委託先は自分の目で見極める!:永井さんのモノづくり海外進出見聞録1

委託先は自分の目で見極める!:永井さんのモノづくり海外進出見聞録1

更新日:2016年2月12日(初回投稿)
著者:TQM Labo コンサル代表 永井 守

Tech Note読者の皆さん、こんにちは。私は、以前大手電気メーカーに在職中、香港に駐在し、海外製品の調達に携わっていた時期がありました。電気メーカー退職後は、商社にて海外製品の品質保証の経験もあります。当コラムでは、私が長期にわたり海外購入品の品質改善や品質保証に取り組んできた体験談を4回シリーズで紹介します。第1回は、私の香港駐在中の体験から、不良品が納入されてしまった場合の品質改善の方法を取り上げます。

1. 「品質優良」メーカーが不良品率100%!?

私が初めて海外勤務を経験したのは、大手電気メーカーに勤めていた1989年のことです。香港に駐在し、東南アジアで生産されたハードディスクドライブやフロッピーディスクドライブ搭載部品の、調達および品質保証を担当しました。

香港のメーカーに板金製品の製造を委託した時のことです。委託先に、完成品のサンプルと図面を渡し、「くれぐれも品質問題が発生することがないように」と、念を押しました。すると委託先の担当者は、「私たちは、日本の一流メーカーから『品質優良賞』の表彰を受けました。問題ありません。」と明言し、壁にかかっている賞状を指差したのでした。

なるほど、それなら品質問題が発生することはないだろうと、安心したのも束の間、後日納入された製品を確認すると、すべての製品に寸法不良が見つかりました。この結果には非常に驚きました。なぜ「品質優良賞」を受賞するほどのメーカーが、100%不良品を作ってしまったのだろう。疑問は残るものの、品質改善を急がなくてはいけません。私たちは委託先の製造工程に入り、製造条件を再検討しました。

その時の改善例を1つ紹介します。ハードディスクドライブには、銅線を巻いた「コイルAssy」と呼ばれる部品が搭載されます。このコイルAssyをプラスチック製のホルダーに固定する際、塗布する接着剤の量は、あらかじめ決められた量の±1.0gを超えてはならないという規格がありました(図1)。これは、技術的に大変厳しい規格です。

図1:コイルAssyをプラスチックホルダーに固定する

図1:コイルAssyをプラスチックホルダーに固定する

ところが、接着剤を塗布するディスペンサーは、電源を入れた直後とその30分後とでは、接着剤の出る量が異なることが分かりました。これでは、規格を満たした品質を均一に保てるわけがありません。私たちは、ディスペンサーの電源を入れてから時間の経過とともに、接着剤の出る量がどのように推移するかを調査しました。

電源投入時から2分ごとに計量すると、30分を経過したところで、接着剤の出る量が安定することが判明しました(図2)。私たちは、「電源投入後、30分待ってから接着作業を開始すること」を手順書に明記し、委託先に指示しました。このような品質改善を行ったことで、日本製よりも高品質で、安価なコイルAssyの生産が実現しました。

図2:ディスペンサーの電源投入後の、接着剤塗布量実測推移

図2:ディスペンサーの電源投入後の、接着剤塗布量実測推移

後に、この委託先が日本の一流メーカーから「品質優良賞」を受賞していた理由が判明しました。日本メーカーの技術者が委託先の製造工程に入り、製造条件をすべて指示していたのです。委託先メーカーの品質が信頼に値するかどうかは、自分の目で確認することが必要ということを、心底理解した経験でした。

2. 委託先メーカーが製造管理事項を無断で変更!

前章では、海外の委託先メーカーの品質不良に悩まされながらも、製造ラインに入り、適正な製造条件を提示することで品質改善に成功した事例を紹介しました。ところがその後、さらに困難な事態が発生しました。委託先メーカーが、私の働く会社の承認を得ないまま、製品の品質に関わる管理事項を変更していました。それによって不良品が多発したのです。

私たちの承認のないまま、委託先メーカーによって変更された管理事項には、以下の内容がありました。

  • 製造条件の変更
  • 管理、監視行為の停止
  • 生産治工具や生産設備の変更
  • 検査設備の変更
  • 職能を有する作業者や優秀な技術者の配置変更、または解雇
  • 社内生産製品の外注化、および外注先の変更

「4M」という言葉を聞いたことがありますか? 機械加工による生産の4要素と言われるもので、Man(人)、Machine(機械)、Material(材料)、Method(方法)の、4つの「M」を意味します。

先の委託先メーカーが行った管理事項の変更は、まさにこの4Mに関わる、生産の根幹をなす要素です。見過ごすわけにはいきません。私は、これらの事態を防止するために、「製品の製造委託先を、新規に選定・認定する場合、委託先は管理事項を勝手に変更してはならない」という契約を締結することを取り決めました。

しかし、それだけでは不十分です。委託先が契約内容を厳守する意思や能力を欠いていては、せっかくの契約も、まるで意味を成しません。そこで、「製造委託先が、契約を厳守できる企業や経営者かどうか」の判定が必要です。この判定を行うために、5つの条件を確認することにしました。

  • その企業の経営者の人格
  • その企業に投資している企業の信頼性
  • その企業が製品を供給している企業の信頼性
  • 従業員の勤続年数
  • 製造および検査設備の充実度

また、これらが認定条件となる場合には、品質保証管理体制の確認、すなわち、工程監査を実施します。工程監査で判明した問題点については改善指導を行い、それらが是正されると、いよいよ生産が開始されます。

しかし、気を緩めるわけにはいきません。安定した品質を維持するためには、管理状態のさらなる管理、監視が必要です。管理、監視方法としては、工程監査の継続的実施、および品質の推移、4M変更の有無、重要管理図(品質のバラつきの推移を示すグラフ)を月報(管理状況報告書)として報告するよう、委託先に依頼しました(図3)。

図3:管理実況報告書の例

図3:管理実況報告書の例(下記よりPDFをダウンロードできます)

いかがでしたか? 今回は、私の香港駐在中の体験をもとに、品質管理の方法を紹介しました。次回は、不良品発生率の判定に用いられる「XバーR管理図」(製造工程が一定の品質を維持しているかを判断するための監理図)と、AQL(Acceptable Quality Level:合格品質水準)について説明します。これらの方法で算出された数値は、常に信用できるのでしょうか?