前回は、人間工学的な見地から、住居・空間の「ひろさ」について、レイアウト例を示しながら解説しました。今回は、環境心理的な「ひろさ感」を取り上げます。
1. 窓の開け方と「ひろさ感」
窓を開けることにより、光や換気、外観を取り入れることができる他、ひろさ感を得るという効果があります。部屋は、必要となる広ささえあれば十分だとする場合はさておき、多くの人は、限りある敷地や住戸面積に対し、より広く感じたいと思うものです。ここでは、物理的な空間寸法以上の「ひろさ感」を得るにはどうしたらよいかを考えてみましょう。
図1は、スモールオフィス付き賃貸型集合住宅の西側に開けられた窓の写真です。住宅密集地に建てられているため、眺望も景観も期待できず、すぐ手前には隣地建物の壁が見えてしまいます。
こういった壁面に窓を開けるとき、通常は、換気窓として必要最小限にするものです。しかし、この事例では、隣地建物の外壁までの間(ま)を、視覚的なひろさ感として利用しています。しかも西日の直射を避け、照壁(しょうへき:日光を反射し、部屋の採光に作用する壁)効果によって柔らかな採光を得ている上、隣地建物の窓からの視線も気になりません。そのため、日中ならカーテンを開け放して、あたかも自分の部屋が延長したようなひろさ感を楽しむことができます。窓台に観葉植物などを置くことで、さらに素敵な部屋になるのではないでしょうか。
図2も、窓によるひろさ感の確保に気を使って計画した賃貸集合住宅の事例です。専有面積が61m2しか取れず、2LDKの間取りクラスとしては少々狭めです。そこで、思い切って水回りエリアと居室エリアを一直線に並べ、東西両端を全面掃き出し・ハイサッシ窓を備えたバルコニーとしました。
バルコニーの手すりには、鉄でできた格子状のスノコであるグレーチング素材を用い、外部視線に配慮しています。こうすることで、東西に視線の抜けが確保でき、自由に使える全長14.5mの空間が広がっているように感じることができます。
図3は、東側バルコニーのすぐ手前にキッチンを配置した事例です。窓を開けてウッドテーブルなどを外に置き、食事をするといった楽しみ方も考えられます。
一般的なバルコニーは、部屋との境界がはっきりしています。しかし、この事例のように、視線の抜けや床レベルの統一などに配慮することで、ひろさ感が増し、多様な住みこなしが期待できます。
2. 天井高の高低と「心地よさ」
続きは、保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。