自働化と多工程持ちシステム:トヨタ生産方式の基礎知識3

トヨタ生産方式の基礎知識

更新日:2016年10月19日(初回投稿)
著者:四日市大学 経済学部 教授 熊澤 光正

前回は、ムダの排除と、ジャスト・イン・タイム、かんばんについて解説しました。今回は、トヨタ生産方式の「自働化」と、多工程持ちシステムおよび標準作業を解説します。

1. 自動化ではなく、自働化!

自働化の導入

化? 自化の間違いでは?と思った人もいるかもしれません。トヨタ生産方式では、人偏の付く自化を使います。

フォードやスローンの大量生産方式では、製造する部品ごとに専用の機械を使います。これらの機械は高価で能力が高く、人間の技術や経験に置き換わりました。人も高度に分業化され、マニュアル通りに繰り返し作業を行います。しかし、このようなシステムは、多品種少量生産には向きません。多品種少量生産で効率を上げるには、機械の高速性・加工力を生かし、人が柔軟に調整を行うシステム作りが必要です。

トヨタ生産方式を体系化した大野耐一氏(以下、大野氏)は、最初豊田紡織に入社しました。そこでは豊田佐吉(トヨタグループの創始者)の発明による自動織機が使用されていました(図1)。自動織機は糸が切れたり、なくなると自動的に停止して作業者に知らせます。作業者はそれを見て、糸を紡いだり、故障の修理に取り掛かります。そして、作業者は1人で何台もの織機を受け持つことができます。このように、機械に自動で動く以外に停止などの機能を持たせ、作業者は単純作業ではない働きをすることを「自働化」といいます。

自働ミシン。作業者が複数台を受け持つことができる

図1:自働ミシン。作業者が複数台を受け持つことができる

大野氏はトヨタ自動車に転籍後、自動織機の方式を自動車の生産現場にも導入できるのではないかと考えました。しかし、当時の作業者は職人気質が高く、1人で1台の機械を受け持ち、工具の手入れから機械の保全まで全てを担っていました。当然、織機の方式を取り入れる取り組みは反対されました。そこで、まず、大野氏は工具の集中研磨を導入しました。そして根気よく、機械の2台持ち、多台持ち、多工程持ちを導入し、作業者と共に自働化を進めていきました。

自働化の仕組み

まず、自働化を実現するために機械には、不良品があったり故障した場合に、作業者にそれを知らせる仕組みが必要です。不良品を作らない仕組みも求められます。

このような機械を使い、作業者の動きはどうなるのでしょうか? 作業者が機械を操作すると、機械は自働的に動きます。作業者は次の機械の操作を行います。これをサイクルタイム(タクトタイム)の間、繰り返します(図2)。1人の作業者による、多台持ち、多工程持ちが可能になります。

自働化のMan-Machineチャート

図2:自働化のMan-Machineチャート

実際に自働化を進める上でのポイントは、自動停止、定位置停止、目で見る管理の3つです。トヨタ生産方式では、機械も人も標準を決めることが重要です。標準があれば、正常と異常を区別することができます。これを踏まえて、3つのポイントを見ていきましょう。

第1のポイントは、自動停止です。機械の故障や作業者によるミスなどが発生すると、機械は自動停止し、作業者に異常を知らせます。この場合の異常とは、品質不良、材料切れ、予定工数のオーバーなどにより、予定の原価や品質、納期を達成できないことを意味します。いくら高額で高性能な機械でも、自動停止ができなければ、作業者を配置し、機械を監視しなければいけません。

第2のポイントは、定位置停止です。これは、組み立てラインに、自動停止と同じ仕組みを応用したもので、作業者自身が、機械の異常や不良品を発見すると、ラインを停止させ、異常を取り除くことで再発を防止します。

第3のポイントは、目で見る管理です。異常停止やライン停止が発生した場合、どこでどんな異常が発生したのかを知らせます。この仕組みには、アンドンと呼ばれる表示や、生産実績を示す管理板などが使われます(図3)。

異常検知と表示ライト(作業者上部の赤いライト)

図3:異常検知と表示ライト(作業者上部の赤いライト)

その他によく使われる仕組みとして、フルワークシステムやフールプルーフがあります。フルワークシステムでは、2つの工程間にワークが標準数以上あると、前工程の動きを止め、前工程の過剰生産を防ぎます。

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2. 多工程持ちと標準作業

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