マグ溶接とは:溶接の基礎知識4

溶接の基礎知識

更新日:2017年12月26日(初回投稿)
著者:兵庫職業能力開発促進センター 寺田 昌之

前回は、溶接記号の種類と書き方を紹介しました。今回は、ガスシールドアーク溶接の一つである、マグ溶接を解説します。

1. マグ溶接とは

マグ溶接(Metal Active Gas Welding)は、シールドガス(空気と溶融金属の反応を防ぐガス)に酸素が発生して化学反応を起こす活性ガス(Active Gas)を使用する溶接法です。一般的に、金属内に酸素が入り込むと、もろくなります。マグ溶接では、使用するワイヤに含まれているマンガン Mn、ケイ素 Siが脱酸剤となり、酸化マンガン MnO、二酸化ケイ素 SiO2となって溶接金属表面に浮上します(スラグ)。そのため、マグ溶接の溶接金属は酸素を含まず、じん性(粘り強さ)が高いのが特徴です。

マグ溶接装置の基本構成と溶接トーチ先端部の名称を図1にまとめました。マグ溶接は、ワイヤを一定速度で溶接トーチに供給し、トーチ先端でワイヤと母材間にアークを発生させて溶接します。

図1:マグ溶接装置の基本構成(左)と溶接トーチ先端部(右)

図1:マグ溶接装置の基本構成(左)と溶接トーチ先端部(右)

マグ溶接と似た名称の溶接法に、ミグ溶接(Metal Inert Gas Welding)があります。ミグ溶接はシールドガスにアルゴンArや、ヘリウムHeのような不活性ガス(化学反応しないガス)を用います。マグ溶接とミグ溶接は、ガスシールドアーク溶接に含まれます。

2. シールドガスの種類

溶接に使用されるシールドガスの品質は、JIS(日本工業規格)やWES(日本溶接協会規格)で、ガスの濃度や水分量、ガスに含まれる不純物などが制限されています(表1)。

表1:各種溶接用ガスの規格
ガスの種類 品質
規格番号 種類 濃度 水分
液化炭酸ガス JIS K 1106 3種 二酸化炭素99.5容量%以上 0.005質量%以下
炭酸ガス WES 5402 TG1 99.5%以上 125ppm以上
TG2 99.95%以上 50ppm以下
アルゴンガス JIS K 1105 - 99.9%以上 0.02mg/l以下
混合ガス WES 5401 AT-5 炭酸ガス5% 0.04mg/l以下
AT-10 炭酸ガス10%
AT-15 炭酸ガス15%
AT-20 炭酸ガス20%

3. 溶接材料の種類

マグ溶接に用いられるワイヤには、ソリッドワイヤとフラックス入りワイヤがあります。

・ソリッドワイヤ

ソリッドワイヤには、脱酸剤としてマンガンMn、ケイ素Siが含まれています。チタンTiやアルミニウムAlが含まれるものもあります。軟鋼および高張力鋼の溶接用ソリッドワイヤは、JIS Z 3312 軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用のマグ溶接及びミグ溶接ソリッドワイヤに規定されています。軟鋼および490N/mm2級高張力鋼に適用されるワイヤは、従来のJISによる表示方法(表2)を使用しています。

表2:溶接ワイヤとシールドガスの組み合わせ・特徴(ワイヤ径は直径1.2mmの場合)
ワイヤの種類 シールドガス 引張強度
(N/mm²)
使用方法
YGW11 CO2 490~670 230A以上の大電流を使った厚板の溶接に使用
YGW12 230A以下の小電流を使った薄板、立向、上向など全姿勢の溶接に使用
YGW13 230A以上の大電流で使用し、アルミによってブローホールが少ない
YGW14 430~600 230A以下の小電流を使用し、グラインダなどの仕上げ作業が行いやすい
YGW15 (20~25%)CO2+Ar 490~670 230A以上の大電流を使った厚板の溶接に使用
YGW16 230A以下の小電流を使った薄板、立向、上向など全姿勢の溶接に使用
YGW17 230A以下の小電流を使用し、グラインダなどの仕上げ作業が行いやすい
YGW18 CO2 430~600 230A以上の大電流を使った厚板の溶接に使用
YGW19 (20~25%)CO2+Ar 550~740

・フラックス入りワイヤ

フラックスには、金属粉、脱酸剤、合金成分、スラグ形成剤、アーク安定剤などが添加されています。しかしガスの発生剤は含まれていないため、シールドガスが必要になります。フラックス入りワイヤの区分記号は、JIS Z 3313 軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用アーク溶接フラックス入りワイヤによって定められています(図3)。

図3:フラックス入りワイヤの区分記号

図3:フラックス入りワイヤの区分記号

4. ワイヤの溶滴移行形態

マグ溶接では、ワイヤが溶けて金属粒(溶滴)になり、溶融池に移行します。溶滴は、溶接電流とシールドガスの成分によって、移行する際の形状や移行方法が変わります。これを溶滴の移行形態と呼びます。短絡移行、グロビュール移行、スプレー移行の3つに大きく分類できます。

・短絡移行(ショートアーク)

短絡移行(ショートアーク)は、ワイヤ先端が溶融状態になって溶融池に接触(短絡)した際に、表面張力で先端の溶融金属が移行する形態です。この形態が生じるのは、溶接電流が小さいときです。入熱量が少ないため、薄板の溶接や固定された配管など全姿勢の溶接に向いています。シールドガスには炭酸ガス、または炭酸ガスとアルゴンガスの混合ガスを用います。

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5. マグ溶接の溶接条件

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