木造住宅の設計(後編):木造建築の基礎知識3

木造建築の基礎知識

更新日:2022年12月14日(初回投稿)
著者:職業能力開発総合大学校 能力開発院 基盤ものづくり系 教授 和田 浩一

前回は、木造住宅設計のプロセス、エスキスの進め方、グリッドプランニングを紹介しました。今回は、引き続き木造住宅の設計として、建物の配置計画、機能図、ゾーニングについて解説します。

1. 建物の配置計画

建物の配置計画には、土地利用の検討、方位に対する建物の配置、駐車スペースの位置、空地(庭)の検討があります。この4つについて説明します。

・土地利用の検討

土地利用の検討では、アプローチ、建物、空地、駐車・駐輪スペースの位置や大きさを検討します。このプロセスを経ることで、設計しようとする建物の大きさを把握することが可能となります。比較的大きなスケールの空間を扱うことから、設計の手戻りや無駄なスペースの発生を抑制するため、入念に検討する必要があります。

この段階では、図1に示すようなスケッチを描きながら、敷地の使い方を検討します。このときに、ある程度の建物の大きさや、駐車スペースの大きさを把握しておきます。また、建物は民法234条により、建物を隣地境界線から500mm以上離さなければならないと規定されているため、そのスペース(余白)も考慮しておく必要があります。

図1:住宅設計初期のスケッチ(引用:和田浩一編著、橋本幸博・藤野栄一著、木造住宅設計の教科書~住宅計画・意匠・構造・設備設計まで一冊でわかる、技術評論社、2020年)
図1:住宅設計初期のスケッチ(引用:和田浩一編著、橋本幸博・藤野栄一著、木造住宅設計の教科書~住宅計画・意匠・構造・設備設計まで一冊でわかる、技術評論社、2020年)

・方位に対する建物の配置

建物の配置計画は、方位、道路の位置、敷地の形状、計画しようとする建物の形状、敷地内の空地(庭など)、通風・採光、景観などを総合的に考えて進めることが大切です。敷地面積に対して、駐車スペースと駐輪スペース、庭などの空地を考えながら(隣地から1m以上離すことをイメージしながら)およその面積で配置します(図2)。

このプロセスでは、最低限の建物のボリュームをつかむことだけにとどめ、後の設計でこのボリュームが変化する心構えを持つことが大切です。このとき、設計条件をある程度考慮に入れて設計しないと設計の手戻りが多くなり、無駄なスペースも発生しやすくなります。一度で全てを決めようと思っても、定量的に判断できる設計条件だけではなく、家族関係や個々の趣味など、定性的な設計条件が複雑に絡み合ってくるため、さまざまな面からの検討が必要となります。

図2:方位を考慮した土地利用のゾーニング(引用:和田浩一編著、橋本幸博・藤野栄一著、木造住宅設計の教科書~住宅計画・意匠・構造・設備設計まで一冊でわかる、技術評論社、2020年)
図2:方位を考慮した土地利用のゾーニング(引用:和田浩一編著、橋本幸博・藤野栄一著、木造住宅設計の教科書~住宅計画・意匠・構造・設備設計まで一冊でわかる、技術評論社、2020年)

・駐車スペースの位置

住宅のみならず建築の設計では、駐車スペースの配置が建物に大きく影響します。一般的に、駐車スペースは玄関近くに配置して、玄関までスムーズにアプローチできるよう計画します。敷地面積に余裕がない場合、駐車スペースと玄関が離れているとアプローチが長くなり、外部空間に無駄なスペースが増えることになります。また、雨の日や買い物後の荷物を運ぶ際も不便となり、居住者の不満につながります。

車の停め方として、道路に直角に駐車(並列駐車)する方法と、道路に並行して駐車(縦列駐車)する方法があります。一般的に、駐車面積は、並列駐車よりも縦列駐車の方が大きくなり、敷地が狭いと縦列駐車による車と人の動線が交差しやすくなるので注意が必要です。

・空地(庭)の検討

空地(庭)は、採光・通風を確保するための空間のみならず、心理的な影響を与え、豊かな空間を演出するために、とても大事な空間です。人が住む建物として十分な設計を行うためには、内部空間の設計だけでなく、外部空間とのつながりを意識した計画が大切です。

一般的に、建物の南側のスペースを確保することで、庭をつくることができます。その結果、室内に太陽光が入りやすくなり、穏やかな明るい空間がつくれます。この南側隣地からの後退距離は、5m以上離すと1階の居室に太陽光が届きます(図3)。同時に、南側の居室から外を眺めると、南側の隣家までの距離が長くなるため、圧迫感のない室内空間をつくることができます。

図3:太陽光と隣棟間隔(引用:和田浩一編著、橋本幸博・藤野栄一著、木造住宅設計の教科書~住宅計画・意匠・構造・設備設計まで一冊でわかる、技術評論社、2020年)
図3:太陽光と隣棟間隔(引用:和田浩一編著、橋本幸博・藤野栄一著、木造住宅設計の教科書~住宅計画・意匠・構造・設備設計まで一冊でわかる、技術評論社、2020年)

このように、建物の内部空間をつくる際に、内部空間だけでなく、外部空間も同時につくらなければ良い設計にはなりません。敷地が大きくない場合は、北側の空きにゆとりを確保すると、結果的に南側の空地が小さくなってしまいます。南側にまとまった空地ができにくい場合は、東、西、北の順に確保します。あるいは、周囲が建物に囲まれて、プライベートを確保したい場合は、建物の中央に中庭として空地をとる方法もあります。外部スペースよりも建物内部の設計を先に行うと、空地(庭)は、敷地から建物の面積を引いた残りの空間になりがちで、魅力的な空間になりません。

2. 空間のつながり(機能図)

建物の設計において、所要室を次から次へとつなげてゆくプロセスをたどると、全体的にまとまりがなく、凸凹の多い建物になりがちです。不必要に凸凹が多いと、構造的に強度が低くなり、外壁が長くなることで建物内部からの熱損失も大きくなります。

さらに、建物内スペースの無駄が生じ、採光や通風において不利になることが多くなります。不必要な凹凸を避けるには、敷地内の配置計画と同じように、大体のボリューム配置から、詳細な設計へと進めていくことが効果的です。また、このプロセスをたどることで、大きな設計の手戻りが少なくなります。

・機能図

機能図は、所要室の関係性・つながりを図化したものです。図4は、バブルダイアグラムといい、機能図の一種です。初学者にとっては、ホールや廊下を1つの所要室として描いた方が分かりやすくなります。

図4:機能図(引用:和田浩一編著、橋本幸博・藤野栄一著、木造住宅設計の教科書~住宅計画・意匠・構造・設備設計まで一冊でわかる、技術評論社、2020年)
図4:機能図(引用:和田浩一編著、橋本幸博・藤野栄一著、木造住宅設計の教科書~住宅計画・意匠・構造・設備設計まで一冊でわかる、技術評論社、2020年)

機能図は、設計者が考える抽象的な設計条件を設計案として具体化する過程で描くもので、設計条件との照合や、空間のつながりを確認するために用います。同じ機能を持つ空間をできるだけ隣接させ、人や物の動線もこの段階で検討します。最終的には、線を交差させないようにつなぎます。

所要室が多くなるほど、一度で線が交差しない整理された機能図を描くことは難しくなります。そのようなときは、何度も修正しながら目的の機能図を作成します。そのとき、消しゴムを使わずに線を重ね書きしたり、トレーシングペーパーを上に重ねて修正した線を描いたりするなど、元となる線を残しておくことがポイントです。

・屋内動線計画

建築空間において、人が移動することで描く軌跡を動線といいます。動線は、簡潔にまとまっていて、交差せずに距離の短いものが、生活しやすいとされています。住宅設計に当たり、各所要室の配置を室のグループごとに検討するのが、ゾーニングです。このときに、室グループ相互の関係性とつながりを意識して、配置計画を行っていきます。

L.D.K.の場合、キッチンで料理をして、ダイニングで食事を行い、食後、リビングでくつろぐという流れが想像できます。これより、「キッチン→ダイニング→リビング」の動線のつながりが生まれ、空間配置を行っていく上での根拠となります。同様に、L.D.K.から風呂に入るという動作の場合、「L.D.K.→廊下→トイレ→廊下→洗面脱衣→浴室」となります。寝室から浴室に行く場合は、L.D.K.を寝室に交換すれば同じ動作となります。また、洗濯物を干す場合は、1階から2階のバルコニーへ、寝室を通らずに行ける動線をつくることが望まれます。

3. 部屋の配置計画(ゾーニング)

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