溶接作業の安全対策:溶接の基礎知識8

溶接の基礎知識

更新日:2018年2月28日(初回投稿)
著者:兵庫職業能力開発促進センター 寺田 昌之

前回は、溶接技術者の資格認証制度を解説しました。今回は、溶接の安全対策を紹介します。高エネルギーを用いて金属材料を溶融・凝固する溶接作業は、さまざまな危険や災害と隣り合わせです。溶接作業で想定される災害と、その対策について解説します。

1. 溶接作業の安全衛生に関する法律

アーク溶接作業は、高エネルギーによって金属材料を溶融・凝固させて接合します。そのとき、強烈な光・熱とともにスパッタ(飛散物)や、ヒューム、ガスが発生し、これらによる災害が発生します(図1)。

図1:溶接で発生するアーク光、ヒューム、スパッタ

図1:溶接で発生するアーク光、ヒューム、スパッタ

高圧な溶接電源は、取り扱いを間違えると電撃事故につながります。高所作業や、狭い場所での作業など作業環境が災害を引き起こすこともあります。災害防止のために、労働安全衛生法など、さまざまな法律が制定されています。溶接の安全衛生に関わる代表的な法律は、9つあります。

  • 労働安全衛生法
  • 労働安全衛生施行令
  • 労働安全衛生規則
  • 有機溶剤中毒予防規則
  • 酸素欠乏症等防止規則
  • 高気圧作業安全衛生規則
  • 鉛中毒予防規則
  • じん肺法
  • 粉じん障害防止規則

アーク溶接の業務を行う場合、労働安全衛生法によって定められた、アーク溶接等の業務に係る特別教育を受講する必要があります。溶接作業の内容に応じ、適切な保護具の装着が義務付けられています(図2)。

図2:溶接作業で装着する保護具の例

図2:溶接作業で装着する保護具の例

2. アーク光やスパッタからの保護

溶接時に発生するアーク光には、強い赤外線や紫外線が含まれていて、皮膚や目に直接入ると障害を引き起こします。特に紫外線は有害で、短時間でも目に入ると、急性電気性眼炎の症状を引き起こします。症状は、約5~6時間後に目に砂のような異物が入ったように感じ、強い痛みが生じます。また、涙が止まらず、目を開けていられない状態になります。作業者の間では、目を焼く、目玉焼きなどと呼ばれます。冷やすことで痛みが和らぎ、大抵は24時間程度で自然に治ります。紫外線が皮膚に当たると、やけどのような炎症を起こします。赤外線は長時間目に入ると、白内障を引き起こすといわれています。

溶接作業をするときは、有害な光やスパッタから顔面を保護するために、顔全体を覆う保護面を使います。保護面にはフィルタプレートが取り付けられ、紫外線と赤外線を遮断し、適度な可視光線のみを通します。フィルタプレートの遮光能力はJIS T 8141 遮光保護具で規定されていて、使用可能なアーク溶接の溶接電流が決められています(表1

表1:フィルタプレートの遮光能力(遮光度番号)と使用可能なアーク溶接の溶接電流(JIS T 8141 遮光保護具を基に著者作成)
遮光度番号 被覆アーク溶接 ガスシールドアーク溶接
1.2 散乱光および測射光を受ける作業
1.4
9 75~200A 100A以下
10
11 100~300A
12 200~400A 300~400A
13

保護面には、手持ち保護面(図3の左)、かぶり保護面(図3の中)があります。最近では、液晶式自動遮光面(図3の右)を使用する人が多くなっています。また、アークの散乱光から目を守るために、保護めがねを使用します。スパッタなどからの保護も考えると、保護めがねはサイドシールド機能のあるものが望ましいでしょう。

図3:手持ち保護面(左)、かぶり保護面(中)、液晶式自動遮光面(右)

図3:手持ち保護面(左)、かぶり保護面(中)、液晶式自動遮光面(右)

3. ヒュームからの保護

ヒュームは、溶接熱によって溶融、蒸発した金属蒸気が空気中で冷却され、細かい固体状の粒子となったものです。ヒュームを吸入すると肺にたまり、じん肺という病気になります。じん肺は、初期段階は自覚症状がなく、次第に肺の機能が低下していく病気です。これを防止するためにじん肺法という法律があり、溶接作業者は定期的に健康診断を受診することが定められています。また、粉じん障害防止規則では、屋内で溶接作業を行う場合の換気や、作業に適した防じんマスクの着用が義務付けられています(図4)。

図4:フィルタ交換式防じんマスク(左)と使い捨て式防じんマスク(右)

図4:フィルタ交換式防じんマスク(左)と使い捨て式防じんマスク(右)

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4. ガスからの保護

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5. 騒音からの保護

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6. 電撃からの保護

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