転がり軸受とは:転がり軸受の基礎知識1

転がり軸受の基礎知識

更新日:2022年9月20日(初回投稿)
著者:東京理科大学 理工学部 機械工学科 教授 野口 昭治

転がり軸受は、機械の回転する軸や部品を支えて案内する機械要素です。自動車には、さまざまな部位に100~150個もの転がり軸受が使われています。日本人の食生活に欠かせない米と同じように、転がり軸受なくしては機械を構成できないという意味で、機械産業の米と呼ばれることもあります。本連載では、転がり軸受の基礎として理解しておくべき内容を6回にわたり解説します。

1. 滑り摩擦と転がり摩擦

転がり軸受の内容に入る前に、摩擦の話をしておきましょう。中学校の理科の授業で出てくる摩擦は、「摩擦力=摩擦係数×垂直抗力」という基本式を理解する程度の内容でした。それは高校でも同じで、摩擦の形態やその詳細については、大学へ入って、トライボロジーという授業を受けないと分かりません。ここでは、摩擦の詳細を述べるには紙面が不足しているため、軸受に大きく関係してくる摩擦の形態についてのみ紹介します。

摩擦の形態は、滑り摩擦と転がり摩擦の2つに大別されます。そのイメージを図1に示します。

図1:滑り摩擦と転がり摩擦の概念図
図1:滑り摩擦と転がり摩擦の概念図

・滑り摩擦

滑り摩擦は、図1左のように、物体を滑らせて床面上を移動させる際の摩擦です。言い換えると、2物体が接触した状態で滑った際の摩擦です。滑り摩擦は自然界のあらゆる所に存在します。しかし、多くの場合、意識されることはあまりありません。人はなぜ歩いて前へ進めるかを考えながら歩く人はほとんどいないでしょう。靴底と道路に摩擦があるから前へ進めることは、考えてみるとごく自然なことです。

図1左の滑り摩擦では、接触している面(摩擦面)に油やグリースなどの潤滑剤は描かれていません。ただし、摩擦面間に潤滑剤が存在する場合も滑り摩擦となります。摩擦係数は、潤滑剤がない場合には、金属と金属の接触における滑り摩擦で0.3~0.7程度、潤滑剤がある場合は、これよりも低下することが知られています。

・転がり摩擦

転がり摩擦は、図1右のような摩擦形態です。物体が床面上を移動するという現象は同じです。ただし、摩擦面間に転動体と呼ばれる物体が介在し、それらが転がることによって物体が移動します。物体を長い距離移動させるには、転動体をたくさん敷き詰めないといけません。ただし、転動体の形や大きさ(直径)がふぞろいだと、物体は滑らかに移動することができません。物体が滑らかに移動するためには、転動体の断面形状は精度のよい円形、かつ直径が同じである必要があります。そのため、転がり摩擦は自然界には存在せず、人為的に作られた摩擦となります(丸みを帯びた石が転がることはありますが、長期間安定して転がり続けることはありません)。

産業革命以降、部品の工作精度が向上したことによって精度のよい転動体を製作できるようになり、滑らかな移動(運動)が可能になりました。摩擦係数は、硬い金属同士では10-5のオーダーになることが理論的・実験的に検証されています。この場合、質量1tの物体は、約0.1N(10g)の力で動かすことが可能です。

2. 滑り軸受と転がり軸受

最初に述べたように、軸受とは、一般的に軸に加わる荷重を支えながら、回転運動や直線運動を案内する機械要素です。磁気軸受のような特殊な軸受もあるものの、一般的な機械には、滑り軸受と転がり軸受がよく用いられています。

これらの軸受は、原理的(構造的)には、前述の滑り摩擦と転がり摩擦を利用しています。2つの軸受の構造と特徴を表1に示します。特徴は、2つの摩擦形態と同じです。ただし、連続的に軸の回転運動を支えるために適する構造となっています(図1は並進運動の構造)。

表1:転がり軸受と滑り軸受の特性比較(引用:転がり軸受入門ハンドブックCAT.No.9012-7/J、NTN株式会社、P.4)
表1:転がり軸受と滑り軸受の特性比較(引用:転がり軸受入門ハンドブックCAT.No.9012-7/J、NTN株式会社、P.4)

滑り軸受は、単純にいうと「すきまばめ」の穴と軸で、すきまの部分に潤滑剤が入ります。実際のすきまは、軸直径の約1/1,000です(表1の図はすきまを誇張しています)。転がり軸受は軸が入る内輪、ハウジングに固定される外輪(外輪回転型では逆になります)の間に、複数の転動体が配置されています。滑り、転がりを問わず、軸受として必要とされている機能は、以下のようになります。また、機械を構成する要素のため、強度や入手性も必要となります。

  • 1:摩擦抵抗が小さいこと(低トルクであること)
  • 2:摩耗が少ないこと(長寿命、耐久性があること)
  • 3:強度が十分であること(負荷容量、剛性が高いこと)
  • 4:回転振れが小さいこと(精度がよいこと)
  • 5:潤滑油を給油しやすいこと(メンテナンスしやすいこと)
  • 6:摩擦面にちり・ほこりが侵入しにくいこと(シール性がよいこと)
  • 7:使い勝手がよいこと(互換性があること)
  • 8:環境に侵されないこと(腐食しないこと)

滑り軸受と転がり軸受を比較すると、転動体が介在する分、断面形状は大きくなってしまいます。しかし、潤滑剤としてグリースを使用した場合には、シールやシールドを用いればグリースを密封することができるため、潤滑装置が不要となります。また、転がり軸受の外径寸法はISOやJISで規定されており、互換性があります。例えば、機械のメンテナンスにおいて損傷した転がり軸受を交換する場合には、同じ型番であれば世界中どのメーカーの転がり軸受でも補修部品として使うことができます。

滑り軸受と転がり軸受の性能要求と需要の関係を、図2に示します。転がり軸受は、機能的には中程度です。しかし、グリースを密封して使えることや、互換性があることから滑り軸受よりも大量に使われています。

図2:軸受の需要と要求機能
図2:軸受の需要と要求機能

いかがでしたか? 今回は、滑り摩擦、転がり摩擦と、軸受として必要とされている機能を紹介しました。次回は、転がり軸受の種類と特徴を取り上げます。お楽しみに!

参考文献
曾田範宗、薬師寺薫、東京大学理工學研究所報告、3、2、1949年