なぜi-Constructionが必要なのか?:i-Constructionによる建設現場の生産革命1

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i-Constructionによる建設現場の生産革命

更新日:2017年9月19日(初回投稿)
著者:立命館大学 理工学部 教授 建山 和由

2016年4月、国土交通省は建設業界に対しての新しい取り組み、i-Constructionをスタートさせました。背景には日本の人口減少、とりわけ生産年齢人口の急激な減少があります。建設業界は、これまで以上に働き手を確保しづらくなるため、今までの生産の仕組みを維持していくことが困難になるでしょう。第1回は、i-Constructionが登場した社会的な背景と、今後目指す姿について紹介します。

1. 建設業を取り巻く課題

日本の将来を考える上で、人口の推移予測は極めて重要です。図1は、総務省統計局が公表している日本の人口推計です。2015年時点の日本の総人口は約1億2,660万人で、このうち生産年齢人口と呼ばれる15~65歳未満の人は約7,682万人。この推計によると、今後は総人口・生産年齢人口共に減少を続け、2045年の生産年齢人口は現在の69.7%程度になることが予想されています。このシナリオ通りに進むと、約30年後には現在の70%以下の生産年齢人口で、日本の社会を支えていく必要があるのです。

図1:日本の人口推計

図1:日本の人口推計(引用:総務省統計局、日本の統計2015 ウェブ版)

生産年齢人口の減少は、建設業界にも大きな影響を及ぼします。直接的には建設従事者減少の加速が懸念されます。また、税収が減少し、インフラの使用自体も少なくなるので、インフラ整備投資も減少し続ける厳しい状況が予想されます。一方で、日本の総人口の減少により社会インフラの新規建設は勢いをなくしつつも、人々の活動と生活を支えるインフラの維持管理に伴う工事は増えていくでしょう。また、地震・豪雨・火山など年々激化する自然災害に備えるため、災害対策を強化すべきです。すなわち、建設業は人も予算も限られる中で、今まで以上に難しい仕事に取り組んで行かなければならないのです。

2. 建設業の現状

図2は、各産業の年間賃金水準を比較したものです。この図によると建設業界の賃金水準は全産業平均の79%であり、低迷していることが一目瞭然です。

図2:産業別賃金水準比較

図2:産業別賃金水準比較(一般社団法人日本建設業連合会、建設業ハンドブック2016、P.20より作成)

一方、図3は年間総労働時間を産業別に比較したものです。建設業の年間労働時間は全産業平均の116%で、長いことが分かります。さらに、図4は就労中の死亡者数を表しています。建設業の死亡者数は全産業の34%を占めています。建設業の就労環境は、以前に比べれば随分と改善されています。しかし、他産業に比べると、依然として「3K」と呼ばれる状況は変わらず、今後も建設業への人材確保は難しいことが危惧されています。

図3:産業別労働時間比較

図3:産業別労働時間比較(一般社団法人日本建設業連合会、建設業ハンドブック2016、P.20より作成)

図4:労働死亡者数比較

図4:労働死亡者数比較(一般社団法人日本建設業連合会、建設業ハンドブック2016、P.22より作成)

3. 低迷する労働生産性

3Kの原因の一つと考えられているのが、建設業の低迷する労働生産性です。図5は、産業別の労働生産性の推移を表しています。ここで、労働生産性は、実質粗付加価値額(2005年価格)/(就業者数×年間総労働時間数)で計算しています(資料出所:内閣府 国民経済計算、総務省 労働力調査、厚生労働省 毎月勤労統計調査)。高度成長期からバブルと呼ばれた好景気時期にかけて、建設業の労働生産性は一般製造業よりも高い水準を保っていました。しかし1990年代以降、一般製造業は自動化技術などの新技術を生産ラインに導入し、さまざまな取り組みを行って、約20年間で生産性を2倍に改善してきました。一方で建設業はインフラ投資が年々減少し、生産力が余っていました。そのため、生産性を高める必要性が認識されず、生産性を改善するどころか低下させる状況に陥っていたのです。

図5:産業別の労働生産性の推移

図5:産業別の労働生産性の推移(引用:一般社団法人日本建設業連合会、建設業ハンドブック2016、P.23)

しかしながら前述のとおり、限られた人手と予算で良質なインフラを安定的に提供していくには、これまでの方策の延長線上で議論しても対処できません。新技術や方策の導入など、大きな変革を図るべきでしょう。図5が示す建設業の生産性の低迷は、別の見方をすると、努力次第で生産性を大きく改善できる余地があることも示しています。

4. 動き出したi-Construction

国土交通省では、建設業の生産性を大幅改善して、高水準の給料・休暇・希望の「新3K」がそろった産業へ転換することを目指しています。そのための取り組みの一つがi-Constructionなのです。主な内容は3点です。これらの施策で建設業の生産性を向上させ、新3Kの実現を目標にしています。

1:一般製造業に比べて遅れていたICT活用を積極的に推進する
2:単品生産による非効率性を改善するため、規格の標準化を進める
3:時期により偏っていた発注数を、年間で平準化する

i-Constructionというと、ICTを駆使してインフラ整備の効率化を図ることがメインと受け取られがちです。しかしそれだけではなく、各種施策を通じて建設業の生産性を画期的に改善し、産業としての体質を大きく変えることを目指しています。とはいえ、ICTの導入は主要な方策として期待されています。

次回以降は、ICTの積極活用による生産性の向上について、具体事例を交えて紹介します。お楽しみに!