今回の話は、廃棄物全体の中で大きなボリュームを占める廃棄されたプラスチック製品や資材(以下、廃プラ)です。1995年に容器包装リサイクル法(以下、容リ法)が制定され、廃プラのリサイクルが促進されるようになりました。しかし廃プラのリサイクルは簡単ではなく、市民や行政、業者も長く頭を痛めています。どうすれば効率良くリサイクルできるのでしょうか。2000年代に起こった容リ法の矛盾と対応策を振り返ってみましょう。
- 1. プラスチック・リサイクルの現状
- 2. 廃プラに関わる法令的な枠組み
- 3. プラスチック・リサイクルの歴史
- 4. 廃プラリサイクルの課題と困難
- 5. 使用済みPETボトルのリサイクル
- 6. 改正容器包装リサイクル法とは?
- 7. おわりに:真のリサイクルを求めて
1. プラスチック・リサイクルの現状
日本では、毎年およそ1千万トンのプラスチックが消費されます。耐久消費財や長期使用財として、自動車部品や電気・電子部品、建築土木資材、日用品、農林水産品などに使用されます。また、一時品としてフィルムやカップ、トレイなど、食品やさまざまな商品の包装資材などにも使われます。これらは一回使ったらすぐ捨てられます。捨てられるプラスチックの種類の大半を占めるのは、異種の樹脂を複合化したものや貼り合わせたもの、食品や飲料物が付着して汚れたものです。包装材料の形状もさまざまで、破られたり、解体されたりしています。プラスチックの全廃棄物量のうち、この包装資材が多くを占めています。容器包装廃棄物の処理が緊急の課題になっています。
2. 廃プラに関わる法令的な枠組み
廃プラとは、廃棄されたプラスチック製品と製造過程で出たプラスチックのかす、廃タイヤを含むプラスチックを主成分とする廃棄物のことです。廃プラは、一般系廃プラスチックと産業系廃プラに分けられます。一般系プラスチックの大部分は、プラスチック容器包材です。今回は一般系廃プラを中心に見ていきます。
プラ容器包材の処理やリサイクルには、直接の関連法令が2つあります。1つは、1997年に施行された容器包装リサイクル法です。リサイクル(再商品化)義務のある素材は、ガラス製容器やPETボトル、紙製容器包装、その他プラスチック(以下、その他プラ)製容器包装です。今回は、その他プラ包材容器とPETボトルを見ていきます。もう1つの基本法令は、2001年に施工された資源有効利用促進法(第4回参照)です。この法律では、3Rと最終処分の優先順位が法定化されており、廃プラのリサイクルもそれに従います
3. プラスチック・リサイクルの歴史
容器包装リサイクル法の仕組みと実績
容器包装リサイクル法(容リ法)は、1995年に制定され、1997年から本格施行されました。目的は、家庭から排出されるごみの過半を占める廃プラについて、リサイクルの促進などにより、埋設や焼却処理の減量化を図ることです。責任の範囲は、消費者が分別排出、市町村が分別収集、事業者が再商品化です。容リ法の仕組みを図1 に示します。図1の朱線がお金の流れを示しています。特定事業者は、再商品化のためのお金を支払う義務があり、大部分が再商品化事業者に委託料として支払われます。これは、拡大生産者責任の考え方を取り入れたものです。
特定事業者:再商品化(リサイクル)コストの支払い義務を負う事業者(小規模事業者などは適用除外)
・容器や包装を利用して中身を販売する事業者(スーパー、百貨店など)
・容器を製造する事業者(包み袋メーカーやボトルメーカーなど)
・容器および容器、包装が付いた商品を輸入して販売する事業者
拡大生産者責任 :EPR(Extended Producer Responsibility)
OECD(経済開発協力機構)が定義した用語です。容器包装を含む製品の設計・製造に、最も影響を与える生産者に対し、物理的・金銭的責任を製品の廃棄後まで全面的もしくは部分的に拡大する環境政策の手法です。日本においては、容リ法の施行により、それ以前は自治体が行っていた容器包装廃棄物の処理の責任のうち再商品化の部分を事業者の責任とし、日本で初めて「EPR」が導入されました。
図1による実績を表1、2に示します。収集率、リサイクル歩留まりは、共に低いものでした。また、材料リサイクルのコストは、表2の合計に再生業者の内部コストが加わり、かなり高くなりました。しかし、リサイクルでできたものは、パレット、コンクリートパネル、擬木など付加価値が低いものが大半でした。バージンプラスチック材料の代替には、ほとんどなりませんでした。
2005年 | 2008年 | |
廃プラスチックの年間排出量(一般、産廃、その他) | 約1千万t | 約1千万t |
再商品化業者に渡された量 | 53万t | 67万t |
収集率 | 約5% | 約7% |
再資源化されたもの | 37万t | 33万t |
材料リサイクル量(製品として販売・使用されたもの) | 9万t | 17万t |
リサイクル歩留まり | 70% | 49% |
2005年 | 2008年 | |
収集費用(自治体負担) | 50円/kg | 41円/kg |
再資源化費用(商品化事業者へ支払う委託料) | 82円/kg | 112円/kg |
費用単価の合計 | 132円/kg | 153円/kg |
2004年~2006年頃の混乱
2005年ごろに容リ法に関わる事件が発生しました。企業の処理費負担について、ほとんどのスーパーが支払いの拒否を表明しました。さらに、一部のスーパーが国や協会へ損害賠償の提訴し、PETボトル再生メーカーの倒産などが何件も起こりました。 容リ法に関わる当時の問題をまとめます。
・ 容器包装リサイクルに関する社会的コストの増大問題
容器包装リサイクルの分別収集や選別保管で、市町村の負担が増加しました。市町村による分別回収・選別保管コストの純増分は、約380億円(2005年)にもなっていました。特定事業者が支払う再商品化委託費も年々増加していました。これが2005年の事件を引き起こした背景と考えられます。図2に委託費の推移を示します。このうちプラスチックが圧倒的に多く、2005年には400億円を突破していました。
・ただ乗り事業者の存在
リサイクル義務が課せられているにもかかわらず義務を果たさない、いわゆる「ただ乗り事業者」が一定数存在しており、事業者間の不公平が発生していました。
4. 廃プラリサイクルの課題と困難
容リ法を実施して分かってきた課題と困難を、より詳しく振り返っていきます。
廃プラリサイクルの収集費用、委託費用問題
容リ法の仕組みでは、収集量よりも再生可能量(施設能力)が多い場合、廃プラを安く再生できる業者のみ入手可能なので、再生コスト削減の努力が働き、委託価格の低下が期待できます。しかし、2005年当時は、再商品化量が増えても委託単価が低下しない状況が続いていました。自治体の分別・収集・保管費用も増加し、特定業者の負担額は図2のように年々増加していました。企業主体のリサイクルならばコスト(資源・エネルギー消費)の歯止めが働きます。しかし、容リ法の仕組みではコストの論理が働きにくく、この仕組みが固定的に運営されたことが問題でした。
廃プラリサイクルの技術的課題
廃プラリサイクルの技術的課題の1つ目は、リサイクル率向上の標語を推奨し過ぎたことです。収集、中間処理、再生行為にはエネルギーが必要です。リサイクル率を過度に上げようとすると、その再生に必要なエネルギーが新品製造にかかるエネルギーよりも大きくなります。この状況では、環境負荷対策として不合理となります。つまり、リサイクル率をただ上げればよいとはいえません。2つ目は、再生品の機能保証が限定的にしかできない点でした。モノは使用することにより物質・材料の品質は必ず劣化します。また、商品の製造では、機能・美観を満足するために複合材や多成分の組み合わせがあります。つまり製品は素材の混ぜ物がほとんどです。このため、再生品の機能保証をどうするか、原料要求品質をどう確保・検証するかが課題となりました。
廃プラリサイクルの根源的な課題
廃プラリサイクルの根源的な課題の1つ目は、消費者が情報不足の状態に置かれていることです。
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5. 使用済みPETボトルのリサイクル
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6. 改正容器包装リサイクル法とは?
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7. おわりに:真のリサイクルを求めて
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