前回は、木造建築における建物の配置計画、機能図、ゾーニングを紹介しました。建築の許可を得るためには、建築基準法や建設業法、都市計画法、消防法、民法など、さまざまな法律を遵守する必要があります。そのためにも、建築基準法と関連法規の十分な理解が必要です。今回は、木造建築に関する建築基準法の一部として、住宅の計画・設計を進める際に必要な用途地域と単体規定・集団規定、採光・換気・シックハウスの制限、防火地域における木造の耐火構造について説明します。
1. 用途地域と単体規定・集団規定
建築は、建築基準法や建設業法、都市計画法、消防法、民法など、さまざまな法律の下で行う必要があり、これらを遵守しなかった場合は、建築確認申請をしても建築の許可が得られず、建物を造ることができません。本稿では、住宅の計画・設計を進める際に必要な建築基準法の一部を説明します。ここでは、用途地域、単体規定、集団規定、建物の高さを制限するための斜線制限の4つについて説明します。
・用途地域(建築基準法第48条)
用途地域は、都市計画法により、住宅地域や商業地域、工業地域といった用途の混在を防止する目的で定められています。用途の制限に関する規制は、建築基準法で規定されています。用途地域は、表1に示すように、第一種低層住居専用地域から工業専用地域まで13種類の地域に分類されています。地域により特徴があり、住宅建設ができない地域もあります。

都市計画図には、用途地域や建ぺい率、容積率、高度地区など、さまざまな情報が記載されています。現在は、インターネットなどでも確認することができます。一度、自分が住んでいる地域がどのような用途地域になっているか、調べておくのもよいでしょう。
建築基準法は、大別すると建物自体の安全や衛生について規定する単体規定と、建物と都市との関係について規定する集団規定に分類されます。
・単体規定
単体規定は、個々の構造や防火・避難など、建物自体の安全や衛生について定め、敷地外に影響を与えないようにするための規定です。採光・換気・シックハウスや建物の構造強度、耐火・防火、手すりや階段の寸法制限などが、単体規定に該当します。
・集団規定
集団規定は、都市計画区域、および準都市計画区域内に適用し、用途地域や高さ制限、建ぺい率、容積率、各種斜線など、都市に影響を与えないようにするための規定です。
この単体規定・集団規定の2つの規定と、地区計画(良好な環境を整備・開発・保全することを目的として地域に設定された条例)をクリアしないと、建築確認申請(建築基準法第6条)を提出しても建築の許可が下りません。
・建物の高さを制限するための斜線制限(建築基準法第55-56条)
高さ制限は、高い建物による心理的な圧迫感を与えず、通風・日照などを確保することを目的に、その土地に建てられる建物の高さを制限するために規定されています。高さ制限は、用途地域や高度地区などの種別によって上限が異なります。高さを制限する規定には、絶対高さ、道路斜線、隣地斜線、北側斜線、高度地区が規定されています(図1)。
絶対高さ:低層の住居地域にだけ10m、あるいは12mが規定される
道路斜線:前面道路の幅(ふく)員が広いほど、また道路から建物が離れているほど、建物を高くできる
隣地斜線:隣地境界線から離れているほど建物を高くできる
北側斜線:住居地域にだけ適用され、北側の建物が採光を確保するために規定される
高度地区:用途地域内において市街地の環境を維持するために規定されており、北側斜線と同様に扱う
用途地域に応じて、これらの高さ制限を全てクリアする必要があります。

2. 採光・換気・シックハウスの制限
人間は、太陽光を浴びることにより、交感神経を刺激し、体内のリズムを作り出すことによって、すがすがしい気持ちで生活を送ることができます。自然採光の確保は、生活に活力を与えてくれるため、欠かすことができません。また、換気を怠ると、人が排出する二酸化炭素で空気がよどみ、さらに建材や家具などからホルムアルデヒドの発散がある場合は、シックハウス症候群となって頭痛やめまい、吐き気、皮膚障害、鼻炎、呼吸器障害など、生活に支障をきたすことになります。これらを避けるためにも、自然換気、機械換気を問わず、換気設備が必要になります。ここでは、人の感覚や健康などの生活に影響を与える居室の採光の基準、換気の基準、シックハウスの基準の3つについて説明します。
・居室の採光の基準(建築基準法第28条)
住宅の居室(基準法で定める居室)においては、衛生上自然光を確保するため、一定以上の面積の開口部を設けなければなりません。住居系用途地域の場合、窓の有効採光面積は、居室床面積の1/7以上が必要となります(保育園や小学校などは1/5以上、オフィスや大学の教室などは1/10以上が必要です)。
窓の有効採光面積は、単純な窓の開口面積ではなく、その窓の設置状況(窓の設置高さ、窓外部の開放度、用途地域の種別)により採光補正係数を求め、窓の開口面積にその採光補正係数を乗じて得られた値を有効採光面積として利用します(図2)。計算式は次のようになります。
D:開口部の直上部分から隣地境界線等までの水平距離
H:該当する開口部の高さの中心から直上部分までの垂直距離
採光関係比率:D/H
採光補正係数(A)=採光関係比率(D/H)×6-1.4(住居系用途地域)
有効採光面積(W)=窓の開口面積×採光補正係数(A)
判定:有効採光面積(W)/床面積(S)≧1/7を満たせば、建築基準法をクリア

・換気の基準(建築基準法第28条2項)
住宅の居室(基準法で定める居室)においては、採光と同様に、換気のための窓や、その他の開口部を設けなければなりません。また、換気に有効な窓や開口部の面積は、その居室の床面積に対して、1/20以上を必要とします。仮に、換気に有効な部分の面積を、1/20以上確保できない場合(換気上の無窓の居室)は、機械換気が必要となります。
居室に設置した窓などの開口が、必要な換気面積を有しているか計算・比較し、満たさない場合は、開口部の形状を再度検討することが必要になります。例えば、一般的な引き違い窓は、採光計算するときは、全ての窓面積が計算の対象となります。しかし、換気計算の場合は、1/2の面積しか計算の対象となりません。ルーバー窓など、開口部の形式(形状)によって換気効率が異なるため、それぞれに定められた係数を用いて計算します。
・シックハウスの基準(建築基準法施行令第20条の7)
高度成長期以降、住宅の性能が高くなり、高気密化し、建材などに化学物質を含んだ接着剤や塗料、防腐剤などが使われるようになったことから、化学物質などによる室内空気汚染が進みました。その結果、目がチカチカして充血、吐き気、頭痛、湿しんなどのシックハウス症候群と呼ばれる健康被害が出てきました。
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3. 防火地域における木造の耐火構造
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