転がり軸受の寿命:転がり軸受の基礎知識3

転がり軸受の基礎知識

更新日:2022年11月8日(初回投稿)
著者:東京理科大学 理工学部 機械工学科 教授 野口 昭治

前回は、転がり軸受の種類と特徴、軸受の配列、精度を紹介しました。今回は、転がり軸受の寿命について解説します。機械の設計寿命よりも先に、転がり軸受が損傷しないように選定する必要があり、非常に重要な項目です。

1. 転がり軸受の寿命

転がり軸受の寿命としては、疲労寿命がよく知られています。転がり軸受は転動体が公転するため、軌道輪には転動体の通過とともに繰り返し荷重が作用します。また、転動体も接触する表面が逐次変わるため、繰り返し荷重が作用します。

金属に繰り返し荷重が作用すると、疲労して、剥離(フレーキング)が生じてしまいます。また、グリースを潤滑剤としたシールド・シール付き玉軸受においては、密封されているためグリースの交換ができません。そのため、グリースの劣化による潤滑不良が原因で、軸受が焼き付きを起こす懸念もあります。さらに、軸受の回転音が大きくなり、軸受としての機能は果たしているものの、周囲の人が耐えがたくなり、交換を強いられることもあります。

このように、転がり軸受には、疲労・潤滑・音響・摩耗・精度など複数の寿命形態が存在します。その中で、疲労寿命とグリースの潤滑寿命については計算式があり、実用条件における寿命を計算できます。

  • 1:疲労寿命
    材料の繰り返し応力による転がり疲れ→剥離
  • 2:潤滑寿命
    潤滑剤の劣化による潤滑不良→焼き付き
  • 3:音響寿命
    回転音の増大→音・振動上昇
  • 4:摩耗寿命
    軸受内部、内径、外径摩耗→クリープによる摩耗
  • 5:精度寿命
    回転精度劣化(性能劣化)→加工精度を満たせなくなる、工作機械用軸受では使用できない

2. 疲労寿命

疲労寿命は、転がり軸受の寿命として最も一般的であり、また構造上不可避な寿命です。転動体の公転、自転による繰り返し荷重が原因のため、どのような形式の転がり軸受であっても、疲労限度以上の荷重が加わった場合には、いつか必ず剥離を生じます。

疲労寿命の計算式を式1、2に示します(参考:JIS B 1518 転がり軸受-動定格荷重及び定格寿命、2013)。同じ型番の複数の軸受を、同一運転条件で回転させたとき、その90%の軸受がフレーキングを起こさないで回転できる総回転数(累積回転数)を、基本定格寿命といいます。一定の回転速度n(min-1)で運転させている場合には、106/60nを乗じて総回転時間で表すこともできます。寿命なので、総回転数よりも時間で表した方が感覚的に分かりやすいかもしれません。

式中で使われているCを、基本動定格荷重といいます。これは、基本定格寿命が1,000,000回転となる荷重であり、転がり軸受のカタログには必ず記載されています。Pは、実際に負荷される荷重です。軸受に負荷される荷重がラジアル荷重だけであれば、Pはラジアル荷重となります。ただし、ラジアル荷重とアキシアル荷重が同時に加わる場合には、等価なラジアル荷重となるように計算して求める必要があります。

玉軸受 L=(C/P)3・・・式1

ころ軸受 L=(C/P)10/3・・・式2

ここで、

L:基本定格寿命 106回転単位

P:軸受荷重(動等価荷重) N

C:基本動定格荷重 N

ラジアル軸受ではCr、スラスト軸受ではCaで表す

しかし、式1、2は、軸受に加わる荷重しか考慮していないため、実際に機械システムに組み込まれた際の寿命と隔たりが大きくなる場合も出てきます。そこで、さまざまな条件を疲労寿命に反映させるために、式1、2を基本式として係数を掛けて補正することで、以下のような補正式が示されます(参考:JIS B 1518 転がり軸受-動定格荷重及び定格寿命、2013)。

Lnm=a1・aISO・L

ここで、Lnmは修正定格寿命、Lは信頼度90%の基本定格寿命、a1は信頼度係数、aISOは寿命修正係数。

信頼度係数a1については、表1に示すように統計学的な値が決まっており、信頼度が高くなるほど小さな値となります。例えば、信頼度を99%まで高めると、信頼度90%の寿命の約1/5となってしまいます。

表1:信頼度係数の値
表1:信頼度係数の値

寿命修正係数aISOは、回転速度、荷重、使用温度、潤滑油動粘度、汚染粒子など、軸受使用条件の過酷さを考慮して決められる係数で、次式で表されます。2013年に改正されたJIS B 1518から採用されました。

aISO=f(ecCu/P,κ)

ここで、ecは汚染係数、Cuは疲労限荷重、κは粘度比、Pは軸受荷重(動等価荷重)

汚染係数は、潤滑油の汚染度合いを示す係数です。潤滑油の汚染レベルが高くなると、疲労寿命も短くなります。具体的な汚染レベルと汚染係数の値については、JISに規定されています。疲労限荷重は、軸受材料によって異なります。ただし、軌道の最大荷重接触部で疲労限応力となる軸受荷重であり、軸受形式、大きさ、材料によって決まってきます。

粘度比は、転動体と軌道面に形成される油膜状態であり、基準動粘度に対する軸受運転時の動粘度の比で表されます。これらが関与した関数となり、JISに示されている寿命修正係数は、図1のようになります。しかし、寿命補正係数を正確に求めるためには、軸受内部の設計値が必要です。正確な寿命補正係数を知りたい場合には、軸受メーカーに問い合わせることになります。

図1:寿命補正係数a<sub>ISO</sub>(引用:JIS B 1518 転がり軸受-動定格荷重及び定格寿命、2013、P.25)
図1:寿命補正係数aISO(引用:JIS B 1518 転がり軸受-動定格荷重及び定格寿命、2013、P.25)

3. グリース寿命(潤滑寿命)

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