7つのムダとジャスト・イン・タイム:トヨタ生産方式の基礎知識2

トヨタ生産方式の基礎知識

更新日:2016年10月5日(初回投稿)
著者:四日市大学 経済学部 教授 熊澤 光正

前回は、トヨタ生産方式の原点、構造と歴史を説明しました。今回はムダの排除と、ジャスト・イン・タイム、かんばんについて詳しく解説します。

1. ムダの排除とカイゼン

前回解説した通り、トヨタ生産方式の最大の目標は、徹底したムダの排除です。ムダとは利益を生まない全ての行為です。トヨタ生産方式では、ムダを7種類(作りすぎのムダ、手待ちのムダ、運搬のムダ、加工そのもののムダ、在庫のムダ、動作のムダ、不良品を作るムダ)に分類しています。

作り過ぎのムダ
最大のムダは不要なモノを作ることです。作っても売れないことに、最大の問題があります。これを解消するには、注文後に生産を開始します。このとき、顧客は納品までどのくらい待ってくれるかがポイントになります。例えば、オプションなしの自動車と、各種オプションを搭載した自動車なら、後者の方が生産期間は長くなります。このように製品によって異なるものの、納期は短ければ短い方がよいことに変わりはなく、メーカーは生産期間を最小にする努力が必要です。

手待ちのムダ
機械が動いている間、作業者が機械の故障や不良品発生を監視している行為のムダを指します。大野耐一氏は「閑視」と呼び、この時間をムダと考えました。適切な機械の故障検知や、不良品の発見装置が作動すれば、作業者が監視する必要はなく、複数台の機械を操作できます。

運搬のムダ
仕掛品が、工程間をムダに移動することを指します。機械の能力差や、レイアウトが悪いなどの理由でムダな運搬が発しします。有効な対応手段の一つが多工程持ちシステムです。第3回で触れます。

加工そのものムダ
適切な加工手段が選ばれていないために発生するムダです。鍛造(金属を金型でたたく製造法)で済むのに、旋盤で削り出すなどの事例が考えられます。

在庫のムダ
不要不急のモノを作ることのムダを指します。材料やエネルギー、人件費を先取りするだけでなく、倉庫や置き場を必要とし、さらには積み替え作業や、金利が発生します(図1)。

在庫のムダがある生産現場

図1:在庫のムダがある生産現場

動作のムダ
指先でできることを手でしたり、腕全体を使うなど、動作に関するムダのことです。工程間が離れているため、歩行による移動の発生も含みます。

不良品を作るムダ
不良品は、材料や人件費、機会損失を発生させます。さらに好ましくないのは、不良品を連続して作ることです。これは自働化によって解消されなくてはいけません。

これらのムダは、不断のカイゼンによって最小限に防ぐ必要があります。普通のメーカーの場合、カイゼンは、製品原価で評価しがちです。しかしトヨタ生産方式では、いかに効率良く生産するかによって評価します。例えば、1日に10人の作業者が100個生産していたものを、120個作るのではなく、8人で作れるようになれば、評価します。

評価の尺度の一つに、「可動率」があります。普通のメーカーでの評価法は、稼働率(稼働時間÷定時時間)です。これは需要量によって決まります。一方、トヨタ生産方式では、可動率(働くことができる時間÷定時時間)で評価します。これは機械の保全が十分になされていることが前提です。カイゼン活動は、あくまでも原価低減と結びついている必要があります。

2. ジャスト・イン・タイムとかんばん

1970年代、トヨタ生産方式は「かんばん方式」と呼ばれていました。しかし、トヨタ生産方式=かんばん方式という図式は全くの誤解です。かんばん方式はジャスト・イン・タイムを実現するための重要な技法の一つです。

ジャスト・イン・タイムとは、「必要なものを、必要な時に、必要なだけ生産する」ことです。この場合の「必要」とは、顧客(または後工程)の要望と言い換えることができます。タイミング(時間)の観点が重要です。通常は顧客の要望より生産期間が長いため、生産計画を立てて各工程に示し、各工程はそれに従って生産を行います。しかし、実際は各工程で発生したさまざまなトラブルに対応するため、在庫を準備します。

トヨタ生産方式では、後工程引き取り方式として「かんばん」を利用します。この方式では、組み立てラインの最終工程の先頭だけに生産指示を出します。各部品ラインは、最終工程の進度によって生産を進めます。ラインでトラブルが起こると、全ての部品ラインを停止させます。震災時などにトヨタのラインが止まるのは在庫を持たないせいだと非難されることがあります。しかし、これは誤解です。逆に、在庫が少ない証拠といえるでしょう。

通常のメーカーでは、製造ラインが複数の工程に分けられ、各工程が最小コストで作業できるように設計されています。各工程に生産能力の差がある場合、在庫で対応します。生産設備でジャスト・イン・タイムを実現するには、生産期間を短くすることが必要です。そのためには、段取り替え時間の短縮、平準化(第4回で解説)が必要です。かんばん以外にも順序生産など、多様な生産指示方法があります。

理想は、多工程持ちシステムで、かんばんを無くすことです。かんばん方式を採用するのは、「勤務体制に差があるとき」、「工程間の能力にアンバランスがあるとき」、「サイクルタイムを均一に保つのが困難なとき」です。

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