堤防の種類:河川堤防の基礎知識2

河川堤防の基礎知識

更新日:2022年10月28日(初回投稿)
著者:芝浦工業大学 名誉教授 守田 優

前回は、堤防の目的と構造について説明しました。今回は、堤防の種類を解説します。堤防と聞いて、身近な存在ですぐイメージできるのは、洪水の氾濫を防ぐために連続的に築造された堤防です。こういった役割を果たす堤防は、本堤と呼ばれています。しかし、堤防の目的は、河川水が宅地や農地などに流れ込んで人々の生命や財産を奪うことのないよう、洪水の流れを制御することです。洪水の流れを制御するために、連続的な本堤だけではなく、さまざまな種類の堤防が働いています。

1. 河川堤防の種類

堤防には、さまざまな種類があります。宅地や耕地などへの洪水の侵入を防ぐ本堤以外に副堤、霞(かすみ)堤、背割(せわり)堤、導流(どうりゅう)堤、越流(えつりゅう)堤、横堤、輪中(わじゅう)堤、などがあります(図1)。こうした多様な堤防によって、洪水の流れが制御されています。まずは、本堤、副堤から説明します。

図1:河川堤防の種類
図1:河川堤防の種類

・本堤

本堤は、前述したように、洪水の氾濫を防止する連続堤です。河川堤防の中で最も重要なものであり、河川の骨格を決めます。本堤は、河川の水位が上昇しても河川水が堤内地に侵入しないように、高さが決められています。水位が上がると、河川水の本堤への浸透が始まります。本堤は土構造物でありながら、河川水が浸透しても壊れないように設計・施工されています。もし、洪水の規模が想定を超えるようなレベルになると、河川水は本堤を越流し、堤防が壊れる破堤の危険性が極めて高くなります。本堤においては、特に、高さと構造(土構造物として水の浸透に耐える構造)が安全性のポイントとなります。

・副堤

副堤は、洪水の氾濫防止の主役である本堤を、バックアップする目的でつくられています。本堤が万が一決壊した場合、洪水氾濫の拡大をできるだけ防止すること、さらに上流からの氾濫流に対して、下流側の氾濫を抑えるのが副堤の役割です。副堤は、控え堤、二線堤とも呼ばれます。本堤と副堤の二段構えで、洪水の氾濫流の拡大を抑えています。このことから、本堤を一番堤、副堤を二番堤、さらに次の副堤を三番堤ということもあります。

河道に沿って連続堤を築造していくという治水事業は、明治時代以降に一般化しています。明治以前は、一番堤である本堤が現在ほど高くなかったため、本堤で洪水氾濫を防ぎきれなかった場合、副堤の二番堤、さらに三番堤によって防ぐというケースが普通でした。

ところで、図1に霞(かすみ)堤という不連続の堤防があります。堤防は、洪水が宅地・耕地に侵入しないよう連続的に築造するものであるにもかかわらず、霞堤では堤防が切れています。次は、この霞堤について詳しく説明します。

2. 霞堤という不連続堤について

霞堤は、堤内地に流路が開いた不連続な堤防です。ここでは、霞堤の機能を説明します。図2に霞堤の配置を示します。

図2:霞堤の配置
図2:霞堤の配置

霞堤は、堤防を上下流方向にずらして配置することで開口部をつくり、全体として洪水が堤内地(堤防によって洪水氾濫から守られている住居や農地のある側)に溢(あふ)れないように築造されます。ずらした堤防のうち、下流側の堤防を堤内地側に延長し、上流側の堤防との二重構造にします。連続堤を見慣れている私たちには、不思議に見えるつくりかもしれません。

洪水時、水がどのように霞堤を流れるかを見てみましょう。まず、平常時、洪水時、洪水後における洪水制御について説明します(図3)。

図3:霞堤による洪水制御
図3:霞堤による洪水制御

・平常時

平常時には、河川水は河道を上流から下流へ流れます。

・洪水時

洪水時には河川の水位が上昇し、開口部から上流へ洪水が逆流して、徐々に氾濫していきます。この氾濫によって本流の水位上昇を抑えることができます。ただし、流速の大きな主流に比べて氾濫流は流速を失っているので、堤内地に浸入しても被害は小さくて済みます。また、洪水で霞堤が決壊しても、その直下流にある、上流に伸びた霞堤の部分が副堤(二線堤)として機能することで、流速の大きい氾濫流が宅地や耕地を直撃して被害が拡大することを防ぎます。

・洪水後

洪水のピークが過ぎると、霞堤から堤内地に侵入した氾濫水が河道へ戻ります。

霞堤による氾濫水の逆流・順流の流れは、特に急流河川において効果的とされ、古くから急流河川の治水方法として採用されてきました。霞堤は、図2のように、何本かの霞堤が河道に沿って並んで配置されているのが一般的です。そのように配置された堤防が、霞がたなびくように見えることから霞堤と呼ばれるようになったと考えられます。氾濫による被害を防ぐために洪水を制御する、という堤防の目的からすると、霞堤は日本古来の治水の考え方が生かされた、巧妙な方法であるといえます。

霞堤の開口部は、古くは耕地として利用されることが多かったため、宅地などに比べ、浸水しても被害がそれほど大きくはなりませんでした。逆に、栄養に富んだ土砂が上流から運ばれることで、土地の肥沃化に貢献するという見方もありました。しかし、近年では土地利用の高度化や宅地開発によって、霞堤を閉じて連続堤にすべきという地元からの要求も高まり、連続堤に改める工事も行われています。

3. 河川の合流に関わる堤防の種類

続きは、保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。