暑さ対策の基本~水分・塩分の補給、夏バテを起こさない食材~:工場の暑さ対策の基礎知識3

工場の暑さ対策の基礎知識

更新日:2021年6月29日(初回投稿)
著者:横浜国立大学 教育学部 学校教育課程 保健体育 教授 田中 英登

前回は、暑さ対策の一つとして、暑さから身を守る身体機能について解説しました。暑さが身体に及ぼす影響の多くは、体内成分の消耗が大きく関与しているともいわれます。今回は、暑熱環境下での日常生活において必要とされる栄養成分について解説します。栄養補給の大切さについて理解を深めましょう。

1. 水分補給の重要性

体温が上がると、体内の水分が、汗となって排出されます。暑熱環境下における唯一の自律性熱放散手段は、発汗です。汗をかけるようになることで、高体温を予防し、熱中症を起こりにくくします。しかし、発汗するということは、体内の生命維持に最も重要といわれている水が体外に排泄(はいせつ)されることを意味します。そのため、発汗により、体水分の減少が生じます。

成人では、体重の約60%が水分とされ、このうちの2%以上が体から抜けることにより、さまざまな影響が生じます。一方、発汗量は、1時間に最大2Lにも及ぶことが知られており、短時間で2%以上の脱水に陥る恐れもあります。体重の2%以上が脱水すると、脱水1%ごとに心拍数は5~10拍/分、体温は0.3℃上昇するとされています。

表1は、脱水率と体への影響をまとめています。脱水率が上昇するにつれ、さまざまな障害が出ることが分かります。

表1:脱水に伴う生理・心理機能の変化
脱水による体重減少率 身体的・精神的変化
2~5% 血漿(けっしょう)量、唾液分泌量、尿量の低下、血液濃縮、
心拍数・呼吸数増加、体温上昇、枯渇感
5~10% 脱水による疲弊、発汗量減少、酸素摂取量減少、視力・聴力低下、
脱力・倦怠(けんたい)感など
10%~ 深部体温直線的上昇、循環不全、昏睡(こんすい)

また、このような体への影響から、脱水割合に応じて作業能力も低下します(図1)。

図1:脱水による作業能力の低下

図1:脱水による作業能力の低下

以上より、熱中症を予防するために発汗は重要な反応であると同時に、発汗による脱水を放置すると、熱中症はさらに進行することが分かります。これを防ぐには、水分の補給が重要です。水分の補給の基準は、汗をかいた分量を補給することです。ただし、一度に多量の水分を補給しても胃に貯留し、すぐに吸収されません。そのため、発汗が起きている場合には、短時間(15~30分)に少量(100~200mL)をこまめに補給することが推奨されています。

脱水量の目安となる発汗量や体重減少量を、現場で測定することは難しいです。そのため、脱水の目安として尿色も一つの判断方法とされています。尿色と脱水基準については、インターネットなどで確認してみてください。なお、補給する水分の温度は、一般的に、最も暑い環境下で15℃前後が飲みやすいとされています。ただし、個人差もあるため、個々が飲みやすい温度の水分を補給することで問題ありません。

2. 塩分補給の重要性

熱中症予防には、水分補給の他、塩分補給を効果的に行うことも重要です。汗には、水以外にも体にとって大切な成分が含まれ、中でもナトリウムは多くの量が含まれています。ナトリウムは体の神経情報伝達や、筋収縮、pH調節などに関与している、生命維持に重要な成分です。人間の身体には、少量発汗時にはナトリウムの排泄を抑える機能があります(ナトリウム再吸収機構)。このとき、汗中のナトリウム濃度はそれほど高くないため、特にナトリウムを補給する必要はありません。しかし、多量の発汗が長時間続いている場合には、このナトリウム再吸収機構が追い付かず、多量のナトリウムが汗と一緒に体外に排出されます。これにより、体内が塩分不足状態(脱塩状態)となり、塩分補給が必要になります。

脱塩状態を予防するには、まずは、朝食をしっかりと取ることが推奨されます。朝食を欠食することで、一日の活動初期から水分や塩分が不足しがちになり、多量の発汗が起こると早めに脱水・脱塩状態に達する恐れがあります。

作業中にナトリウムを補給する場合は、ナトリウムが含まれたイオン飲料水(スポーツドリンク)や塩あめなどが効果的です。塩だけを摂取するのも有効です。ただし、塩を摂取する場合は水の吸収率が抑えられてしまうため、塩水を飲んで塩分と水分の同時補給ができるとは考えないようにしましょう。同時補給する場合は、塩水に糖分を少量含ませることで水分の吸収率が高まります。

経口補水液には、高濃度のナトリウムが含有され、脱水者(既に脱水となっている疾病者など)には有効な飲料水です。しかし、普段から経口補水液を飲んでいると塩分摂取量が過剰となるため、健康の観点からも勧められず、注意が必要です。

3. 夏バテを予防する栄養摂取

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