施工におけるICTの導入:i-Constructionによる建設現場の生産革命3

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i-Constructionによる建設現場の生産革命

更新日:2017年10月17日(初回投稿)
著者:立命館大学 理工学部 教授 建山 和由

i-Constructionの先行プロジェクトとして、土工におけるICTの全面活用が進められています。土工の各工程で3次元データを横断的に使用し、インフラ整備のプロジェクト全体の効率化を図り、生産性の向上を目指しています。前回は土工の工程のうち、調査・測量、設計・施工計画の策定におけるICTの活用を紹介しました。今回は、施工におけるICTの活用です。

1. 重機制御の高度化

施工過程へのICT導入の代表例は、重機制御の高度化です。この技術には、Machine Guidance(以下、MG)とMachine Control(以下、MC)の2種類があり、これまでも情報化施工として導入されてきました。MGはオペレータに機械の操作を補助する情報を提供し、操作性や施工の精度を向上させる技術です。MCは機械の一部を自動制御し、施工の効率や精度を高める技術です。

図1は下水管の埋設工事の様子です。下水は自然流下であるため、管を埋設する際は、所定の深さと傾斜角度のトレンチを掘削しなければなりません。通常は、図1のように深さや傾斜角度を測量で確認しながら工事します。また、図2は法面造成工事の様子です。工事では、測量を行って丁張り(施工後の法面の傾斜や形を表す目印)を正確に設置しなければなりません。油圧ショベルのオペレータは、この丁張りを目印に法面を整形します。

図1:下水管の埋設工事の状況

図1:下水管の埋設工事の状況

図2:法面造成工事の様子

図2:法面造成工事の様子(写真提供:株式会社山岡組)

このような工事では、MG機能を搭載した油圧ショベルを使うと効率的に作業できます(図3)。ショベル本体には位置を特定する衛星測位システム(GNSS)のアンテナが、バケット・ブーム・アームにはチルトセンサが取り付けられており、操作席付近にある画面に機械の各部の位置や姿勢が映し出されます。また、車載のPCにトレンチや法面の出来形情報をあらかじめ入力しておくと、そのデータも画面に映し出すことができます。オペレータはこの画面上で、目標とする作業の出来形とバケットの相対位置を確認しながら操作します。測量や丁張り設置の作業なしに、工事を行うことができるのです。

図3:油圧ショベルのMG機能事例(資料提供:株式会社トプコン)

図3:油圧ショベルのMG機能事例(資料提供:株式会社トプコン)

また、図4はMCによるブレード(排土板)制御機能を備えたブルドーザーの事例です。この機械にも図3の油圧ショベルと同様に、GNSSアンテナ、センサ、車載のPCといった機器・システムが登載されています。ブレードは自動制御され、経験が少ないオペレータでも効率的に整地や掘削作業を行うことができます。

図4:ブルドーザーのMC機能事例

図4:ブルドーザーのMC機能事例(引用:地盤工学会建設工事における環境保全技術編集委員会、建設工事における環境保全技術、地盤工学会、2009年、P.219-222)

2. 重機制御におけるICT導入の効果

ICTを導入した機械の利用には、作業の効率および精度の向上や工事時間の大幅な短縮、工事に伴う環境負荷の低減など多くの利点があります。そのため、各種の工事で使われるようになってきました。図5は、通常のブルドーザーとMC機能を搭載したブルドーザーを用いた場合で、敷き均し作業時間の差違を調査した結果です。この調査では、試験用のヤードで条件をそろえて作業時間を計測し、かつ操作経験の違いの影響を見るために、重機操作に熟練したオペレータと経験が浅いオペレータのデータを計測しました。

図5:ブルドーザーによる敷き均し作業時間の測定結果

図5:ブルドーザーによる敷き均し作業時間の測定結果(引用:相良幸雄・小櫃基住・藤島崇、情報化施工技術の活用効果、建設機械施工Vol.67 No.8、2015年8月、P.105~109)

この結果から、重機操作の経験レベルにかかわらず、MC機能を導入することでブルドーザーの敷き均し作業の時間を半減できることが分かります。この調査では、施工精度に関してもデータを取っています。経験が浅いオペレータの作業は、従来施工では精度が低い状況でしたが、MC機能搭載の重機を使用することで熟練者に近い精度に仕上げることができました。丁張り設置のための人員の削減、作業時間の短縮、重機操作経験のサポートなどの効果を期待できます。

ICT導入で得られた時間や人員などの余裕は、工事全体で生かさなければなりません。1つの工程だけで完結していては、費用・時間をかけてICTを導入した意味がありません。そのためには、目的・ゴールの設定が必要です。決して、ICTの導入を目的・ゴールにしてはいけません。工期短縮や人員削減、安全性の向上などの具体的な目標を立て、その目標を達成するために必要最小限のICTを選択し、最大限活用することが大切です。これは、ICTの導入で最も注意すべき点です。

3. 目的を決めた総合的なICTの導入

図6は、実際にロックフィルダムの工事でICTを導入して効率化を図った事例です。

図6:ロックフィルダムの施工におけるi-Construction

図6:ロックフィルダムの施工におけるi-Construction(資料提供:鹿島建設株式会社 植木睦央氏)

従来の施工では、現場担当者は、ダンプトラックで搬入された材料をチェックして集計します。その土をブルドーザーで敷均す際、担当者は土が所定の厚さに敷き均されているかを確認しなければなりません。また、その上をローラで転圧していく際にも、例えば8回転圧する場合は、むらなく確実に8回転圧されているかを確認する必要があります。転圧終了後は、密度や含水比を計って所定の締め固めが行われているかチェックします。担当者は現場でこれらの作業を全て終えてから事務所に戻り、集めてきたデータを使って日報を作成します。そのため、担当者が仕事を終えるのは、毎日20時~21時と遅い時間になります。

これに対してi-Constructionでは、搬入される土の種類や量をダンプの運行管理システムで管理します。また、ブルドーザーのMC機能を使えば、所定の土の厚さを維持して敷均すことが可能です。転圧作業でも、ローラがどこを何回踏んだか画面上で確認できるため、計画していた転圧回数を間違えることなく確実に締め固められます。その結果、盛り土の品質も上がるため、施工管理の頻度を減らせます。これらのデータは現場担当者のタブレットPCにリアルタイムで送られ、担当者が事務所のPCにつなぐと、各種データを集計した日報が作成されます。このため、担当者は17時には仕事を終えることができます。

これまで説明した内容は、国土交通省のi-Constructionの施策の中で、方針として示されているものです。この他にも、ICTは生産性向上の可能性を秘めています。次回以降は、ICTを活用した精密なマネジメントと、建設ロボットの導入による生産性向上について、具体事例を挙げて紹介します。お楽しみに!