木造住宅の構造:木造建築の基礎知識5

木造建築の基礎知識

更新日:2023年2月21日(初回投稿)
著者:職業能力開発総合大学校 能力開発院 基盤ものづくり系 教授 和田 浩一

前回までは、住まい方をイメージしながら建物を設計するというソフトウエアのことについて説明してきました。一方で、人が実際に住むためには、人や家具などの重さ、風、地震、地域によっては積雪などにも耐えられるよう、構造的に安全な建物(ハードウエア)にすることが必要です。このハードウエアとソフトウエアをバランス良く設計することが、良い設計であるといえます。今回は、木造住宅の構造について説明します。

1. 木造軸組の計画と壁量計算

一般的な木造軸組構法において、作用する荷重には、鉛直荷重と水平荷重があります。鉛直荷重は、屋根の瓦や外壁、床などの建物自体の荷重の他に、屋根の積雪や各階の床に載っている人や家具・設備などの荷重を示します(図1)。

図1:鉛直荷重
図1:鉛直荷重

一方、水平荷重とは、地震や風圧力により横から受ける荷重を示します(図2)。

図2:水平荷重
図2:水平荷重

木造軸組構法において、壁は、建物の横揺れに対して変形を防ぐ役割を果たしています。その壁は、柱と横架材(土台、梁(はり)、胴差、軒桁)で囲われており、壁の中の筋かい(柱と柱の間に取り付ける補強材)や、壁に貼った面材(構造用合板など)が横からの荷重に対して抵抗しています(図3)。

図3:水平荷重に抵抗する壁
図3:水平荷重に抵抗する壁

平面プランができた後に検討しなければならないのは、柱と横架材の配置です。壁の位置が決まれば、個々の壁の強さは、筋かいや面材により、ある程度調整ができます。

軸組の計画では、荷重が屋根から基礎に向かって伝わるため、小屋組みから2階床組み、1階床組み、基礎へと進めていきます。その際、垂直材と横架材の架構を表現するために、小屋伏図(小屋組を上から見た図面)、2階床伏図(図4)、1階床伏図(土台伏せも兼ねる)、基礎伏図を描きます。

図4:2階床伏図の例
図4:2階床伏図の例

現在、建築基準法第6条四号に該当する、「階数2階以下、延べ床面積500m2以下、最高高さ13m以下、かつ、軒高9m以下の小規模な木造建築物」については、建築基準法に規定される仕様を満足することにより、構造計算を省略することができます。しかし、昨今は、屋根にソーラーパネルを設置することが多くなり、また断熱性能も高くなり、建物が重くなっていることなどから、この規定は、近々改正される予定です。ただし、ここでは、現行の建築基準法施行令第46条の規定「通称:壁量計算(建物にかかる地震力、風圧力に対して必要な壁量を満たしているかを確かめる計算)」の考え方や、その計算手順について説明します。

一般的な木造住宅については、地震力や風圧力に対する構造安全性を、壁量計算により確認します。壁量計算とは、建物内に、水平抵抗要素としての耐力壁を、必要数配置してあることを確認するための計算手法です。地震力、および風圧力に対する構造安全性の確認を壁量計算により行う場合、次の手順で行います。

  • 地震力、および風圧力に対する必要壁量を算定する。
  • 存在壁量(設計壁量)を算定する。
  • 必要壁量に対する存在壁量を比較検討する。
  • 四分割法による壁配置を検討する。

2. 地震力と風圧力に対する必要な壁

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3. 耐力壁のバランス(四分割法による壁配置の検討)

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