木造住宅の設計(前編):木造建築の基礎知識2

木造建築の基礎知識

更新日:2022年11月22日(初回投稿)
著者:職業能力開発総合大学校 能力開発院 基盤ものづくり系 教授 和田 浩一

前回は、木造建築の工法や材料を紹介しました。今回は、木造住宅の設計として、木造住宅設計のプロセス、エスキスの進め方、グリッドプランニングについて解説します。住宅の設計では、計画、環境・設備、法規、構造・材料、施工、コストなど、さまざまな知識が必要です。設計は、エスキスを描きながら進めます。その場合、単に図形を描くだけではなく、さまざまな生活のシーンを思い浮かべながら行います。ある程度の設計の方針が決まると、設計ではグリッドプランニングという手法を使います。

1. 木造住宅設計のプロセス

住宅の設計は、決まっている敷地に設計するか、設計者が施主と一緒に敷地から探すかでは、初期の設計プロセスが違います。また、設計する住宅が、木造軸組工法(在来工法)、枠組壁工法、軽量鉄骨構造、重量鉄骨構造のいずれかによっても、設計のプロセスが異なってきます。一般的に、枠組壁工法や軽量鉄骨構造、重量鉄骨構造は、住宅メーカーによる型式認定の構造形式を採っていることが多く、構造設計の進め方が異なります。ただし、意匠設計までの進め方は同じです。ここでは、決められた敷地に設計依頼されたことを前提に、現在最も着工数が多い、木造軸組工法住宅の設計プロセスを説明します。

住宅の設計は、計画、環境・設備、法規、構造・材料、施工、コストの知識が必要です。これらの要素を並行して考えることが多く、さらにプロセスも行きつ戻りつしながら進めていきます。また、途中まで進んでいても、施主との打ち合わせで設計条件が変わったり、予算が変化したりすることもあります。そのため、設計プロセスも複雑になりがちです。ここでは、一般的な設計プロセスをStep1~6の手順に沿って説明します(図1)。

図1:住宅設計のプロセス(参考:和田浩一編著、橋本幸博・藤野栄一著、木造住宅設計の教科書~住宅計画・意匠・構造・設備設計まで一冊でわかる、技術評論社、2020年)
図1:住宅設計のプロセス(参考:和田浩一編著、橋本幸博・藤野栄一著、木造住宅設計の教科書~住宅計画・意匠・構造・設備設計まで一冊でわかる、技術評論社、2020年)

  1. Step1:設計準備
    エスキスを始める前に、敷地の状況調査や建築基準法、地区計画の調査などを行う
  2. Step2:設計初期の全体計画
    建物の配置計画など大まかなプランを検討する
  3. Step3:意匠設計(各部寸法の決定)
    家具や設備の配置、建具などのディテール、照明計画、各部の納まりなど寸法を決定する

    Step2、3では、次のStep4~6についても、ある程度考慮しておく必要があります。それを怠ると、構造や設備の検討まで進んでも、Step2の全体計画や、Step3の意匠設計まで戻ることになりかねません。

  4. Step4:軸組の計画
    柱や横架材(おうかざい:建物の骨組みで横にかけ渡された構造材)、各階床組の検討を行う
  5. Step5:壁量計算に基づく構造安全性の検討
    壁量による構造の安全性を検討し、躯体(くたい)の構造を決定する
  6. Step6:設備・配管計画
    住宅設備の配線や配管の計画をすると、住宅全体の設計が出来上がる

2. エスキスの進め方

エスキスでは、建築計画の初期段階に、コンセプトや概念図などを簡易にまとめ、検討する際の資料を作成します。住宅のみならず、建築の設計者は、企画から最終図面に至るまでの間、手描きの簡単なスケッチから実施設計図のような詳細な図面作成、ディテールの検討、模型作成、3D CADやCGによる意匠の検討など、さまざまな目的に応じてエスキスを行います。設計初期のエスキスには、言葉によるコンセプト、全体の機能や空間構成を描いたダイヤグラム、機能図、規模算定、ゾーニング(図2)、ディテールの検討など、さまざまな種類があります。

図2:ゾーニング(引用:和田浩一編著、橋本幸博・藤野栄一著、木造住宅設計の教科書~住宅計画・意匠・構造・設備設計まで一冊でわかる、技術評論社、2020年)
図2:ゾーニング(引用:和田浩一編著、橋本幸博・藤野栄一著、木造住宅設計の教科書~住宅計画・意匠・構造・設備設計まで一冊でわかる、技術評論社、2020年)

エスキスで描くスケッチには、設計者が考えていることを他の人に伝えるためのスケッチもあります。しかし、そのほとんどは、設計者自身が忘れないように描くスケッチ、あるいはアイディアを検討するために描くスケッチです。スケッチを描き、考えていることを外在化することで、アイディアの整理や評価が容易になります。

スケッチを描かずに、頭の中だけで思考を展開すると、アイディアがループ(堂々巡りの状態)し、設計が進まない原因になります。初学者には、このケースが多く見られます。熟練した設計者は、描いたスケッチを見ながら自ら評価し、次のステップへと進んでいきます。設計は、必ずしも完成の方へ進むとは限らず、ときどき逆戻りもします。そのようなときは、それまでに描いたスケッチを見直すことで、突破口を見いだすことも少なくありません。

エスキスで大事なのは、形を検討するだけではなく、生活のシーンをイメージすることです。それは、ある瞬間のシーンだけでなく、朝、昼、夜などのように時間を変えたり、平日と休日、春・夏・秋・冬など、季節を変えてシーンをイメージすることも大事です。

また、1つの空間だけでシーンをイメージするのではなく、複数の空間を移動しながらシーンをイメージすることで、魅力的な空間のシークエンス(移動することにより景色が変わる様子)が作られていきます。このシークエンスの作られ方が、設計評価に大きく影響します。

3. グリッドプランニング

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