ラッピングの原理と基礎特性:研磨加工の基礎知識4

研磨加工の基礎知識

更新日:2016年12月16日(初回投稿)
著者:元東海大学 工学部 精密工学科 教授 安永 暢男

前回は、研磨加工に用いられる砥粒と工具を解説しました。今回から第5回にわたり、ラッピングとポリシングについて詳しく解説します。今回は、ラッピングとポリシングの違いを取り上げた後、ラッピングの加工原理と基礎特性を見ていきます。

1. ラッピングとポリシングの違い

遊離砥粒方式を用いた代表的な研磨法に、ラッピングとポリシングがあります。いずれも、一定の圧力下で砥粒を介して工具とワークを相対運動させて、工具形状をワーク表面に転写する加工法です。ラッピングとポリシングは、どう違うのでしょうか? 表1に、それぞれの加工法の基本的特徴(使用砥石・工具、加工目的)をまとめました。

表1:ラッピングとポリシングの基本的特徴
加工法 使用砥粒 仕様工具 加工目的
ラッピング 粗砥粒
(数μm 以上)
硬質工具
(= ラップ)
高能率加工
寸法精度・形状精度の確保
ポリシング 微細砥粒
(数μm 以下)
軟質工具
(= ポリシャ)
表面粗さ低減・鏡面化
加工変質層僅少化・除去

ラッピングは、数μm以上の粗い砥粒と、金属やセラミックスなどの硬質工具(ラップ)を用いて、できるだけ速く、高能率に所定の形状・寸法に近づける工程です。これに対し、ポリシングは数μm以下の微細砥粒と、合成樹脂などの軟質工具(ポリッシャ)を用いて、前工程のラッピングや研削加工後の表面粗さを低減し、平滑化します。このようにポリシングは、加工変質層の僅少化、さらには完全除去を目的とした仕上げ工程です。

2. ラッピングの加工原理

ラッピングは、ラップに接触するワーク表面全面を微小切削、あるいは微小破壊する機械的加工法です。散布された多数の硬質砥粒の先端が、同時にワーク表面に押し込まれ、個々の砥粒先端は微小工具として働きます。ワークの材質や加工条件により、湿式ラッピングと乾式ラッピングに分類できます(図1)。

図1:ラッピングの基本的加工形態

図1:ラッピングの基本的加工形態(引用:河村末久ほか、加工学基礎2 研削加工と砥粒加工、共立出版、1984年、P.169)

砥粒と加工液との混合スラリー(ラップ剤)を用いる湿式ラッピングでは、砥粒はラップとワークの間を転動しながら作用します。ワークが金属材料の場合、転動砥粒の先端切れ刃がワーク表面を微少量ずつ切削するため、梨地状の粗面になります(図1のa)。これに対し、ワークがぜい性材料の場合 、砥粒先端が押し込まれるとワーク表面がぜい性破壊を起こし、多数のクラックが発生します。クラックの交差により微小破砕が生じ、加工が進行します(図1のb)。

一方、乾式ラッピングは、ラップに埋め込まれ半固定化された砥粒が作用し、長い引っかき痕を有する切削作用が主体の加工形態になります。金属材料の仕上げ工程に多く適用されます。ラッピングにおける最も重要な加工特性は、加工能率と表面粗さです。図2に、金属材料のラッピングにおける切削型加工モデルを示します。

図2:切削型ラッピングにおける除去モデル

図2:切削型ラッピングにおける除去モデル(引用:岡本純三ほか、トライボロジー入門、幸書房、1990年、P.46)

加工能率は、トライボロジーにおける掘り起こし摩耗理論と同じ考え方から導き出されます。先端頂角 2θの砥粒1個が、金属表面に荷重Wiで押し込まれ、表面を引っかきながら距離Lだけ移動した場合の除去体積はVi=2WiLcotθ/πpfで表されます。この場合の加工能率は、除去体積Viの全荷重Wに対する除去体積の総和V=2WLcotθ/πpfとして表すことができます。pfはワークの塑性流動圧力(ビッカース硬さHvに相当)です。すなわち、加工量は荷重および加工距離(加工速度が一定のときは加工時間)に比例し、ワークの硬さに反比例します。

砥粒の形状が同じ(θが一定)であれば、粒径に関係なく加工量も同じになるはずです。しかし、実際の金属材料のラッピングでは、加工量は粒径の増大に応じ、若干増える傾向が認められています(図3)。

図3:金属材料のラッピングにおける砥粒径と加工量の関係

図3:金属材料のラッピングにおける砥粒径と加工量の関係(引用:河西敏雄、機械と工具第36巻8月号、工業調査会、1992年、P.73)

一方、ガラスのようなぜい性材料のラッピングの場合、ワーク表面にどのようなクラックが生じ、微小破砕に至るかを予測することは、かなりの手間を要します。

続きは、保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

3. ラッピングにおける基本的加工特性

保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。