前回は、分散分析を説明しました。今回はいよいよ最終回、実験計画法について解説します。実験計画法は、多数の要因の最適な組み合わせ条件を求めるためのツールです。効率の良い実験方法を学びましょう。
1. 実験計画法とは?
実験計画法とは、効率のよい実験方法を設計し、結果を適切に解析することを目的とする統計学の応用分野です。鍋料理の味は、煮込み方、味付け、鍋の材質などによって決まります。どのようにしたらおいしい鍋が作れるかを実験してみましょう。条件を選定できる項目を要因(因子)、その内容を水準と呼びます。鍋の材質が2種類、火力が2種類、ふたが2種類あるので、2×2×2=8種類の鍋料理を作り、味を比べれば、一番おいしい作り方が分かります。このように、考えられる要因を全て組み合わせ、実験を計画する方法を多元配置といいます(図1)。
実際には、要因や水準が多数あるので、多元配置は実務的でないことが多いようです。イギリスの統計学者であるロナルド・エイルマー・フィッシャー(R.A. Fisher)は、実験を合理的にやり、実験回数を減らす方法を実験計画法として確立しました。実験計画法は、大きく直交表(直交配列表)と分散分析表の2つの項目で構成されています(図2)。分散分析表については、第7回で解説しているので参照してください。
2. 直交表(直交配列表)の活用
・直交表(直交配列表)とは
直交表(直交配列表)とは、どの2列をとっても、その水準のすべての組み合わせが同数回現れる配列のことです。図3は、直交表の見方と使い方です。左は直交表L4(2 3 )を表し、直交表エルヨンと呼ばれています。LはLine(行)の略で、L4は4行、(23 )は2水準の要因を3つ扱えることを表しています。直交表L4は、4行3列から構成されています。また、各行各列の数字は1と2であり、水準を表しています。3つの列に2水準の要因を対応させると、各行は要因の水準組み合わせを示すことになります。具体的には、1列に鍋の材質(金属:水準1、陶器:水準2)、2列に火力(弱い:水準1、強い:水準2)、3列にふた(無し:水準1、有り:水準3)を割り付けると図3の右の表になります。
この表は実験の指示書でもあり、No.1は、鍋の材質が金属、火力が弱い、ふたが無しの条件で、No.2は、鍋の材質が金属、火力が強い、ふたが有りの条件を示しています。全ての組み合わせが8通りあった鍋の実験が、直交表を使うと4通りの実験で済む魔法の表なのです。
・直交表の種類
直交表はL4以外にも多数あり、要因(因子)の数と水準により最適なものを選択します。2水準の要因を扱う直交表は、2n系と呼び、3水準は3n系と呼びます。図4の左の表は2水準系の要因を7個まで扱える直交表L8(27)、右の表は3水準の要因を4個まで扱える直交表L9(34)です。
・直交表による実験計画の立案の考慮点
図5は、主効果と交互作用効果です。上の表は、鍋の材質(金属、陶器)と火力(弱いと強い)の違いで鍋の好みをアンケート調査した結果です。金属で火力が弱い鍋が好きと答えた人がX11人、金属で火力が強い鍋が好きと答えた人がX12人、陶器で火力が弱い鍋が好きと答えた人がX21人、陶器で火力が強い鍋が好きと答えた人がX22人でした。この結果をグラフにすると、下の図の3つのパターンになります。
・パターン1(主効果)
火力が弱くても強くても、金属の鍋よりも陶器の鍋が好きと答えた人数が多くなっています。つまり、火力の状態にかかわらず常に金属の鍋よりも陶器の鍋の人気がある状態です。このような鍋の材質という要因だけの影響のことを主効果といいます。
・パターン2(交互作用)
火力が強ければ陶器の鍋の人気がありますが、火力が弱ければ逆に金属の鍋を好きと答えた人が多くなっています。このパターンのように、ある要因(鍋の材質)の効果が、別の要因(火力)の水準によって変化する要因同士の組み合わせの効果のこと交互作用といいます。
・パターン3(主効果と交互作用の両方)
主効果と交互作用の両方が考えられるものです。金属に比べて陶器の鍋が好まれていますが、その傾向は火力が強い鍋ほど大きくなっています。直交表を用いた実験では、主効果要因の検討が重要になってきます。
・直交表の割り付けに線点図を活用する
直交表を利用する場合、まず検討すべきことは、直交表の各列にどの要因を割り付けるかです。これを直交表の割り付けと呼びます。例えば、直交表L8(27)に4つの因子A、B、C、Dを割り付けると3列余ります。その場合、余った3列には大きい効果を持つと思われる要因の交互作用が求められるように割り付けることができます。このとき利用するのが線点図です。
図6は、直交表L8の線点図と割り付けを示します。左の図は、直交表L8の2つの線点図です。線点図では〇の列に要因を割り付けると、〇を結ぶ線は、要因の交互作用が割り付けられます。線点図aは、1列と2列の交互作用が3列になり、2列と4列との交互作用が6列になり、1列と4列の交互作用が5列になることを示しています。また、7列が三角形から外れていて、独立した点となっています。
右の図は、4つの要因A、B、C、Dの中で最も効果が小さいと考えられる要因Dを除いて、要因A、B、C間の交互作用が求められる割り付けです。Aを1列に、Bを2列に、Cを4列に対応させると、AとBの交互作用(A×B)は3列から、AとC(A×C)は5列から、BとC(B×C)は6列から求められます。このように4つの要因を割り付けた結果、直交表L8は右の図のようになります。
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3. 最適条件の推定
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4. 実験計画法による改善例
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