商業空間について考えよう:空間デザインの基礎知識6

空間デザインの基礎知識

更新日:2022年2月1日(初回投稿)
著者:東京都市大学 都市生活学部 教授 高柳 英明

前回は、空間の色彩計画を紹介しました。今回は、最終回です。商業空間デザインについて解説します。住み手が誰なのかが設計時点で分かっている住宅設計と違い、商業空間の場合は、その主役も、業種も、店構えも千差万別であり、標準的な正攻法がありません。しかし、本稿で紹介する要点を押さえておくことで、実ケースに応じた良好なプランを作成できるでしょう。

1. 「業種・店構え」ごとのデザイン要点

基本的な商業空間のデザインは、表1のように、業種・店構えを考慮して進めます。

表1:商業空間「業種・店構え」別のデザイン要点の一覧
種別 要点
業種 飲食業 提供メニューが主役。適切な客単価、回転率、座席数を主として計画を進める。同時にスタッフ動線・厨房配置も含めて検討。また、ジャンルや雰囲気に合わせたインテリアデザインが求められる
物販業 商品が主役。CC(カスタマーコンタクト)、UX(ユーザーエクスペリエンス)を高めるインテリアデザインが重要視される。食品販売では、鮮度・美味しさを引き立させるよう、色彩計画に配慮する
サービス業 サービスが主役。顧客との距離感、顧客相互の距離感、雰囲気づくりを重視。特にレジャー・アミューズメント店舗では、単独/複数客によって照明計画が変わってくる。また、衣料品販売ではストックスペース/ゴールデンスペースの確保が重要
店構え 単独・路面店 徹底した差別化効果を狙う他、地域性・近隣住民とのつながりも重要になる。郊外立地の場合は駐車場確保も必須
ショッピングセンター
・百貨店
複合による相乗効果を図る。季節ごとのテーマディスプレイやイベントなどの集客要素を受容できる空間にしておく
GMS量販店 広く簡潔な通路計画とし、豊富な在庫空間の確保の他、顧客のザッピングのしやすさ、会計の手間軽減などにも配慮する
EC併用店舗 ECサイトでは得にくい対面コンサルテーションや、強いイメージ訴求力、ライフスタイルイノベーション要素が求められる

・業種別によるデザイン要点

業種には、いわゆる商業三業と呼ばれる飲食業、物販業、サービス業があり、それぞれ主役が違います。飲食業では提供メニューが主役であり、それを提供する際の客単価や回転率、座席数や雰囲気に合わせたインテリアなどに配慮します。物販業では商品が主役です。商品へのCC(カスタマーコンタクト)や、リピート率を左右する品ぞろえなどへのUX(ユーザーエクスペリエンス:製品やサービスを通してユーザーが感じる使いやすさ、印象といった体験)を重視します。また、サービス業では提供されるサービスが主役です。サービサー(サービスを提供する人)と顧客、あるいは顧客相互の距離感や雰囲気作りに注視します。

・店構え別によるデザイン要点

店構えの一例である、単独・路面店では、徹底した差別化効果を狙います。フレンドリーな店構えにするなど、単独店舗ならではの独自性を出し、また、近隣との有効な関係構築にも寄与しなければなりません。

ショッピングセンターや百貨店では、さまざまな店舗が並ぶので、複合効果が期待できます。しかし店舗規模が大きくなればなるほど、定常的な来客数を見込む必要があり、季節のイベントやバーゲンセールといった集客要素を受容できるホールやスペースを確保しなければなりません。また、ディスプレイコーナーを設ける必要もあります。

GMS(General Merchandise Store)などの大規模店舗ならば、来客の賑(にぎ)わいが建物全体に波及するよう、アトリウム空間を設けることも有意義です。また、来るべきアフターコロナ時代においては、EC(Electronic Commerce:電子商取引)と実店舗併用の店構えが増えると予想されます。その場合、実店舗スタッフによる対面コンサルテーションや、実物を用いた実演など、ECサイトでは得られない付加価値提供ができる空間作りが求められるでしょう。

テレワークなどによる働き方改革も進んでいます。今後は、単に物やサービスを売るだけでなく、生き方・楽しみ方の多様化を受け止めるべく、ライフスタイルイノベーション要素が加わることが期待されています。

2. 次の世代に必要な商業空間デザイン

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