構造物を建設する際の地盤工学の社会的役割:地盤工学の基礎知識4

地盤工学の基礎知識

更新日:2021年8月19日(初回投稿)
著者:東京電機大学 名誉教授 安田 進

前回は、地盤沈下や液状化現象、さらに土壌汚染問題を取り上げ、防災や環境問題における地盤工学の大切さについて紹介しました。今回は、地上のみならず地中や海洋での構造物建設に対する、地盤工学の社会的な役割を解説します。

1. 構造物の建設に当たって行う地盤調査の方法

地盤上や地盤内に構造物を造るには、地盤の強度や変形特性といった力学特性を知る必要があります。地盤の種類や締まり具合は多種多様なので、建設予定地では、まず深さ方向に地層構成を調べます。そのために地盤に孔をあけ(ボーリング)、そこから土の試料を採取して試験を行います。その過程で、崩れやすい土の扱いには細心の注意が必要であり、昔からさまざまな採取技術が開発されてきました。地盤を凍結させておいて採取する方法もその1つです。

これに対し、現場で直接、力学特性を測定する方法も多く開発されてきました。その代表的なものが、標準貫入試験です(図1)。まず、所定の深度までボーリングし、そこに標準貫入試験用サンプラーをロッドの先端に付けて孔底に降ろします。次に、ロッドの上部に付けたノッキングヘッドに、63.5kgのハンマーを76cmの高さから落下させます。サンプラーが地盤内に30cmほど貫入するまでの回数をN値とし、その数値で地盤の硬さを判定します。試験方法が簡単なので、世界中で広く用いられています。ただし、力学特性として必要なせん断強度定数などが直接求められるわけではないので、あくまで簡易的な方法といえます。

図1:地盤調査で広く用いられている標準貫入試験

図1:地盤調査で広く用いられている標準貫入試験

その他、地盤に孔をあけずに地表から調査する探査と呼ばれる方法など、多くの試験、調査、探査方法が開発されています。ただ、いずれの方法も、地盤内を直接見ることができないため、地盤内の地層構成を正確に把握するのは宇宙空間を調べるよりも難しいといわれています。

2. 地上の構造物を建設する場合

さて、地上や地中に造られる構造物は多種多様です。これらを地上構造物、地中構造物、岸壁や擁壁の3種類に大別し、その建設に地盤工学がどのように用いられているか説明します。まず、ビルや橋など地上に造る構造物では、構造物の重さと、それを支え得る支持層の深度に応じて基礎の形式を選定します。構造物が軽い場合や、浅い所に締まった砂層がある場合には浅い基礎を用い、そうでない場合には深い基礎を用います。

・浅い基礎

浅い基礎の代表例には、べた基礎、フーチング基礎、地盤改良した上に設置するものがあります(図2)。ビルのように底面積が広い場合には、平らな基礎であるべた基礎を用います。橋脚や塔のように底面積が狭い場合には、基礎の接地面積をなるべく広くするためにフーチング基礎を設けます。タンクでは地盤の支持力を大きくするために、地盤を改良した上への設置がよく行われます。

図2:浅い基礎の種類

図2:浅い基礎の種類

浅い基礎の設計に当たって検討する主な項目は、構造物を載せた時の即時沈下量・圧密沈下量・支持力と、地震時の液状化の発生の有無です。

・深い基礎

深い基礎の代表例には、杭基礎とケーソン基礎があります(図3)。深い基礎で最も多く用いているのは杭基礎です。杭基礎とは、杭を支持層に到達させることで、構造物を支える基礎のことです。さらに、長大橋などの重い構造物を支える場合には、ケーソン基礎を用います。ケーソン基礎とは、ケーソンと呼ばれる鉄筋コンクリート製の大きな箱を支持層まで構築することにより構造物を支える基礎のことです。深い基礎に対しては、鉛直支持力に加えて、水平方向の支持力や地震時変位量も検討します。杭基礎では、杭の材質・長さ・直径・本数を検討し、ケーソン基礎では断面の大きさを検討します。

図3:杭基礎とケーソン基礎

図3:杭基礎とケーソン基礎

なお、再生可能エネルギーとして最近建設が進められている洋上風力発電設備の基礎としては、建設地点の水深・海底地盤・海底地形の3つの要素から、モノパイル(図4)、重力、ジャケット、トリポッド、トリパイルなどが選定されるようになっています。

図4:洋上風力発電で用いられているモノパイル基礎

図4:洋上風力発電で用いられているモノパイル基礎

丘陵や山地で道路や宅地を造る場合、地盤をなるべく平らにするために、尾根部を切って谷部に盛ります。高速道路では、平地でも立体交差を設けるために土を盛って建設します。このような盛土では、円弧すべり面法(第2回・図7)などで、建設時のすべり破壊に対する安全性を検討します。また、盛土後の圧密沈下量の検討を行います。フィルダム(コンクリートを主体とするコンクリートダムとは異なり、天然の土砂や岩石を盛り立てて築いたダム)やため池、河川堤防も盛土であり、水を溜(た)める構造物(河川堤防では人家側に水を漏らさない)のために、法面(のりめん:盛土で作る斜面)の安定性に加えて、止水性が大切な検討項目となります。

大規模なフィルダムを建設するに当たっては、図5に示すように、貯水池側の法面をアスファルトや人工材料で覆って遮水したり(表面遮水型)、中心部に透水性の低い粘土でコア(遮水壁)を設けて遮水したりします(ゾーン型)。

図5:フィルダムにおける代表的な遮水方法

図5:フィルダムにおける代表的な遮水方法

3. 地中構造物を建設する場合

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4. 岸壁や擁壁を建設する場合

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