ICTを用いた精緻なマネジメント:i-Constructionによる建設現場の生産革命4

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i-Constructionによる建設現場の生産革命

更新日:2017年10月24日(初回投稿)
著者:立命館大学 理工学部 教授 建山 和由

前回は、施工でのICTの導入事例を紹介しました。ICTを用いて集めたさまざまな情報は、活用することで価値が生まれます。不確定要因が多い建設分野では、情報を活用して精緻なマネジメントを行うことで、人や機材、資材を適切に投入し、生産性向上と環境負荷低減を両立させることができるのです。今回はICTを用いた精緻なマネジメントについて、具体例を挙げて解説します。

1. ICTによるマネジメントの精緻化が必要な理由

製造業と建設業の大きな違いは、建設業には不確定要因が多いことです。一般的な製造業が所定の工場生産であるのに対し、土木工事は自然相手の作業が多いため、天候や地質など多くの不確定要因があります。そのため、技術者には現場の状況に応じた柔軟な対応が求められます。この対応には、現場から得られる情報に基づいた判断が必要で、情報の質と量が対応の良否を決めます。

また、その不確定要因の多さから、設計・施工計画の段階で、ある程度余裕を持った設計や計画が策定されます。設計における安全率は、そのためのものです。しかし実際には、現場の条件は悪いケースばかりではありません。そのため、結果的に必要以上の資材やエネルギーを投入してしまうケースが多くあります。このような場合、基準やマニュアルを標準としながらも、現場の技術者が判断して精緻に管理することで、資材やエネルギーの過度な投入を削減できます。図1はその施策のイメージ図です。施工計画は施工条件・環境が不良であることを想定して余裕をもって組まれています。しかし、実際の施工条件・環境が良好になり、施工計画との差が大きくなった時には、施工方法を柔軟に見直すことが望まれます。

図1:現場状況に応じた柔軟な対応

図1:現場状況に応じた柔軟な対応

2. ICTを用いた精緻なマネジメントの事例

ICTを導入して精緻なマネジメントを実施し、生産性向上と環境負荷低減を両立させた現場は多くあります。大規模土工における活用事例と、トンネル施工における活用事例の2つを紹介しましょう。

1:大規模人工島造成のための土取り工事事例

この事例では、山側の採土地で発破もしくは油圧ショベルにより土岩を掘削し、ブルドーザーで集土した後、油圧ショベルかホイールローダで重ダンプトラックに積み込み、採土場下端にある破砕機まで搬送します。破砕機に投入された大きな岩塊は200mm以下の土砂に破砕され、ベルトコンベヤでストックヤードまで運ばれます。ストックヤードの床には土砂の引き出し口があり、ここから引き出された土砂はベルトコンベヤで積み出し桟橋まで運ばれ、土運船に積み込まれます(図2)。

図2:大規模土取り工事の施工プロセスと導入されたICT

図2:大規模土取り工事の施工プロセスと導入されたICT(引用:建山和由、ITと建設施工-Precision Constructionの試み-、建設の機械化、No.625、2002年3月、P.3~7)

採土工事の施工効率は、工事の進捗とともに変化する地質や地形、天候、機械の能力、オペレータの技能などに左右されます。施工効率を向上させるには、これらの要因の変化に対応して採土場所や重機の配置、発破の薬量と削孔パターンなどの施工方法を柔軟に見直す必要があります。そのためには、現場の情報をリアルタイムで収集し、現場の技術者が的確に判断できる仕組みが必要です。

この事例では、ICTを活用して重機の位置や稼働状況をリアルタイムで把握するシステムが導入されました(図2)。そして、現場の作業状況の情報を収集し、現場の技術者が情報共有できる仕組みを構築しました。これにより、技術者は現場内のどこにいても現場全体の状況を把握でき、かつ共通の情報をもとに、施工の改善を議論できるようになりました。また、現場の状況に応じて、採土場所や重機・爆薬の使用に関する施工方法などを細かく見直し、必要最小限の資材やエネルギーで所定の工事を行う体制を整えました。その結果、月平均採土量は約21%の増産、施工に伴う環境負荷は、二酸化炭素排出量換算で約24%の削減を達成しています(図3)。

図3:月平均採土量の増加(左)と工事に伴う環境負荷の削減(右)

図3:月平均採土量の増加(左)と工事に伴う環境負荷の削減(右)(引用:建山和由、ITと建設施工-Precision Constructionの試み-、建設の機械化、No.625、2002年3月、P.3~7)

2:トンネル施工における精緻なマネジメント

トンネル工事では、坑内の作業環境を正常に保つための換気が不可欠です。換気は、大型の送風機を使って坑内外の空気を循環させます(図4)。

図4:トンネルの換気設備

図4:トンネルの換気設備(引用:日経コンストラクション、どうする現場の15%節電、2011年6月、P.41~44)

通常、送風機の能力は発破の後や吹きつけ作業中など、空気が汚れている状況でも作業できるように設計され、恒常的に送風機を作動して空気を送っています(図5左)。しかし坑内の空気の汚れ具合は、発破や吹き付け、ズリ出しなどの作業中と測量などの作業中では異なります。そこで、CO2・粉じん量・酸素濃度・有毒ガスなどの計測結果を確認した上で、坑内の作業内容に応じて送風機の出力を調整しました(図5右)。坑内の空気が汚れているときは100%の出力で、汚れが少ないときには70%の出力で送風量を制御することで、換気設備の消費エネルギー削減に成功したのです。

図5:通常時(左)と坑内状況に応じた調整時(右)における送風機の稼働状況

図5:通常時(左)と坑内状況に応じた調整時(右)における送風機の稼働状況(引用:日経コンストラクション、どうする現場の15%節電、2011年6月、P.41~44)

このような取り組みは、ICTを使って現場の状況を迅速かつ正確に把握することで実現します。今後も現場の情報に基づく精緻なマネジメントを進めることで、生産性の向上と環境負荷低減の両立を実現できるでしょう。さて次回は、i-Constructionで導入されている建設ロボットを紹介します。お楽しみに!