転がり軸受の取り付け方法:転がり軸受の基礎知識5

転がり軸受の基礎知識

更新日:2023年1月13日(初回投稿)
著者:東京理科大学 理工学部 機械工学科 教授 野口 昭治

前回は、転がり軸受の潤滑を紹介しました。今回は、転がり軸受の取り付け方法を解説します。転がり軸受は高精度加工されています。その性能を十分に発揮するには、取り付けに関しても配慮が必要です。

1. はめあいについて

はめあいとは、軸と穴がはまるところの組み合わせのことをいいます(図1)。転がり軸受の内輪、および外輪は、荷重を支えながら回転するため、軸とハウジングに取り付けられます。

図1:自動車のトランスミッション構造(転がり軸受とシャフトのはめあい部分が見える)
図1:自動車のトランスミッション構造(転がり軸受とシャフトのはめあい部分が見える)

はめあいでは、内輪と軸、外輪とハウジングは、荷重の性質、軸受の組み立て方法、周りの環境などによって、以下のすきまばめ、しまりばめ、中間ばめの3種類から適切なはめあいを選択します(図2)。

  • すきまばめ:はめあい部分に微小な隙間があり、その部分は固定されない
  • しまりばめ:はめあい部分にしめしろがあり、その部分は固定される
  • 中間ばめ:はめあい部分の寸法公差内で、すきまばめ、しまりばめのどちらにもなり得る

図2:すきまばめ、しまりばめ、中間ばめの構造
図2:すきまばめ、しまりばめ、中間ばめの構造

一般的には、軸受の取り付けにおいて、しめしろを与え、しまりばめにて固定するのが最も有効な方法です。しかし、取り付け、取り外し、および温度変化による軸、またはハウジングの伸縮を吸収するなど、隙間を与える利点もあります。

また、荷重の大きさに応じたしめしろを与えないと、回転によりクリープ現象を起こすことがあります(このクリープは材料のクリープとは異なっています)。軸と内輪におけるクリープの概念を、図3に示します。はめあい部に隙間Δがある場合、内輪内径と軸の円周長さに違いがあるため、軸が1回転しても内輪は1回転せずに、軸とずれた状態になります。輪ゴムを鉛筆に掛けて鉛筆を1回転させても、輪ゴムは少ししか回転しない現象と同じです。この部分に滑りがあると、異常発熱、摩耗、摩耗粉の軸受への侵入などにより、振動上昇などが起こる場合があります。

図3:クリープの概念図(引用:転がり軸受入門ハンドブック、CAT.No.9012-7/J、NTN株式会社、P.39)
図3:クリープの概念図(引用:転がり軸受入門ハンドブック、CAT.No.9012-7/J、NTN株式会社、P.39

はめあいの選択方法は、基本的には、軸受の内輪、外輪のどちらが回転しているか、また、このとき荷重方向が一定方向か、変動するかで、表1のように決まります。

表1:ラジアル荷重の性質とはめあい(引用:転がり軸受入門ハンドブック、CAT.No.9012-7/J、NTN株式会社、P.39
表1:ラジアル荷重の性質とはめあい(引用:転がり軸受入門ハンドブック、CAT.No.9012-7/J、NTN株式会社、P.39)

転がり軸受の使用方法は、軸に1方向のラジアル荷重(軸受の中心線に対し垂直な方向にかかる荷重)が作用した状態で回転するというのが、最も一般的です。そのため、表1の静止荷重の区分となります。この場合、内輪と軸がしまりばめ、外輪とハウジングがすきまばめとなります。また、しまりばめについては、最初にしめしろがあっても、荷重が大きくなると減少したり、回転中の温度上昇によって減少したりすることが起こります。さらに、圧入で挿入される際に、粗さがつぶされるため、設計値より減少することも分かっています。

軸受を軸、ハウジングに取り付ける際には、軸、ハウジングの材質、肉厚形状、剛性、仕上げ面精度、機械の使用条件(荷重の性質、大きさ、回転速度、温度など)を考慮して、取り付け部の基準寸法に対して公差を決定する必要があります。はめあいの一般的な基準に関しては、軸受メーカーの総合カタログに掲載されているので、参考にしてください。

2. 予圧について

転がり軸受の中で、使用量が最も多い深溝玉軸受や、アンギュラ玉軸受は、内部に隙間を持っています。隙間は大きさによって軸受特性が異なり、また隙間がないと大量生産が難しくなります。これらの軸受を実用する際には、軸方向にあらかじめ負荷を加えて、隙間のない状態(内外輪軌道面と転動体が全て接触した状態)で用います。この負荷を予圧(予(あらかじめ与えた圧の意)といい、予圧を与える目的(効果)としては、以下のことが挙げられます。

  • 軸振れを小さくし、回転精度を高める
  • 軸受の剛性を高める
  • 回転中の軸受騒音を減少させる
  • 転動体の滑りを抑制し、高速回転を可能にする

予圧を与える方法には、定位置予圧と定圧予圧の2種類があります(図4)。

図4:転がり軸受の予圧(参考:吉本成香、下田博一、野口昭治、岩附信行、清水茂夫共著、機械設計−機械の要素とシステムの設計(第2版)、オーム社、2017年)
図4:転がり軸受の予圧(参考:吉本成香、下田博一、野口昭治、岩附信行、清水茂夫共著、機械設計−機械の要素とシステムの設計(第2版)、オーム社、2017年)

機械に多く用いられているのは、定位置予圧です。間座やねじを用いて、軸受の位置が決まれば予圧がかかるため、ばねなどが不要で、コンパクトに実現できます。しかし、回転中に温度変化があった場合には、軸、ハウジングの伸縮により予圧量が変化します。さらには、予圧がなくなってしまうこともあります(予圧抜け)。

定圧予圧は、ばねなどを取り付けるための空間が必要になります。予圧量の変化が定位置予圧よりも小さいため、高速回転装置に多く用いられています。しかし、転がり軸受から見れば、予圧はアキシアル荷重(軸受の中心線に対し平行な方向にかかる荷重)のため、大きすぎる予圧は疲労による寿命の低下を招きます。この場合、適切な予圧を負荷することが重要となります。具体的な予圧量の設定については、軸受メーカーの総合カタログを参考にしてください。

3. 軸・ハウジング設計について

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