさらに成功をする改善を行っています。そのため、GEはこれからも率先してIoT導入を進めていきます。

参考:ものづくり総合大会ウェブサイト