ポンプとは:ポンプの基礎知識1

ポンプの基礎知識

更新日:2023年1月24日(初回投稿)
著者:防衛大学校 機械システム工学科 元教授(芝浦工業大学 UniKL-JUPプログラム 非常勤講師) 西海 孝夫

ポンプとは、機械的エネルギーを流体エネルギーに変換する流体機械の一種です。ポンプは、もともと紀元前の頃から、低い場所の水を高い場所に移す道具として使用されてきました。現在では、上下水道、灌漑(かんがい)、排水、空調などの建設設備用や、石油、化学、食品、薬品、医療、土木、建設、製鉄、電力、工作機械、自動車、船舶、航空などの産業分野で、水や油をはじめさまざまな種類の流体を昇圧し、遠方に移送させるための機械装置として使用されています。さらに、私たちの心臓もポンプの一種で、血液を体内に送る、生命維持には絶対に欠かせない臓器です。本連載では、水や油に代表される液体を流体の対象として、液体を取り扱うポンプについて解説します。

1. ポンプの種類と概念

ポンプは流体機械の一つで、図1に示すように、容積形ポンプ、ターボポンプ、その他の特殊ポンプに分類されます。

図1:ポンプの分類
図1:ポンプの分類

・容積形ポンプ

容積形ポンプは、固定壁面や可動部材などで覆われる密閉空間の移動、または容積変化を利用して、液体を吸込側から吐出し側に押し出すものです。

・ターボポンプ

ターボポンプは、インペラ(羽根車とも呼ぶ)という部品をケーシング内で回転させて、遠心作用や翼作用により液体に流体エネルギーを与えるものです。

・特殊ポンプ

特殊ポンプは、容積形ポンプやターボポンプの原理に該当しないものを指します。その他に、大気圧以下の真空を生成する真空ポンプがあります。

以上の3種のうち、容積形ポンプとターボポンプの概念を、身近な例を用いて図2に示します。

図の左は、容積形ポンプの原理です。例えば、手動の灯油ポンプは、容積室(ポンプ室とも呼ぶ)の体積増加によって吸込口から液体を吸い上げ、減少によって吐出し口に押し出します。容積室と2本のホースとの間は、薄い板状の逆止め弁(チェック弁)により隔離されています。通常は閉じている逆止め弁が、吸込時および吐出し時にそれぞれ瞬時に開き、液体が間欠的に流れます。

図の右は、ターボポンプ(遠心ポンプ)の原理です。容器内に液体を入れ、回転軸に数枚の板(羽根)を付けて回すことで液体は遠心力を受け、液面は中心付近で低く、外周付近では高くなります。容器の下部に吸込口、上部側面に吐出し口を設ければ、昇圧された液体は連続的に流れ、ポンプとして作用します。

図2:ポンプの概念
図2:ポンプの概念

容積形ポンプは、パスカルの原理にもとづいて力やモーメントの平衡条件を考え、原動機の力やトルクに対するポンプの圧力や吐出し量との関係を、静力学的に取り扱います。また、粘度の高い液体でも低圧から超高圧の領域まで昇圧でき、漏れが少なく高効率で機能します。反面、構造の関係で幾何学的な体積変化が起きてしまい、流量脈動にもとづく圧力脈動が発生します。

一方、ターボポンプは、角運動量の時間的な変化がトルクに等しいという角運動量の法則にもとづき動力学的に取り扱われ、低圧から高圧までの用途に適し、小流量から大流量まで幅広い分野で用いられます。容積形ポンプに比べて部品間での摺動抵抗摩擦が小さく、固形物への耐性が高いため、固形物の混入した液体の扱いを前提に特殊な設計も可能です。

そのほか、特殊ポンプとして、渦流ポンプ、噴流ポンプ、粘性ポンプ、水撃ポンプ、気泡ポンプ、電磁ポンプなど、さまざまな作動原理を持つポンプが考案されています。

2. 容積形ポンプの作動原理

容積形ポンプは、図3に示すように、吸込口と吐出し口に設けられた2個のチェック弁(逆止め弁)で、液体を吸込口から容積室に吸入し、吐出し口へ押し出す形式です。チェック弁とは、弁体(鋼球)のポペットを押し開く構造を持ち、液体の流れを一方向のみ許容して、逆方向の流れを阻止するバルブです。

ピストンロッドの移動によって、ピストンはシリンダ内面に沿って動き、容積室の体積が変化します。まず、図の左に示すように、吸込過程ではピストンが右方に動いて容積室の体積が増加すると、容積室の圧力pは大気圧より低下して負圧となります。タンクの圧力は大気圧poなので、その差圧po-pにより、吸込側のチェック弁が開き、液体は容積室に導かれ吸い上げられます。

図3:容積形ポンプの作動原理(参考:西海孝夫、油圧ポンプとアクチュエータのメカニズム、秀和システム、2021年)
図3:容積形ポンプの作動原理(参考:西海孝夫、油圧ポンプとアクチュエータのメカニズム、秀和システム、2021年)

つぎに、図の右に示すように、吐出し過程では断面積Aのピストンが一定速度Uで左方に動き、容積室の体積VがΔVだけ減少すると、ピストンが移動した距離、すなわちストロークをΔxとすれば、ポンプが吐出した体積ΔVは次の式で与えられます。

この体積は押しのけ容積と呼ばれ、ストロークΔxを時間Δtで移動するならば、単位時間当たりの体積、すなわち流量Qは、次式のとおりピストンの断面積Aと速度Uの積で表されます。

この流量Qを、ポンプの吐出し量と呼びます。このとき、容積室の圧力pは下流側の負荷抵抗に応じて上昇します。この圧力を負荷圧力と呼び、もし下流側に液体の流れを妨げる負荷抵抗がないならば、ポンプに圧力は生じません。ピストンの断面積Aには圧力pが作用するため、圧力による力の反作用としてピストンロッドには次式の駆動力Fが与えられます。

ポンプへの機械的な動力Lmは、力Fと速度Uの積で表され、次式のとおりです。

したがって、式1~3より、次式のとおり容積形ポンプは機械的動力Lmから流体動力Lhを生み出します。

3. ターボポンプの作動原理

図4に、ターボポンプの代表例として遠心ポンプの作動原理を示します。角速度ωで回転するインペラの中心軸から、半径rに質量Δmの微小流体要素を考えます。

図4:ターボポンプの作動原理(参考:西海孝夫・一柳隆義著、演習で学ぶ「流体の力学」、秀和システム、2022年)
図4:ターボポンプの作動原理(参考:西海孝夫・一柳隆義著、演習で学ぶ「流体の力学」、秀和システム、2022年)

この扇形の微小流体要素には、半径方向に遠心力Fcと、圧力による力Fpが働き、つり合っています。

上の式において、遠心力Fcは、

です。また、圧力による力は、流体要素の半径方向内側からの圧力をpi、外側からの圧力をpoとすれば、両者の圧力差はΔp=po-piとなり、次式で表されます。

上式に示すΔAは、流体要素の周方向の面積ですが、微小であるため内側も外側も等しく近似しています。また、流体要素の体積Δmは、液体の密度をρ、半径方向の微小長さをΔrとすれば、近似的に次式で与えられます。

したがって、式4~7を用いて、整理すると、

が得られます。上式にて、有限要素の記号Δを微分記号dに置き換えて積分すると、

となります。Cは積分定数です。後述するように圧力p(Pa)は、ヘッドh(m)でも表されp=ρghとなるため、次式のようになります。

したがって、インペラの周速度uは、u=rωであるため、ヘッドhは次式で表されます。

インペラ中心から半径r1でのヘッドをh1、半径r2でのヘッドをh2とすれば、これらの境界条件より積分定数Cが得られ、インペラの流出口(2)と流入口(1)との遠心作用によるヘッド差Δhは、次式で与えられます。

以上のように、ターボポンプの圧力(ヘッド)は、遠心作用により回転角速度ωとインペラ半径rの2乗に比例して増加します。なお、ターボポンプの理論揚程については、後ほど角運動量理論を用いて詳述します。

今回は、容積形ポンプとターボポンプの作動原理について、流体力学の基礎知識をもとに解説しました。次回は、ポンプを知る上で必要な流体力学の基礎を紹介します。