前回は、ポンプとは何かについて、容積形ポンプとターボポンプの仕組みと特徴を取り上げて解説しました。実際にどのようなポンプを利用するかは、使用者がどの程度の吐出し量(流量)と圧力(揚程:ポンプが汲み上げられる液体の高さ)を必要とするか、後述するキャビテーションが生じやすいか、管路やバルブなどの圧力損失の影響を受けないか、また扱う液体の種類や設置場所などで決まります。これらの仕様にもとづいて、原動機の動力やポンプの回転速度が選定されます。今回は、ポンプを知る上で必要とされる、流体力学の基礎知識について解説します。
1. 吐出し量と流量
吐出し量Qは、ポンプが単位時間Δt当たりに吐き出す体積Vで、流量ともいいます。
国際単位系(SI)での単位は、1秒当たりの立方メートル(m3/s)が用いられます。ただし、ポンプの大きさにより異なりますが、一般的には(m3/min)、(L/min)、(mL/min)などで表示します。
容積形ピストンポンプでは、図1に示すように、断面積AのピストンがΔxだけシリンダの中で移動するとき、体積V=AΔxだけ押しのけられます。

この押しのけた分の体積を、押しのけ容積と呼びます。吐出し量Qは、この押しのけ容積Vの単位時間Δt当たりの量であり、ピストンの平均速度をUとするとき、次式で表されます。
また流量Qは、吸込管路や吐出し管路など、流路の断面Aを単位時間内に通過する液体の体積です。管内の断面平均流速をvとするとき、次の連続の式で表されます。
2. 圧力と揚程
圧力は、図2に示すようにx、y、z軸内で等方性を持ち、液体内のある点における、単位面積に垂直に働く力です。面積をA、力をFとすれば、圧力pは次式で表されます。
上式でのSI単位は、圧力pが(Pa)、力Fが(N)、面積Aが(m2)です。

揚程Hとは、ポンプがどの程度の高さまで液体を押し上げられるかを表し、ターボポンプの運転において生じるヘッドの総称です。ヘッドについての詳細は、後述します。
図3に示すように、圧力は標準大気圧を基準にしたゲージ圧力と、完全真空を基準とした絶対圧力とで表されます。

それぞれの圧力の表示を小文字pと大文字Pで区別し、標準大気圧をPo=1013hPa=0.1013×106Pa≒0.1MPaとすれば、両者の関係は次式で表されます。
例として、液中の圧力を、ゲージ圧力pと絶対圧力Pで考えてみましょう(図4)。

標準大気圧が作用する液面からhだけ下がった点の圧力は、図のように液柱をとると液体の密度ρと重力加速度g=9.8m/s2より、それぞれ次式で表されます。
上式で密度ρとは、物体の単位体積当たりの質量で、SI単位は(kg/m3)です。例えば、4℃の標準大気圧下では、水の密度はρ=1000kg/m3です。なお、比重とは、対象の液体の密度を水の密度で除した値です(参照: 流体力学の基礎知識1)。
図5に示すように、液中に長い試験管(片側が閉じた管)を横にして置き液体を十分に入れ、ゆっくりと鉛直方向に動かしてから静止させると、閉じた側では完全真空の状態で圧力はPv=0となります。

したがって、
となり、試験管内の液柱の高さhは次式で表されます。このhは圧力ヘッドと呼ばれ、ポンプでは揚程Hに相当します。
上式を用いると、例えば、液体が標準大気圧下での4℃の水であれば、h=10.3mです。また、最も重たい液体の水銀であれば、密度はρ=13.6×103kg/m3なので、h=0.760m=760mmHgとなります。このような現象をトリチェリの真空と呼びます。
大気圧Pは高さによって変化するため、その水柱hの高さは変わってきます。大気圧下の水柱h(mH2O)は、高度yの変化によって、次式で与えられています(参考文献:西海孝夫、演習で学ぶ「流体の力学」、秀和システム、2022年)。
ここにρは水の密度、Poは海面上での標準大気圧、gは重力加速度、Rはガス定数、Toは海面での絶対温度、nはポリトロープ指数です。上式にて、ρ=1000kg/m3(水の密度は温度や高度によって変化するものの4℃で一定と近似)、Po=1013hPa、g=9.8m/s2、R=287J/(kg・K)、To=288K=15℃、n=1.225と置けば、大気圧h(mH2O)は高度yの関数となり、図6のグラフが得られます。

3. ベルヌーイの定理
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4. キャビテーション
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5. 圧力損失
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