前回は、焼結方法の分類を説明しました。最終回の今回は、焼結体の評価を解説します。密度や気孔率についてはアルキメデス法を、粒径測定については顕微鏡観察を、気孔径測定については水銀圧入法などを紹介していきます。組織観察では、各種顕微鏡で撮影した試料の組織写真を比較しました。試料作りや測定のコツなどに役立てましょう。
1. 密度と気孔率
焼結体の密度と気孔率は、強度や熱伝導性、仕上がりの品質に大きく作用します。気孔には、外気と接続している開気孔と、物体内部に孤立している閉気孔があります。焼結体の密度を測ることは、焼結体の品質管理やプロセス管理にとって非常に重要です。焼結体が単純な形状であれば、寸法と重量から密度を求めることができます。しかし、焼結体の形状が複雑になると、その方法では評価が難しくなります。そのため、液体置換法やアルキメデス法と呼ばれる方法がよく利用されます。アルキメデス法とは、流体の中で静止している物体は、その物体が押しのけた流体の重さだけ軽くなる、つまり、浮力を受けるという原理を利用して、液体の中での質量を計測して求める方法です。物質による密度の違いを説明する際によく用いられます。図1は、アルキメデス法の模式図です。
一般的に、この方法で純水やエチルアルコール、トルエンなどを利用して焼結体の密度を測定します。重量は、乾燥重量W1、液体を含んだ重量である湿潤重量W2、液中重量W3で表します。かさ密度ρは、ρ=W1ρ1/W2-W3となり、開気孔率Poは、Po=W2-W1/ W2-W3と測定できます。焼結の進行を検討するには、相対密度dが利用されます。相対密度dは、d=ρ/ρwです。材料の理論密度が分かれば、相対密度dが分かるわけです。そして、相対密度と開気孔率から、閉気孔率が求められます。つまり、PcをPc=1-d-Poとなります。
この方法は、気孔内に液体を浸入させるため、やや時間を要します。水を使う場合は、煮沸したり、真空引きしたりして気孔内の空気を取り除く必要があります。この方法は試料の乾燥にも時間がかかるため、ヘリウムなどを使って乾式でアルキメデス法を適用する測定装置が用いられます。
2. 気孔や粒径の大きさ
焼結における気孔や粒径の大きさはさまざまです。気孔の量をアルキメデス法で測定することができます。しかし、その大きさは分かりません。焼結体の開気孔の大きさは、水銀圧入法と呼ばれる方法で測定できます(図2)。気孔径Dは、水銀のぬれやすさを表す接触角θ、圧力p、水銀の表面張力γでD=-2γcosθ/pが求められます。水銀は、物質をぬらさず、接触角が大きい液体です。そのため、開気孔であっても水銀をしみ込ませるためには高い圧力が必要です。水銀に加える圧力と気孔の大きさは一定の関係があります。水銀に加える圧力を大きくすると、気孔に水銀がくみこむので、気孔の大きさに関する分布を求めることができます。
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3. 組織観察
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