店舗を運営するとは:店舗運営の基礎知識1

店舗運営の基礎知識

更新日:2021年12月7日(初回投稿)
著者:中京大学 総合政策学部 総合政策学科 教授 坂田 隆文

私たち消費者は日ごろ、百貨店やスーパー、コンビニエンス・ストア、ドラッグストアといったお店を使いながら生活しています。近年ではネットショッピングも活況を呈していますが、それでも、実際の店舗がなくなることはありません。では、その店舗を運営する裏側はどうなっているのでしょう。本連載では、流通論のさまざまな観点から、店舗運営の姿に触れていきます。

1. 小売業者と卸売業者

私たちが日常生活で買い物をする百貨店やスーパー、コンビニといった店舗、いわゆるお店のことを、流通論の専門用語では小売業者といいます。この小売業者は消費者に販売する流通業者と定義付けられ、消費者以外に販売する流通業者である卸売業者と区別されます。

小売業者は通常、生産者・製造業者から直接、あるいは卸売業者を通して仕入れをすることで、その品ぞろえを行います。この、生産者から消費者に至る商品の流れのことを流通と呼びます(図1)。この流通の川上から川下の流れの中で、最後にビジネスを行うのが小売業者というわけです。つまり、1つの流通の流れの中に生産者や卸売業者とともに存在していても、小売業者は実際に消費者に接するという点で、生産者や卸売業者とは大きく異なっています。

図1:流通の流れ

図1:流通の流れ

小売業者でも、行商人や外商、インターネット販売のように店舗を構えない(あるいは店舗の外で活動を行う)業態もある中で、本連載では、実際にお店を構えている小売業者、つまり、店舗の運営について説明していきます。

2. 店舗の役割

店舗に商品が入る前のことを川上、店舗に入ってから消費者の手にわたるまでの間のことを川下と表します。店舗には、大別すると川上に対する役割、川下に対する役割、店舗を運営する役割の3つの役割があります(図2)。

図2:店舗の役割

図2:店舗の役割

・川上に対する役割

川上に対する役割とは、商品を仕入れるということです。どこから何を・どれだけ仕入れるのかを決め、実際に交渉・取引を行う。これが、小売業者の川上に対する役割です。例えば、コンビニエンス・ストアを思い浮かべてみて下さい。コンビニエンス・ストアの中には、およそ2,000~3,000の商品があるといわれています。それだけの商品を、全部バラバラに発注して店に運んでもらい、店頭に並べようとすると、配送トラックとの対応だけでも大変な作業になります。すると、どのように仕入れるか、ということも考えねばなりません。

・川下に対する役割

川下に対する役割とは、消費者に対してどのように販売するのかということです。小売業者は定義上、自分より川下には消費者しかいません。例えば、近隣住民にチラシを配布する、実際に店舗に訪れた消費者に接客を行う、あるいは商品を仕入れるために消費者からの要望に耳を傾けるといったことも、川下に対する役割といえるでしょう。百貨店であれば、各地の物産展を開いて集客に努めます。スーパーであれば、マグロの解体ショーを催してお客さんを集めようとすることもあります。そういった、消費者に対してどのようにアプローチするのかを考えるのも川下に対する役割です。

・店舗を運営する役割

店舗には、その店舗を運営するという役割があります。例えば、営業時間を何時から何時にするかを決めたり、そもそもどこに出店するか、どのような品ぞろえを行い、どうやって陳列するかを決めたりします。また、従業員をどのように採用するか、その従業員のシフトをどのように組むか、さらに、接客マニュアルを作成するか、作成するのであればどのようなマニュアルにするのかを決めるというのも、店舗自体が持つ役割といえるでしょう。まさに、この連載テーマである店舗運営です。

3. 店舗運営の難しさ

生産者や卸売業者から商品を仕入れて、消費者に販売する。小売業者たる店舗が行うのは、ひと言で表すなら、これだけです。簡単そうに聞こえるかもしれません。しかし、簡単な業務だからといって、簡単に儲けられるというわけではありません。店舗運営には、他のビジネスとは違った難しさが随所に存在しています。何よりも、店舗運営においては、ビジネスの基本中の基本である差別化が難しいということがいえます。

例えば、「缶コーヒーを買うなら、ファミリーマートじゃなきゃ嫌だ。通勤途中にファミマがなければ、一駅手前で下車してでもファミマで缶コーヒーを買う」などという酔狂な人はなかなかいません。同じ缶コーヒーであれば、ファミリーマートで買おうがローソンで買おうが自販機で買おうが、消費者には何ら問題ないことです。商品を仕入れて売るということは、その商品自体が同じであれば、消費者にとってはどこの店舗で買おうが構わない、ということです。製造業者の場合であれば、新しい機能を加えるなり、モデルチェンジを行うなりで差別化を図ることができます。しかし、ある店舗が他の店舗と同じ商品を売るとなれば、差別化は容易ではありません。どうせなら自店で買ってもらいたい、いえ、自店で買ってもらわなければビジネスになりません。さて、どうしましょう。

特に近年、Amazonを引き合いに出すまでもなくインターネット販売がますます便利になり、消費者はスマホの操作だけで商品を手に入れることができます。ペットボトルの飲料1箱を買ったり、大きめの家具を買ったりする時などは、持ち帰りの負担を考えると、インターネット通販を使った方が楽だと考える消費者も年々増えています。すると、店舗の存在意義が薄れることになってしまいます。

いかがでしたか? 今回は、店舗の運用について説明しました。生産者や卸売業者から商品を仕入れて消費者に販売する。それを生業(なりわい)にしながら利益を稼ぐ。そのためには、店舗運営に工夫を凝らしたり、独自性を持ったりすることも大事です。なにせ、ビジネスとして儲けを得ようとしているのですから。そこで、この連載では次回以降、店舗運営の基礎的な知識をベースに、店舗がどのようにして利益を得ようとしているのかを解説していきます。次回は、PB(プライベートブランド)を取り上げます。お楽しみに!

参考文献:
石原武政・竹村正明・細井謙一編著、1からの流通論(第2版)、碩学舎、2018年11月
高嶋克義、現代商業学(新版)、有斐閣、2012年3月