住宅における断熱:断熱の基礎知識3

断熱の基礎知識

更新日:2017年10月25日(初回投稿)
著者:有限会社ADS計画研究所 代表取締役 堀 清孝

前回は断熱と遮熱の基本的な考え方を解説しました。今回は、住宅に断熱を施すことによるメリットを、さまざまな視点から見ていきましょう。

1. 住宅における断熱のポイント

住宅では、熱はどこから逃げ、どこから入ってくるのでしょうか。実は、窓やドアが最も大きな割合を占め、外壁、屋根(天井)、床が続きます。建物の隙間や機械換気も熱の出入り口となります。図1は、標準的な断熱仕様である平成4年省エネルギー仕様を施した住宅を想定し、熱の逃げる割合と侵入する割合をシミュレーションしたものです。冬は窓から48%の割合で熱が逃げ、夏は71%もの熱が入っています。窓が熱の大きな出入り口になっていることが分かります。また、冬は換気によって17%もの大きな熱が逃げています。

図1:住宅から熱が逃げる割合(左)と熱が侵入する割合(右)

図1:住宅から熱が逃げる割合(左)と熱が侵入する割合(右)(一般社団法人日本建材産業協会省エネルギー建材普及センター、21世紀の住宅には、開口部の断熱を…!を基に著者作成)

断熱化とは、壁や天井に断熱材を入れるものと思われがちです。しかし、窓からの熱損失が非常に大きいため、窓やガラスの高断熱化や、太陽の日差しを遮る日射対策が重要なのです。近年の木造住宅は気密工事をしなくても良いほどに気密性が高く、隙間風による熱損失は非常に少ないです。

2. 住宅における断熱効果

住宅に断熱を施すメリットは4つあります。ふく射熱の低減、健康維持、経済的負担の低減、結露の防止です。それぞれを見ていきましょう。

1:断熱によるふく射熱の低減

建物に断熱を施すことで、壁や天井からのふく射熱を減らすことができます。その結果、体感温度が改善します。壁や天井からのふく射熱は、体感温度に大きく影響します(第2回参照)。また、ふく射熱の低減は室内の温度むらを少なくします。すると、エアコン、暖房機器などの空調機器は、より均質で安定した室温を持続的に作り出すことができます。また、高断熱にするほど、壁や天井からのふく射熱が大きく変化しなくなるため、頻繁にエアコンを運転させる必要がなくなります(図2)。設定室温になった後の空調機器は、壁や天井からのふく射熱を調整するために運転しています。高断熱化を進めることで、24時間全館空調を行っても、光熱費の上昇を抑えることができます。

図2:冬季に室温を20℃に設定したときのエアコン動作

図2:冬季に室温を20℃に設定したときのエアコン動作

2:断熱による健康維持効果

住宅の断熱化による健康維持効果として、ヒートショックの防止が挙げられます。ヒートショックとは、温かい部屋と寒い部屋を行き来するなど、急激な温度変化によって生じる健康被害のことです。要因は、温度変化によって血圧が大きく変動することです。昔の住宅は非断熱であることが多いため、冬場の玄関や浴室、トイレは寒くなります。暖かい部屋と寒い部屋を行き来することで、ヒートショックの危険性は高まります。また、寒い家では温かい湯船に入りたいと考える人が多く、これもヒートショックの一因です。住宅の断熱化により、家全体の温度差が小さくなり、ヒートショックの危険性を低減できます。高血圧などの身体ストレスが少なくなり、脳疾患、心疾患などの症状を減少させ、高齢者に優しい生活環境になります。

断熱は、血圧上昇の防止にも役立ちます。一般社団法人日本サステナブル建築協会が2017年に開いた、住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する調査の中間報告会では、朝の室温が10℃低いと、血圧が平均7.3mmHg、高齢者は平均8.8mmHg上昇するという結果が報告されました。高断熱化を施して朝の室温低下を防ぐことで、血圧上昇を防止する効果が期待できます。高齢者世帯にとって、断熱化は有効な健康維持対策といえます。

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