建設ロボットの導入:i-Constructionによる建設現場の生産革命5

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i-Constructionによる建設現場の生産革命

更新日:2017年11月14日(初回投稿)
著者:立命館大学 理工学部 教授 建山 和由

1980年代の建設ラッシュでは建設業の人手不足が深刻化し、建設会社は建設ロボットの開発に取り組みました。建設ロボット開発が下火になった原因は、1990年代のバブル崩壊です。しかし、災害現場などでは必要性が高かったため、ロボット技術の開発は続けられてきました。第5回は、建設分野におけるロボット技術導入の現状をご紹介します。

1. 建設分野のロボット技術

製造業は1990年頃からファクトリーオートメーション(FA)と呼ばれる自動化技術を導入し、生産性を大幅に向上してきました。これに対し、建設分野への自動化技術の導入は、製造業に比べると20年以上遅れているといわれています。理由の一つは、建設分野のインフラ投資が減少し、生産性を向上させる必要性がなかったためでしょう。もう一つは、製造業と建設業の業務内容が大きく違うためです。製造業で用いられるロボットは、工場の中で決められた作業を繰り返し行います。一方、建設分野は屋外で土や岩などの自然物を対象に作業するため、現場状況の変化に対応できる高度な判断機能がロボットに必要です。

建設分野へのロボット技術の主な導入先は、人が立ち入れない危険・狭小な場所での作業や、単調な繰り返し作業です。メンテナンスと災害復旧を事例に、ロボット技術を紹介しましょう。

2. メンテナンスで利用されるロボット技術

図1に、インフラなどのメンテナンスで用いられるロボットの写真を示しました。図1aは、下水管の内部に入って管の劣化状況を調査するロボットです。図1bは、上水管内部の水中を潜行しながら内壁面の劣化状況を調査するロボットで、断水せずに調査できる点がメリットです。下水管や上水管は狭くて人が入れないため、このようなロボットを用いてメンテナンスを行います。図1cは、橋りょうなど高所の点検に使われるUAV(小型無人飛行装置)、図1dは球形ガスタンクの外表面に吸盤で張り付いて移動し、外表面の劣化状況を調査するロボットです。どちらも、人が近づきにくい箇所のメンテナンス作業です。人が作業することが難しい箇所をメンテナンスするために、ロボットを使う事例が増えています。

図1:メンテナンスで用いられるロボット

図1:メンテナンスで用いられるロボット(引用:土木学会、社会インフラメンテナンス工学、機械化・自動化技術によるイノベーション、2015年4月)

3. 災害対応で用いられるロボット技術

日本は、豪雨・地震・火山などに起因して土砂災害が多く発生します。災害発生時には、人命救助や早期の道路復旧のため、土砂を除去します。土砂の除去作業は二次災害の危険性が高いため、重機を遠隔操作する無人化施工技術を用いて、人が現場に立ち入ることなく作業を行います(図2)。無人化施工技術は、自然災害が多発する日本では不可欠な技術で、多くの適用事例があります。

図2:災害復旧で用いられる無人化施工技術

図2:災害復旧で用いられる無人化施工技術(引用:建山和由、次世代社会インフラ用ロボット開発・導入の推進-災害応急復旧部会における現場検証の紹介-、日本ロボット学会誌 Vol.34 No.9、2016年9月、P.597~600)

4. 建設分野における技術開発の特徴

図3は、各産業の総売上に対する研究開発費の割合を比較したグラフです。製薬会社は総売上の12%以上を新薬の開発に、製造業は4%を新製品の開発に使っています。これに対し、建設業は総売上の0.4%しか新技術の開発に費やしていません。つまり、建設業は新技術開発のための予算がほとんど確保されていないのです。建設業は研究開発の予算が少ないため、実際の工事プロジェクトの予算を使って新技術が開発されることが多いです。その場合、開発される技術は、その工事に確実に役立つ実用性が求められます。

図3:産業別研究開発費の比較

図3:産業別研究開発費の比較(引用:総務省統計局、日本の統計2015、Web版)

新技術が開発された工事プロジェクトの代表的な事例に、雲仙普賢岳の砂防事業があります。1990年と1991年、長崎県島原市の雲仙普賢岳が噴火し、多くの被害が出ました。周辺には集落が存在し、土石流などの土砂災害を抑えるために砂防えん堤が造成されることになりました(図4)。しかし、雲仙普賢岳は依然として火山活動が活発で、いつ火砕流が発生するか分からない状態のため、無人化施工技術が導入されました(図5)。

図4:雲仙普賢岳での砂防事業

図5:建設機械の遠隔操作による無人化施工技術

図5:建設機械の遠隔操作による無人化施工技術

複数の重機を制御するための電波干渉や施工効率の低下、困難な現場の状況把握など、数多くの課題がありながら、20年以上の間、工事プロジェクトと並行して技術開発が続けられました。その結果、建設機械の遠隔操作技術は日本中の災害現場で用いられ、人命救助や早期復旧に有用な実用技術として定着しました。代表例は、2011年3月に東日本大震災で被災した、福島第一原子力発電所のがれき処理や施設安定化のための作業(図6)、2011年9月に発生した台風12号などによる奈良・和歌山地域の土砂災害です。復旧工事では、速やかに技術が導入され、活用されました。

図6:福島原子力発電所への無人化施工技術の導入

図6:福島原子力発電所への無人化施工技術の導入

5. 一般工事にロボット技術を導入すべき理由

災害時の現場の状況は混乱しています。緊急時に作業を確実に行うためには、普段から使っている技術を導入するのが理想です。このため、普段の現場で技術開発を積み重ね、緊急時にその技術を活躍させるという正のスパイラルを確立すべきです。建設ロボットも、雲仙普賢岳のような専用プロジェクトだけではなく、通常の工事に導入して技術を磨くべきです。課題は、建設ロボットは通常の重機に比べるとコストが大幅に大きい点です。コスト増に対応できる仕組みを構築し、一般工事でもロボット技術を活用し、その技術を磨いていくことが建設現場の新3K(給料・休暇・希望)の実現につながります。

いかがでしたか? 今回は、建設分野におけるロボット技術導入の現状をご説明しました。現状では、作業対象物や作業環境・条件への対応は人間が判断し、遠隔や一部自動化で機械操作を行う、無人化施工技術の機械がほとんどです。将来は、作業対象物や作業環境・条件への対応も、機械が判断して自立的に作業できるロボットの導入が期待されています。次回は最終回です。i-Constructionの普及を取り上げます。お楽しみに!