リテールデータとは:リテールデータの基礎知識1

リテールデータの基礎知識

更新日:2022年2月25日(初回投稿)
著者:東京経済大学 経営学部 マーケティング学科 教授 田島 博和

リテールデータとは主に、消費者への販売(リテール、または小売)を記録したデータです。小売のDX(デジタル化、IT化)が進んだことで、より多くのリテールデータが収集・蓄積され、活用される範囲が広がってきました。本連載では6回にわたり、リテールデータの概要をできるだけ分かりやすく、その活用方法も含めて説明します。第1回は、リテールデータの歴史、そしてDXへの一大転換点となったPOSシステムの登場など通して、リテールデータとは何かを解説します。

1. リテールデータの歴史

リテールデータという言葉自体は、比較的新しいものです。それでも、「いつ・何が・いくつ売れたか」という販売情報の重要性は古くから認識されており、それを把握するためにさまざまな方法が採られてきました。一つは、在庫監査または棚卸監査と呼ばれる方法です。これは、倉庫で定期的に在庫量を調べ、前回監査からの在庫量の増減とその間の入荷量から、販売量が間接的に求められます。棚卸の際、不良在庫には赤い札を貼って区別したそうです。現在でも棚卸や赤札は、在庫一掃の値引き販売を意味する言葉として使われています。

ところで、江戸時代の商売の仕方は、現金取引ではなく掛け売り、すなわちクレジット払いでした。このため、商家では売掛金を正確に把握するため「大福帳」と呼ばれる帳簿に客の口座を作り、売った品物、数、価格、受け取った代金などを記録していました。在庫監査や大福帳は、リテールデータを収集する古典的かつ代表的な方法です。

17世紀初頭に出版された、現存する日本最古の数学書といわれる「算用記」には、大福帳の書き方に始まり、利息や割り算の計算方法などが紹介されています。また、19世紀に入って出された多くの数学書は、ビジネスに必須の書物と考えられていたそうです。図1は、その1つである「塵劫記(じんこうき)」です。そろばん使用法を解説したページや、繁栄の象徴である子(ネズミ)が描かれた挿絵などがあり、この書物によって数学に熟達すれば「商売繁盛まちがいなし」を予感させます。このように、ビジネスに数学スキルが不可欠であることは、江戸時代から認識されていたようです。

図1:江戸時代の数学書である「塵劫記」

図1:江戸時代の数学書である「塵劫記」(引用:ウィキペディア、改算塵劫記、国立科学博物館の展示

2. POSシステムの登場

POSシステム(Point of sale:販売時点情報管理)とは、商品に付けられたバーコードを光学式のスキャナで読み取り、商品名や売価のデータベースとマッチングさせて精算を行うシステムです(図2)。1960年代に入り、社会調査研究所(後のインテージ)が、消費者パネル調査によるデータ収集およびメインフレームコンピュータを使ったデータ分析に着手し、リテールデータのDXが始まりました。

図2:バーコードスキャナー

図2:バーコードスキャナー

一大転換点となったのが1982年の、セブン-イレブン・ジャパンによるPOSシステムの導入です。POSシステムは当初、アメリカでレジの打ち間違いや不正を防止する目的で使われていました。しかし、精算記録は「いつ、どの商品が販売されたか」というリテールデータそのものであり、それをマーケティングや仕入れに活用したのはセブン-イレブン・ジャパンが世界で初めてだといわれています。

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