木材で造られている建物:木造建築の基礎知識1

木造建築の基礎知識

更新日:2022年11月1日(初回投稿)
著者:職業能力開発総合大学校 能力開発院 基盤ものづくり系 教授 和田 浩一

日本では、明治時代に鉄筋コンクリートの建物が造られるまでは、ほとんどの建物が木材で造られてきました。木材は、加工が容易で温かみを感じるなど、今も根強い人気があります。本連載の第1回では、古くから日本独自の文化として、木材を軸材(構造耐力上主要な部分に用いる枠組材)でありながら繊細に魅せる素材として発展させてきた木造建築について、工法や材料とともに解説します。

1. 日本の木造建築

世界のさまざまな地域では、古くからその土地の風土や気候に適合した建物が造られています。例えば、雨が降らない高温乾燥地域では日干しれんがの建物、熱帯地域では竹を利用した高床式の建物、亜寒帯地域では地面の氷を溶かさないように高床にした建物、その他寒冷地域や温暖地域では、焼成れんがや組石造りの建物などが造られてきました。

木造の建物も、世界各地で見られます。その由来は、その土地で木材が採れたことにあります(図1)。地球規模で見ると、陸地面積の約27%が森林で覆われています。それ以外は、砂漠化している地域、あるいは雪や氷で覆われている地域です。森林は、赤道付近、あるいは海流や風の影響で雨が降る地域に分布しており、その地域では、多くの木造建築が造られています。

図1:スウェーデンの木造住宅(著者撮影)
図1:スウェーデンの木造住宅(著者撮影)

日本では、北海道から沖縄まで全域で雨が降るため、森林が形成され、多くの樹木が生い茂っています。そのため、縄文・弥生時代の竪穴(たてあな)式住居でも、柱として木材が使われ、その後も明治時代に鉄筋コンクリートの建物が造られるまでは、ほとんどの建物が木材で造られてきました。木材は、一般的に加工が容易であり、鉄筋コンクリート造りや鉄骨造りと比べてもコストが安価で温かみや調湿効果があるなど、今も根強い人気があります。現在の新設住宅の58.9%が木造住宅です。

同じ木造建築といっても、世界の地域により使われ方が異なります。西洋では基本的に、建築用の木材を板材として使います。一方、日本では、古くから軸材として木材を扱ってきており、室内においても和室などに見られるように、木材を魅せる素材として利用してきたところが他の地域と大きく異なります。日本では木材がとても繊細に扱われ、独自の文化として発展してきました(図2)。

図2:桂離宮(著者撮影)
図2:桂離宮(著者撮影)

近年では、大断面集成材(短辺が150mm以上、断面積が300cm2以上の木材で、強度性能、耐火性能、耐久性を求められる建物に使われる)を使った大規模屋内競技場や、直交集成板(CLT:Cross Laminated Timber)を使った高層ビル、不燃木材を使った屋外競技場など、大規模な木造建築も造られるようになりました。

2. 軸組工法と枠組工法

近年建築されている木造住宅は、木造軸組工法と枠組壁工法(図3)、木質パネル工法、丸太組工法などに分類されます。

図3:木造軸組工法(在来工法)と枠組壁工法(両者とも著者撮影)
図3:木造軸組工法(在来工法)と枠組壁工法(両者とも著者撮影)

・木造軸組工法

木造軸組工法は、日本で古くから発達してきた伝統工法を簡略化して発展させた工法で、在来工法とも呼ばれます。この工法は、主に柱や梁(はり)、土台といった軸材で構成されています。風や地震に対する横揺れに対しては、柱と柱の間に筋交い(すじかい)を設置したり、構造用合板を柱と梁・土台にくぎで打ちつけたりすることで、耐力を確保しています。設計やリフォームをする際に、枠組壁工法や木質パネル工法に比べて自由度が高く、比較的大きな空間を造ることができるという特徴があります。今もなお親しまれ、新設住宅の約43%を占めており、最も着工数が多い工法です。

・枠組壁工法

枠組壁工法は、断面が2インチ×4インチの木材を基本として枠組みを作り、合板をくぎで枠に打ちつけることにより、面として強度のある床や壁を作って組み立てる工法です。断面形状(2インチ×4インチ)からツーバイフォー工法ともいいます。なお、乾燥収縮するため、実際は38mm×89mmの断面になっています。断面が2インチ×6インチ、あるいは2インチ×8インチなどの木材を使うこともあります。必要とされる構造強度や、断熱材の厚さなどにより木材断面も大きくなります。

・木質パネル工法

木質パネル工法は、あらかじめ工場で作ったパネルを、現場に運び込んで組み立てる工法であり、プレハブ工法ともいいます。均質なパネルを工場で大量生産できるため、住宅メーカーの中には、この工法を採用しているところもあります。

・丸太組工法

丸太組工法とは、樹皮を剥いだだけの丸太材や角材を水平に積み重ねて壁を構成していく工法で、東大寺正倉院の宝物殿などで知られる校倉(あぜくら)造りが該当します。また、ログハウスはこの工法です。

上記のうち枠組壁工法と木質パネル工法は、ともに壁や床を面として強度を確保しているため、リフォームの際の開口部の変更などに制限が出てきます。木造建築で大切なのは、それぞれの工法の特徴を理解し、施主の意向をくみ取った上で、適切な工法を選択することです。

3. 木質材料

日本では、建築材料として、針葉樹と広葉樹の両方の木材が使われています。木材としての使われ方を分類すると、丸太を角材や板材として切り出した製材品をそのまま使うケースと、切り出したものを加工して利用するケースに大別できます。以下に、建築材料としてよく使用される針葉樹、広葉樹、合板について紹介します。

・針葉樹

一般的に、柱や梁として利用するのは、針葉樹であるスギやヒノキ、ヒバ、マツです。針葉樹は、真っすぐで長く、加工しやすいため、長い直材として利用されています。丸太の加工の仕方により、芯持ち材(しんもちざい)と芯去り材(しんさりざい)に分類でき、径の比較的小さい丸太から製材すると、芯持ち材となります。特に芯持ち材は、腐朽しにくいため、木造軸組工法の柱や土台として使うケースが多くあります。一方、ヨーロッパやアメリカ由来の工法である枠組壁工法は、枠材としてS-P-F(常緑針葉樹の総称)を使うケースが多くあります。ホームセンターで販売しているDIYの材料も、このS-P-Fが多くを占めます。

・広葉樹

広葉樹はサクラやケヤキ、ブナなどの硬い材料です。広葉樹は枝が広がりやすく、長い直材が得られにくいため、建築で構造材に使われることは、あまりありません。硬い材料なので、床や天井、壁、家具、建具などの仕上げ材として使われています。

・合板

木材を加工して接着整形したものに、合板があります。合板は、現在ではなくてはならない木質材料になっています。合板には多くの種類があり、普通合板(図4)や、構造用合板、コンクリート型枠用合板、天然木化粧合板、特殊加工化粧合板などがあります。

図4:普通合板(著者撮影)
図4:普通合板(著者撮影)

合板は、一般的に、丸太を大根のカツラムキのように切削して薄い単板にし、繊維方向を交互に積層させて接着することで製造しています。普通合板は、建物の全般的な下地として使われます。構造用合板は、筋交いに代わる構造用面材、天然木化粧合板や特殊加工化粧合板は、建物や建具・家具の仕上げ材として使われています。その他、木材を破片状にして接着したOSB(Oriented Strand Boad)(図5)や、パーティクルボード、インシュレーションボードなどがあります。OSBは構造用面材として使われ、その他の材料は、家具などの心材、畳床、断熱材、内装の下地材として使われています。

図5:OSB(著者撮影)
図5:OSB(著者撮影)

大規模建築において、梁や柱に木材を用いる場合は、大断面の材料が必要となります。しかし、一般的な丸太からでは、大断面の材料を得にくいため、挽(ひ)き板(ラミナ)を積層接着して大断面集成材を作り、利用しています。昨今では、挽き板を並べ、繊維方向が直交するように積層接着した板状材料のCLTも利用されています。また、木材に防火処理を施し、燃えない時間により、不燃木材、準不燃木材、難燃木材として認定された材料があります。内装制限が適用される建物に利用することができるようになり、木造建築の可能性が広がっています。

参考文献:
和田浩一編、橋本幸博・藤野栄一、木造住宅設計の教科書~住宅計画・意匠・構造・設備設計まで一冊でわかる、技術評論社、2020年