海外購入品の品質改善アプローチ:永井さんのモノづくり海外進出見聞録3

委託先は自分の目で見極める!:永井さんのモノづくり海外進出見聞録1

更新日:2016年3月17日(初回投稿)
著者:TQM Labo コンサル代表 永井 守

この連載コラムでは、私が長期にわたり海外購入品の品質改善や品質保証に取り組んできた体験談を紹介します。第3回は、かつて勤務していた大手電気メーカーで、海外部品の調達に携わっていたときの体験談です。不良発生の報告を受けてから、どのようなアクションを取ることで品質改善を成し遂げたか、2つの事例を挙げながら解説します。

1. 初めての調達で発生!台湾製フレキシブルプリント基板のバリ不良

私が大手電気メーカーに在職中、香港に駐在して東南アジア製部品の調達を行っていたときのことです。台湾のメーカーからFPC製品を購入することになりました。

FPCはFlexible Printed Circuitsの略で、フレキシブルプリント回路基板とも呼ばれます。薄いプラスチックに銅製の電気回路をプリントし、さらにその上にプラスチックを重ねたプリント基板の一種です。柔軟性があり、容易に折り曲げることができます。私は長年に渡って、品質管理業務を担当してきましたが、FPC製品については専門知識がありませんでした。また、勤務していた電気メーカーとしても、台湾からの購入は初めてのことでした。

台湾製FPCを調達するにあたり、私たちはいつもの通り、品質要求事項の確認を行いました。銅線回路がプラスチックから剥離しないこと、銅線部がさびないこと、銅線部の回路パターンが切れたり、欠けたりしないことなど多くの項目を確認しました。

また、これらを満たすために、製造ラインのちりやほこりの管理や、プリント回路の洗浄管理といった工程監査を実施しました。品質管理体制を確認し、すべての改善事項が解消されると、最後は、台湾工場での立会検査です。合格が出ると、FPC製品は、晴れて組立工場のあるフィリピンに出荷されました。

ところがその数日後、フィリピンの工場から、「バリ不良」が多発しているとの連絡が入りました。送られてきた不良サンプルを確認すると、プラスチックを金型で打抜いた際、加工部分に細かい繊維が発生していました。私はその不良サンプルを携え、台湾工場に向かいました。不良部位をメーカーに確認してもらい、改善を依頼しました。試行錯誤の末、ようやくバリが発生しない金型構造が完成しました。

すぐに量産再開としたいところでしたが、慎重策を選びます。再度の予期せぬ事態を考慮して、生産数量を徐々に増やす方法を採りました。その後、この台湾部品メーカーによるFPC製品は日本製よりも高い品質を実現するに至りました。日本製FPCとの発注割合が逆転し、原価低減に大きく寄与することができました。

2. 技術部門が決めてしまった!カナダ製LAN製品の製造不良

もう一つの事例は、カナダ製のLAN製品の購入です。こちらは、購入開始からすぐに、製造不良が発覚しました。他メーカーから部品を購入する場合、特に海外メーカーから購入する際は、購入開始前に工程監査を実施することが鉄則です。しかし、このカナダ製LAN製品に関しては、技術部門が主体となって購入が決まりました。事前に取り交わされたのは技術仕様書だけという状態でした。

私は不良発生の報告を受け、カナダのメーカーにLAN製品の製造フローの提出と、各工程での管理体制の実態確認を依頼しました。しかし、明確な回答を得ることができませんでした。そうです、このメーカーはQC工程図・QC工程表を作成していませんでした。その存在すら知らなかったようです。そのため、不良がどの工程で発生しているのか、またどのような品質管理が不足しているのかを分析できませんでした。(QC:Quality Control、品質管理のこと)

私はカナダの工場に出向き、すぐさま工程監査を実施しました。どの工程で、どのような管理の欠陥があるかを確認した後、QC工程図・QC工程表の作成を指導しました。まず、製造フローを作成します。これによりLAN製品が完成するまでの全工程が明らかになり、その詳細をQC工程図に記入していきます。次に、各工程で何を管理するか、また不良発生を防ぐために何を管理すべきか(管理条件)をQC工程表に記入します。

管理条件の決定には、FMEA(Failure Mode and Effect Analysis:故障モードと影響解析)や統計的手法、また、いわゆる「QC七つ道具(パレート図、特性要因図など、品質改善に効果的な手法)」などを用います。例えばメッキ加工の工程において、メッキの膜厚を管理するには、めっき時間およびメッキ液の濃度管理が有効です。このときの管理値は、統計的手法の相関分析で得ることができます(図1)。

図1:QC工程図・QC工程表と手法の関連図 (FMEAから管理すべき項目を抽出し、相関分析などの統計的手法にて管理値を決定する)

図1:QC工程図・QC工程表と手法の関連図
(FMEAから管理すべき項目を抽出し、相関分析などの統計的手法にて管理値を決定する)

QC工程表には、管理する項目の名称、管理頻度、管理するポイント、担当部門、使用機器、異常処理内容、チェックシート・管理図などの記録用紙を記載します。このQC工程表の内容を充実させることで、管理内容はより明確になります。このような地道な品質改善に取り組むことにより、LAN製品の不良発生は大幅に削減し、品質向上を達成することができました。

いかがでしたか? 今回は、台湾製FPCと、カナダ製LAN製品を購入事例から、品質改善の取り組み方法を解説しました。次回は、連載最終回です。品質不良が発覚した際のメーカー側のモラルと、新製品購入時の必須管理ツール「品質計画書」について解説します。お楽しみに!