新規の部品購入時に大切なこと:永井さんのモノづくり海外進出見聞録4

委託先は自分の目で見極める!:永井さんのモノづくり海外進出見聞録1

更新日:2016年3月30日(初回投稿)
著者:TQM Labo コンサル代表 永井 守

この連載コラムでは、私が長期にわたり海外購入品の品質改善や品質保証に取り組んできた体験談を紹介します。最終回は、品質不良が発覚した際のメーカー側のモラルと、新製品購入時の必須管理ツール「品質計画書」について解説します。

1. 不良発生時のメーカーのモラルとは?

最初に紹介するのは、私が大手電気メーカーの香港事務所に駐在していたとき体験談です。台湾の部品メーカーから、プリント基板を購入することが決まりました。

本来、これまで取引のないメーカーから新たに部品を購入する場合、購入先の工場調査はとても重要です。同時に、品質に対する経営者の認識や、従業員のスキル、社員のモラルなども調査します。これらをクリアし製品の仕様が決定すると、工程監査を実施します。改善事項がすべて解消されると購入開始となります。

ところがこのケースでは、購入先の実態調査や工程監査を実施していませんでした。よくある話で、双方の責任者間のみで、購入契約が結ばれていたのです。そして、本来必要な事前調査のないまま、購入先メーカーの工場で、製品の立会検査を行いました。

立会検査では、基盤上や電気回路上にキズが多発し、すぐにロットアウトになりました。不良発生率は、40%! 工場を巡回すると、あらゆる工程で基板にキズを発生させる要因が見つかりました。例えば、4枚取りプリント基板をプレス金型で打ち抜き、分割する作業がありました。分割のたびに加工塵(じん)が発生します。それを除去しないで分割作業を続けていたため、次の基板にもキズが生じていました。

また、完成したプリント基板がベルトコンベヤーを通ってトレーに入るとき、先に入っていたプリント基板に当たり、やはりキズを発生させていました。このような工程ではキズ不良が発生することは当然です。購入が決定する前に工程監査を実施していれば、不良発生は防げたはずです。

何度か行われた立会検査では、毎回、キズ不良が検出されました。購入先メーカーの生産技術部門、製造部門の責任者に対し改善を要求しましたが聞き入れてもらえず、改善のないまま購入は中止になりました。この一件では、経営者および社員の意識やモラルが、品質に影響していることを痛感しました。また、購入決定前の工場調査や工程監査の重要性を再確認しました。

図1:工程監査項目 (監査後、改善が必要な項目を指導し、改善完了を確認後に購入を開始する)

図1:工程監査項目
(監査後、改善が必要な項目を指導し、改善完了を確認後に購入を開始する)

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2. 新規購入品は品質計画書で管理

最後に、自社では製造してない部品を海外のメーカーから購入した際の、成功事例を紹介します。海外メーカーからの購入方法には、次の3通りが考えられます。

  1. 自社が直接購入する方法
  2. 商社経由で購入する方法
  3. 国内メーカー経由で購入する方法

私が勤務していた電気メーカーでは、「3. 国内メーカー経由で購入する方法」によって、海外メーカーからLAN製品を購入していました。この方法を選んだ理由は次のとおりです。

まず、「1. 自社が直接購入する方法」は、直接購入なので中間マージンが発生せず、他の2つに比べて安価で済みます。しかし、自社が高度な評価技術を持たない製品や、これまで購入経験のない製品では、自社で評価基準の検討から行わなくてはなりません。したがって、評価漏れによる不良発生のリスクが大きいと考えられます。

「2. 商社経由で購入する方法」はどうでしょう。確かに、商社は輸入業務には慣れています。しかし、中間マージンが発生するため、価格が上がることは避けられません。また、商社は技術部門および品質管理部門を保持していないために、技術評価力や工程監査力の面でも力量が不足しがちで、最終的に客先クレームに発展するリスクを抱えています。

私たちが採用した「3. 国内メーカー経由で購入する方法」では、国内メーカーが量産評価および工程監査を行い、自社でも工程監査を実施して品質保証体制を確認します。さらに国内メーカーは輸入した製品の全数検査を行います。加えて自社でも出荷直前の立会検査を実施します。

このような新規製品の購入ステップは、信頼の高いマニュアルによって管理されている必要があります。それが「品質計画書」(表1)です。品質計画書は、「ISO/TS16949(自動車産業向けの品質マネジメントシステムの技術仕様)」が特に強く要求している5つのコアツールの1つで、以下のような項目があります。

  1. 立上げ計画会議の開催
  2. 購入仕様書の発行
  3. 国内メーカーによる評価結果報告会議の開催
  4. 海外メーカーが提出したQC工程図の書類審査
  5. 国内メーカーによる全数検査結果の報告
  6. 海外メーカーの工場に対する工程監査
表1:品質計画書の書式例
(新製品の発注から出荷までの工程で、実施すべき品質保証の計画と進捗を管理する)

表1:品質計画書の書式例 (新製品の発注から出荷までの工程で、実施すべき品質保証の計画と進捗を管理する)

私たちは、国内メーカーを経由してLAN製品を購入し、品質計画書を適切に運用することで、品質を高く保つことができました。そして、購入開始から1件の客先クレームも発生させることなく、部品購入を継続した実績を残しました。

いかがでしたか? 今回は、品質不良が発覚した際のメーカー側のモラルと、新製品購入時の必須管理ツールである「品質計画書」について解説しました。以上で、海外購入品にまつわる体験談を取り上げたコラムは終了です。参考になれば幸いです。ありがとうございました!