有害物質の種類と健康への影響:水質汚染対策の基礎知識3

水質汚染対策の基礎知識

更新日:2016年11月9日(初回投稿)
著者:株式会社プリディクション郷事務所 兼 化学工学会SCE・Net 郷 茂夫
編集:Tech Note編集部

前回は、水質汚濁指標と汚濁メカニズムについて、解説しました。今回は、水質汚染の原因となる有害物質の種類と、それが私たちの健康や周囲の環境へ与える影響を説明します。

1. 水質汚濁物質・有害物質

汚濁物質・有害物質とは具体的には何でしょうか? どんな化学物質が有害なのかを見るために、健康有害項目や生活環境悪化項目を表1にまとめました。読者の皆さんは、いろいろな化学物質を扱っているでしょう。この表から該当するものがあるかどうかを推測してください。ただ、化学物質の種類は、さまざまな法令の中で膨大な数に上り、ここでは「水質悪化」に関わるもののみに限定していることに留意してください。法令の基準や規制事項については、次回連載で解説します。また、環境基本法と水濁法では、補欠項目も設定されています。(参考:環境省ウェブサイト

表1:人の健康に関わる有害物質
物質分類 環境基準項目 水質汚濁防止法 下水道法
公共水域 地下水 排出水 地下浸透水 下水の排除に関わる基準
重金属類 カドミウム、鉛、六価クロムCr(Ⅵ)、総水銀。Cr(III)は該当しない 同左 同左とその化合物 同左 同左
有機金属 アルキル水銀 同左 同左とその化合物 同左 同左
半金属 ヒ素、ほう素 同左 同左とその化合物 同左 同左
無機物 全シアン、硝酸性窒素および亜硝酸性窒素、ふっ素、セレン。アンモニア性Nは該当しない 同左 同左とその化合物 同左 同左
有機りん化合物(主に農薬) なし 有機りん化合物(パラチオン、メチルパラチオン、メチルジメトンおよびEPNに限る) 同左
有機物 ポリ塩化ビフェニル(PCB)、ジクロロメタン、四塩化炭素、1、2-ジクロロエタン、1、1-ジクロロエチレン、シス-1、2-ジクロロエチレン、1、1、1-トリクロロエタン、1、1、2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1、3-ジクロロプロペン、チウラム、シマジン、チオベンカルブ、ベンゼン、1、4−ジオキサン
地下水のみ:同左、塩化ビニルモノマー
同左、塩化ビニルモノマー 同左
表2:生活環境の保全に関するもの
水域分類 環境基準項目 水質汚濁防止法 下水道法
公共水域 地下水 排出水の規制項目
(含有量)
地下浸透水 下水の排除に関わる基準
河川 水素イオン濃度(pH)、生物化学的酸素要求量(BOD)、浮遊物質量(SS)、溶存酸素量(DO)、大腸菌群数 同左、ノルマルヘキサン抽出物質 (鉱物油類、動植物油脂類を含む)、フェノール類、銅、亜鉛、溶解性鉄、溶解性マンガン、クロム、窒素、りん 同左、
条例項目: pH、 BOD、 SS、 NH3-N、 NOX-N (DO、 COD は下水排除基準に許容限度はない)
湖沼、海域 化学的酸素要求量(COD)、全窒素、全りん
※BODは該当しない
河川、湖沼、海域共通 水生生物保全項目:全亜鉛、ノニルフェノール、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸およびその塩

図1:健康への悪影響のイメージ図

図1:健康への悪影響のイメージ図

2. 人の健康への影響

表1に示した有害物質が、人の健康に与える影響について解説します。各化学物質が実際に有害であるかどうかを左右するのは、物質の性状(有害性/有害物質の単位量あたり)とばく露量(瞬間的な摂取量とその継続時間による)が主な要因です。そのほかに、急性毒性、慢性毒性、毒性の多様な因子、化学種の相違、経路の違い、複合汚染、微量必須元素、生物学的半減期などの要因があります。有害物質であっても、量が少なければ、症状は起こりません。従って、これから説明する症状や生理学的障害などは、さまざまな要因によることを念頭に置いて、読んでください。

金属類汚染の人への健康影響

カドミウムCdの健康影響には、具体的症状として、腎臓障害や骨軟化症、カルシウム代謝損傷があります。人体内での生理学的症状として、大量のカドミウムを呼吸器系、または消化器系ばく露により吸収して起こる急性中毒と、長期間微量のカドミウムのばく露によって起こる慢性中毒があります。主に肝臓と腎臓に蓄積され、主に近位尿細管機能の異常による腎障害があります。経口摂取では、大部分がふん中から排せつされます。イタイイタイ病の原因になった物質です。

鉛Pbの健康影響には、具体的症状として、低色素性貧血、いわゆる鉛中毒があります。人体内での生理学的症状としては、慢性中毒があります。食欲不振、便秘に続いて、鉛せん痛が起こることがあります。鉛の消化管からの吸収は約10%に対し、吸入では約40~50%が気道および肺胞に沈着し、血液に移行します。

クロムVI(六価クロム)の健康影響には、皮膚潰瘍、鼻中隔湾曲、皮膚炎、胃・肺がんがあります。人体内での生理学的症状として、生体への蓄積性があります。主に六価クロムに起因し、肝臓腎臓障害、内出血、呼吸障害を発症します。六価クロムを含む空気やダストを吸引すると、鼻中隔穿孔や肺活量の減少などの呼吸器障害を起こします。六価クロム化合物は一般に、三価クロム化合物より毒性が強い。

水銀Hgの健康影響には、腎臓障害があります。人体内での生理学的症状として、金属水銀Hgは、赤血球ではカタラーゼによりHg2+に酸化されます。Hg2+は大部分が血しょうに分布し、腎臓に高い蓄積を示します。腎臓に取り込まれたHg2+はメタロチオネインと結合します。

有機水銀(アルキル水銀、メチル水銀)の健康影響には、神経系統を侵す、四肢のふるえ、運動失調、視野狭さくがあります。人体内での生理学的症状として、メチル水銀は種々の臓器に分布し、血液脳関門を通過して脳にも高い蓄積性を示します。主な特徴は、ハンター・ラッセル症候群といわれる中枢神経症状です。メチル水銀は、水俣病の原因になりました。フェニル水銀は、水俣病のような症状を示しません。

ヒ素Asの健康影響には、肝臓障害、皮膚色素沈着、皮膚がんです。ヒ素の慢性中毒では、色素沈着、皮膚炎や烏脚(うきゃく)病が知られています。

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3. 一般環境への影響

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