前回は、さまざまな超音波計測を紹介しました。今回は、圧電振動子を用いた、さまざまな超音波センシングデバイスを解説します。圧電超音波センシングデバイスには、小さな質量を付加すると共振周波数が下がる、ということを利用した振動子型センサ、弾性表面波の伝搬面を利用した表面波センサ、回転運動を検出する振動ジャイロなどがあります。
1. 振動子型センサ
水晶などの圧電材料を用いた振動子は、振動子の寸法(長さや厚さなど)によって異なる特定の周波数において、よく振動します。この現象を共振といいます。共振は、振動子の寸法が振動の半波長や、その奇数倍のときに発生します。このように、共振が発生するときの周波数を、共振周波数といいます。共振周波数の付近では、電気的なインピーダンスが鋭い極値を示します。この原理は、周波数基準を作る回路素子などに応用されています。
周波数安定度の高い水晶振動子は、1932年、日本の電気通信工学者、古賀逸策によって開発されました。この技術は、水晶時計(クォーツ時計)をはじめとして、コンピュータのクロック信号を作る回路など、現代技術の基盤となっています。水晶振動子は、圧電材料の上下面に薄い電極を付けた構造をしています(図1)。
振動子は付着物に対して敏感で、微量の付着物があるだけで共振周波数が変化します。このことに着目し、水晶振動子は、微小な質量変化を測定するセンサとしても利用されています。ここからは、振動子のセンサとしての仕組みを解説します。
水晶振動子の電気的な性質は、図2に示す電気回路で表すことができます(図2の左上)。これを、電気等価回路といいます。振動子は、非導体である圧電体を平行電極ではさみ込んだキャパシタ(電気をためる電気素子:コンデンサともいう)の構造をしており、その電気容量をCdで表わしています。
一方、周波数f0において振動子が共振し、よく振動している時、回路には振動に応じた電流が流れます。これを、電気等価回路において、インダンクタンス Lm、キャパシタ Cm、抵抗 Rmの直列共振で表わしています。言い換えると、振動子をばね振り子と見立てたときの等価的な質量、ばね、機械抵抗(ダンパ)に対応するものを、電気素子で表しています。よって、アドミッタンス(インピーダンスの逆数)が極大値を持つ周波数f0は、以下の式で表されます。
ここで、振動子に小さな付着物があると、わずかに質量が増加します。その場合、等価的な質量に相当する電気素子Lmの値もわずかに増え(ΔLm)、周波数がΔfだけ低下します(図2の右)。
これら2つの式により、共振周波数の変化率から、質量変化率を推測することが可能です。
この現象は、真空蒸着装置の膜厚計に使われています。蒸着層の中に水晶振動子を置き、振動子に蒸着された膜の厚さを、質量付加効果による共振周波数変化として検出します。また、水晶振動子の電極上に、特定のガスを吸着する特殊な膜を設けることで、ガスセンサとしても応用できます。
その他にも、棒状の振動子の一部を液体に浸し、液深計として用いたり、浸す液体の粘性が共振周波数や共振の鋭さに影響することから、粘度センサとして用いるなど、応用の範囲は多岐にわたります。
2. 表面波センサ
表面波センサは、物体の表面のみが振動する弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)を検出するセンサです。弾性表面波は、発見者のイギリスの物理学者、ジョン・ウィリアム・ストラット(レイリー卿:Lord Rayleigh)の名前をとって、レイリー波とも呼ばれます。弾性表面波の伝搬速度は、縦波の約半分です。物体の表面から1波長ほどの深さに振動エネルギーが集中しているため、その伝搬は、表面の状態に敏感です。
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3. 振動ジャイロ
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