プライベートブランドによる差別化:店舗運営の基礎知識2

店舗運営の基礎知識

更新日:2022年1月14日(初回投稿)
著者:中京大学 総合政策学部 総合政策学科 教授 坂田 隆文

前回は、店舗の役割やその運営の難しさについて紹介しました。今回は、プライベートブランド(PB)による差別化について解説します。商品を仕入れて、それを消費者に売るというだけでは、店舗の独自性を出すことが難しくなり、プライベートブランドが開発されるようになりました。もちろん小売業である店舗自体が工場を併設する、ということはありません。では、その裏にはどのような仕組みがあるのでしょうか。

1. プライベートブランド(PB)とは

プライベートブランド(PB)とは、小売店・卸売業者が企画し、独自のブランド(商標)で販売する商品です。プライベートブランドは、特定の店舗にしか売っていないために、消費者の注目を集める効果が期待できます。一方、製造業者が提供するブランドのことをナショナルブランド(NB)といいます。ナショナル、つまり、全国的に(範囲を定めず)売られているブランドです。

店舗運営において、他店との差別化というのは非常に重要な問題です。そのため近年、プライベートブランドの開発・発売がコンビニエンス・ストアを中心に重視されています(図1)。

図1:コンビニエンス・ストア店内

図1:コンビニエンス・ストア店内

前回でも指摘したとおり、小売業である店舗は、製造業者や卸売業者から商品を仕入れ、それを消費者に販売することを主業務としています。つまり、右から左へ商品を流すのが店舗の役割ということになります。すると、例えば伊藤園の「お~いお茶」を購入する消費者にしてみれば、価格が一定である場合、店舗はファミリーマートであっても、ローソンであっても、また、イオンであっても構わないということになってしまいます。店舗側にしてみれば、当然、自社店舗での購入を望んでいます。しかし、同じ商品を売っている以上、消費者に「ローソンに行かないようにしてほしい」などと頼むことも脅すこともできるはずがありません。

さて、そこで登場するのが、その小売業独自の商品であるプライベートブランド(PB)です。ファミリーマート限定の商品があり、消費者がそれを好めば、その分顧客の確保が可能です。これはコンビニエンス・ストアに限らず、スーパーでもドラッグストアでも百貨店でも、同じことがいえます。その店独自の商品があれば、それだけで他店との差別化を図り、消費者を集めることができます。皆さんも「ファミマスイーツ」、「セブンプレミアム」、「TOPVALU(トップバリュ/イオン)」、「情熱価格(ドン・キホーテ)」といったPBの名前を聞いたことがあるでしょう。

では、店舗は店頭の商品を全てPBにすれば完全なる差別化を図れるので、戦略的によいのでしょうか。実際は、そうもいきません。なぜなら、消費者は小売業のオリジナル商品だけでなく、既に定番となっているようなNB商品の購入も望んでいるからです。カルビーのポテトチップス、日清食品のどん兵衛、井村屋のあずきバー、キリンビールの淡麗はそれぞれ、発売以来人気を博し続けている商品です。PBだけで品揃(ぞろ)えされた店舗では、たとえ他店と差別化が図れたとしても、集客力という点で劣ってしまうかもしれません。店舗は、店頭に商品を並べる際、NBとPBのバランスを考えなければなりません。

2. ブランドとは

ブランドとは、「牛の焼き印」が語源です。牛というのは、一見すると誰の牛か、どこの産地のものかなど、見分けが付きません。そこで、焼きゴテで火傷(やけど)をつける。焼く(burn)の受動態であるburned(バーンド)が訛(なま)っていって、ブランド(brand)になったというのが定説です。現在でこそ、原産地証明書が発行されたり、トレーサビリティ(作られてから手元に届くまでの経路)が確認されるなど、ブランドに代わる品質保証手段があります。しかし、私たち消費者にとっては、ブランドというのが最も信頼を置ける証拠です。私が講義で学生によく説明するのは、「どこの国に行っても、コカ・コーラだったら安心して飲めるでしょう?」というたとえ話です。文字が読めない国でも、言葉が理解できない国でも、コカ・コーラなら「あの味」と信じることができます。これこそ、ブランドの本質です。

店舗運営の話に戻りましょう。前述したように、差別化のためにPBだけで品揃えをするわけにはいきません。昔ながらの定番NB商品を求めて店舗にやってくる消費者もいます。では、NBを作っている製造業者に、自社にだけPBを作ってもらってはどうか。このような発想をしてもおかしくありません。カルビーに自社だけのポテトチップスを、キリンビールに自社オリジナルのビールを、敷島製パンには自社だけのパンをそれぞれ開発してもらおう。そう考えてもおかしくありません。しかし、現実にはPBだけで成立している店舗など、存在しません。なぜでしょう。

3. PBに求められる販売力

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