アルミニウム合金のTIG溶接:溶接の基礎知識6

溶接の基礎知識

更新日:2018年1月26日(初回投稿)
著者:兵庫職業能力開発促進センター 寺田 昌之

前回は、タングステンを電極に用いるTIG(Tungsten Inert Gas)溶接とステンレス鋼を紹介しました。今回は、アルミニウム合金にTIG溶接を行う際のポイントや注意点を解説します。

1. アルミニウム合金の特徴

アルミニウム合金には、次のような長所があります。

  • 比強度(引張強度/密度)が高い:軽くて強い製品を作ることができる。
  • 耐食性に優れる:特に海水に強いので、船舶などに使われる。
  • 極低温でも粘さがなくならない:低温で保存する容器に適している。
  • 成形が容易:押出プレスによって、複雑な断面形状でも作ることができる。

一方で、アルミニウム合金を溶接する場合には、7つの問題が考えられます。

1:酸化皮膜の溶融温度が母材の溶融温度よりも高い

アルミニウム合金が腐食に強いのは、母材表面に酸化皮膜があるためです。しかし、皮膜の溶融温度は高く、約2,000℃です。母材の溶融温度は約600℃なので、通常のTIG溶接では酸化物がビードの中に入り込み(巻き込み)、溶接が困難です(図1)。

図1:表面の酸化皮膜の巻き込み

図1:表面の酸化皮膜の巻き込み

2:加熱時に酸化しやすい

加熱時に酸化を起こすと、溶接の品質が低下してしまいます。ガスシールドアーク溶接を行うことで、酸化を防ぐことができます。

3:空気を巻き込みやすい

溶接作業中に空気が入り込むと、酸化物の黒粉が発生します(図2)。

図2:空気の巻き込み

図2:空気の巻き込み

4:溶け落ちしやすい

アルミニウム合金は融点が低く熱伝導率が高いので、局部加熱が困難です。また、溶け始めると溶融速度が速くなり、溶け落ちしやすくなります(図3)。

図3:溶け落ち

図3:溶け落ち

5:変形しやすい

熱膨張係数が大きいため、溶接すると大きく変形する場合があります。

6:溶接割れが生じやすい

熱を加えすぎると、溶接割れが生じやすくなります(図4)。

図4:溶接割れ

図4:溶接割れ

7:ブローホールが生じやすい

溶接母材などが汚れていると、溶接中にブローホール(溶接部に発生する気孔の一種)が生じやすくなります。

2. アルミニウム合金の種類

アルミニウム合金は、展伸材と鋳物材に大きく分類できます。展伸材とは、圧延、押出、引抜、鍛造などの塑性加工によって作られた板、管、棒、線などの製品を指します。ここでは、展伸材の分類に基づいて、アルミニウム合金の種類を説明します。

・合金記号

アルミニウム合金の分類には、合金記号を用います。合金記号は、アルファベットのAと、合金の系統(添加されている元素)、改良合金、合金の種類を表す数字を4桁付与して表します(図5)。例えば、合金記号A5083はAl-Mg系のアルミニウム合金を表します。材質の形状、施した調整(質別)を示したい場合は、合金記号の末尾にアルファベットを付けて表します。例えば、A5083の板材で、焼なましを施した軟らかい材料は、A5083P-Oと書きます。

図5:合金記号

図5:合金記号

・合金の系統を示す数字

合金の系統を示す数字は、主要添加元素の種類を表しています。表1に、それぞれの数字が示す主要添加元素をまとめました。

表1:合金の系統を示す数字
合金の系統を
示す数字
主要添加元素 特徴および用途
1 純アルミニウム系 家庭器物などに使用
2 Al-Cu系 ジュラルミンと呼ばれ、航空機などに使用
3 Al-Mn系 純アルミニウムよりも強度に優れ、厨房器物、板金工作物などに使用
4 Al-Si系 溶接棒、溶接ワイヤなどに使用
5 Al-Mg系 溶接構造物、自動車、船舶などに使用
6 Al-Si-Mg系 サッシなどの建材用押出形材などに使用
7 Al-Zn系 航空機や、その他の構造物に使用
8 その他の合金
9 予備

なお、アルミニウム合金の展伸材は、強度を高めるために、加工硬化を利用したものと熱処理を利用したものに分類できます(表2)。

表2:展伸材の分類
分類表 主要添加元素 合金の系統を示す数字 代表的材料記号
非熱処理合金
(加工硬化)
99.0%以上Al 1 A1080、A1100、A1200
AI-Mn系 3 A3003
Al-Si系 4 A4043
Al-Mg系 5 A5052、A5083
熱処理合金 Al-Cu系 2 A2014、A2017、A2219
Al-Si-Mg系 6 A6061、A6063
Al-Zn系 7 A7075、A7039

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3. アルミニウム合金のTIG溶接

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4. アルミニウム合金のTIG溶接機

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5. アルミニウム母材の酸化皮膜と油脂の除去

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