ポリシング加工方式の種類と特徴:研磨加工の基礎知識6

研磨加工の基礎知識

更新日:2017年1月27日(初回投稿)
著者:元東海大学 工学部 精密工学科 教授 安永 暢男

前回は、固定砥粒方式の粗研磨法を説明しました。今回は、ポリシング加工方式の種類と概要を解説します。

1. ポリシング加工の種類

ポリシング加工とは、加工物の表面を平たん化・平滑化する仕上げ加工です。微細砥粒スラリーと軟質ポリシャを使って研磨を行います。最近は、高精度化、高能率化、低コスト化が進み、さらには省エネルギー・エコロジー化を志向した新しいポリシング法が次々と開発・実用化されています。全てのポリシング法を明確に分類することは難しいものの、私なりに試みた分類を表1に示します。この分類に沿って、各種ポリシング方式の概要を説明します。

表1:最近のポリシング加工方式の分類
加工形態 加工原理・方式 加工法名称 加工対象 備考
遊離砥粒 機械的研磨 接触式 液中研磨- Bowl-Feed-Polishing 金属、セラミックス、硬質単結晶 硬質微細砥粒
非接触式 EEM Si、単結晶、金属 球状工具高速回転、超微粒子衝突
フロートポリシング サファイア、ガラス、光学結晶 定盤低速回転、動圧浮上
非接触ポリシング Siウエハ 定盤低速回転、動圧浮上
化学援用機械的研磨 ケミカル・メカニカルポリシング Si、化合物半導体、デバイスウエハ 含CMP、複合粒子研磨
ケモメカニカルポリシング Si、ガラス、デバイスウエハ 含CMP
メカノケミカルポリシング Siウエハ、セラミックス、硬質単結晶 軟質砥粒
場援用研磨 磁気援用研磨 金属、セラミックス 磁性砥粒(磁性流体+砥粒)
電場援用研磨 金属、ガラス、フェライト 電気泳動
固定砥粒 微粒砥石研磨 ホーニング・超仕上げ 金属 円筒内外面、平面
超音波振動研削 金属、セラミックス 複合振動
電解・砥粒複合研磨 金属 電解液+砥粒含侵ポリシャ
ELID研削 金属、セラミックス、Si 電解性ボンド
軟質ボンド砥石研磨 MAGIC加工 金属 磁気配向性砥石
EPDペレット研削 金属、Siウエハ、ガラス 含低結合度砥石・粘弾性ボンド
ラッピングフィルム研磨 金属、セラミックス 高分子フィルム
シート研磨 Si、ガラス 布紙バッキング、陽極酸化シート
軟質砥粒砥石研磨 MCP砥石ポリシング Si、セラミックス、硬質単結晶、ガラス 易脱落性ボンド
砥粒レス 化学的(エッチング)研磨 化学研磨・電解研磨 金属 化学液・電解液浸せき
ハイドロプレーンポリシング 金属、化合物半導体 高速走行、非接触化
p-MACポリシング 化合物半導体 接触から非接触移行
摩擦反応研磨 熱化学研磨 ダイヤモンド 炭素拡散可能金属、高温加熱
拘束しゅう動研磨 ダイヤモンド オーステナイト系鋼、高周速-高圧力
ドライポリシング プラズマ PACE Siウエハ プラズマエッチング
ドライ平たん化 Siウエハ 数値制御ドライエッチング
プラズマCVM Siウエハ 高圧プラズマエッチング
イオン イオンビームエッチング Siウエハ、ダイヤモンド 不活性イオンスパッタ
反応性イオンエッチング Siウエハ、ガラス、アルミニウム、化合物半導体 活性イオン+活性ラジカル

2. 遊離砥粒ポリシング方式

遊離砥粒ポリシング方式とは、ポリシャと呼ばれる板状工具上に、バラバラに遊離した状態の砥粒を供給し、ワークを押し付けて相対運動させる、最も一般的なポリシング方式です。単にポリシングといえば、この遊離砥粒方式を指す場合が多いようです。ポリシング対象ごとに、よく利用される砥粒とポリシャの組み合わせを表2に示します。

表2:ポリシングで利用される砥粒およびポリシャの例(引用:安永暢男、初めての研磨加工、東京電気大学出版局、2011年、P.87)
適用材料 砥粒 ポリシャ
金属・一般材料 酸化アルミニウム
三角ロム
ベンガラ
合成樹脂(ポリウレタン、PMMAなど)
繊維(織布:ナイロン・綿、不織布:フェルトなど)
天然皮革(鹿皮)
光学ガラス・光学結晶 酸化セリウム
酸化ケイ素
ベンガラ
天然樹脂(ピッチ、タールなど)
合成樹脂(硬質発砲ポリウレタンなど)
半導体材料 酸化ケイ素
酸化ジルコニウム
合成樹脂(発泡ポリウレタン、テフロンなど)
不織布繊維(ウレタン樹脂含侵ポリエステル繊維など)
ファインセラミックス ダイヤモンド 軟質金属(銅、スズ、鉛など)
ダイヤモンド ダイヤモンド 金属(鋳鉄、炭素鋼など)

機械的研磨法

機械的研磨法とは、遊離砥粒方式の中で最も一般的かつ基本的な研磨法です。微細な硬質砥粒の先端が微小な引っかきや切削作用を及ぼし、鏡面化を進行させます。古くは、勾玉(まがたま)や金属鏡の研磨に用いられました。現在でも、金属やセラミックスなど、精密機構部品の最終研磨法として多用されています。

回転するディスク状のポリシャ上に、サブミクロンサイズの硬質砥粒と加工液とを混合した研磨剤(スラリー)を供給しながら、ワークを一定の圧力で押し付けて研磨する接触式ポリシングが最も一般的です。

超微細砥粒スラリーの中に、ワークを浸して半浮遊状態で研磨する液中ポリシングや、ボウル・フィードポリシングも同じ部類の研磨法です。極限的スケールの加工単位で研磨するため、加工変質層はほとんど残留しない超平滑ポリシングが可能となります。

また、動圧効果により、工具とワーク表面の間に浮上隙間を発生させ、間隙(かんげき)に流入した超微細砥粒を、ワーク表面に接線方向から弾性衝突させる、非接触式ポリシングも開発されています。最初に提案されたのは、球状工具を高速回転させるEEM(弾性放出加工:Elastic Emission Machining)法です。原子配列を崩さずに鏡面研磨をする無じょう乱ポリシング法として実用化されています。このEEM法を通常のディスク研磨方式へ展開したのが、フロートポリシング法と、非接触ポリシング法です。定盤の表面形状を工夫したことで、動圧効果により低速回転でも安定して非接触状態を維持できます。光学素子やシリコンウエハなど、大面積部品に対しても適用可能な無じょう乱ポリシング法です。

化学援用機械的研磨法

化学援用機械的研磨法は、機械的研磨法に何らかの化学的効果を加えた研磨法です。硬質砥粒による微小切削の際に生じる加工ひずみ(加工変質層)を化学的効果で除去するか、あるいは生じさせない超精密研磨法です。特に、半導体ウエハなど高機能素材に不可欠な研磨法と位置付けられています。

ケミカル・メカニカルポリシングは、研磨液の化学的エッチング作用と、砥粒の機械的切削作用とを複合させたプロセスです。シリコンウエハの最終ポリシングに採用されているのは、ほとんどこの研磨法です。最近、デバイスウエハのプラナリゼーション加工(平たん化)に不可欠な技術として普及しているCMP(化学機械平たん化:Chemical and Mechanical Planarization)も、基本的にはシリコンウエハのケミカル・メカニカルポリシング技術から派生した研磨技術です。また、従来の板状ポリシャの代わりに、樹脂粒子を砥粒保持媒体とする複合粒子研磨も、さらなる高精度化を狙ったケミカル・メカニカルポリシングの一手法といえます。

ケモメカニカルポリシングは、研磨液の作用により加工物表面に生成した水和膜や酸化膜などを、砥粒の切削作用で除去するポリシング法です。ガラス研磨における化学作用説の根拠にもなりました(ガラス研磨は、第7回で解説)。砥粒の機械的擦過作用は、生成膜の下層にあるバルク表面までは及ばないため、加工変質層を残留させずに済みます。そのため、最近のデバイスウエハのメタル配線CMPにも、本手法が援用されています。

一方、メカノケミカルポリシング(MCP:Mechanochemical Polishing)は、力学的にはワーク材料よりも柔らかいものの、ワークと直接的な化学反応を起こし得る粉体を砥粒として利用するポリシング法です。最大の特徴は、砥粒の押し込みや切削作用が起こらず、加工ひずみのない超平滑表面が容易に得られることです。これまで、超精密研磨が難しいとされた超硬質材料(サファイヤ、炭化ケイ素、窒化ケイ素など)に対して、特に有効な研磨法です。なお、メカノケミカル効果は、力学的応力の作用下で化学反応や相変化が促進される効果を意味し、粉体工学の分野では古くから用いられてきた用語です。

場援用研磨法

場援用研磨法は、FFF(Field assisted Fine Finishing)とも呼ばれます。磁場や電場などの場(Field)における吸引力や反発力を利用して、直接的あるいは間接的に砥粒を加工物に押し付けたり、砥粒の切削作用と加工液の電解・溶去作用を加えることで、ポリシング効果を上げる方式です。

磁気援用研磨には、磁場を発生させ磁性砥粒を加工物表面に押し付けて研磨する方法と、磁性流体に加圧力を発生させて、非磁性研磨砥粒を加工物に押し付けて研磨する方法があります。特徴は、平面だけでなく、円筒の内外面や異形部品に対しても均一圧力で鏡面化できる点です。

電場援用研磨には、電気泳動現象で帯電砥粒を加工物表面へ引き付ける方式と、逆に砥粒を研磨定盤面に吸引して半固定状態の研磨工具とし、この工具表面にワークを押し付ける方式が考案されています。

3. 固定砥粒ポリシング方式

最近、遊離砥粒に代わり、適当な結合剤(ボンド)で砥粒を固定した砥石を用いる、固定砥粒方式のポリシング手法の実用化が盛り上がりつつあります。ポリシング用砥石の具備すべき条件は、以下の2つです。

1.作用砥粒の切れ刃高さがそろっていること
2.切りくずによる目詰まりを起こさないこと

1を実現するには、微細砥粒の砥石を用いること、粗粒の場合には十分なツルーイング(砥石の形を整える作業)を行って砥粒先端の高さをそろえ、かつ砥粒分布・配列を均一化します。さらに、柔軟性のある結合剤を用いて、個々の砥粒への作用圧力を安定させることが必要です。

続きは、保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

4. 砥粒レスポリシング方式

保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。