プラスチック製品の材料と成形法の選び方:プラスチックの基礎知識7

プラスチックの基礎知識

更新日:2017年5月25日(初回投稿)
著者:田口技術士事務所 田口 宏之

前回は、プラスチック製品設計手順のうち、1:要求事項の抽出を解説しました。今回は、2:材料・成形法・二次加工・形状の決定と、3:図面・仕様書の作成について解説します。

1. 材料・成形法・二次加工・形状の決定

要求事項を抽出したら、それらを満足させることができる材料、成形法、二次加工、形状の組み合わせを考えます。この4つは相互に関連しているので、同時並行で検討を進める必要があります。図1のようなプラスチック製の定規を例に、それぞれ詳しく見ていきましょう。

図1:プラスチック製の定規

図1:プラスチック製の定規

材料の選定

材料に関する要求事項を分解していくと、特定の材料特性に置き換えることができます。材料特性には、第2回で解説したように表1のようなものがあります。そして、プラスチック製の定規を設計する場合は、表2のように求められる特性を考えます。

表1:プラスチックの特性
  特性
機械特性 強度、剛性、重量(軽量性)、耐クリープ性、耐疲労性、耐衝撃性、耐水性、耐熱水性、耐蒸気性、吸水性、柔軟性、耐摩耗性、しゅう動性、摩擦特性、耐傷性、表面硬度、耐突き刺し性、ヒンジ特性
熱特性 耐熱性、寸法安定性、熱伝導、各物性の温度依存性
電気特性 電気絶縁性、耐トラッキング性、耐アーク性
化学特性 耐薬品性、耐油性、耐候性、難燃性、ガスバリア性、低アウトガス性
光学特性 透明性、屈折率制御性
成形性 各成形法に適した材料特性、賦形性、寸法安定性
二次加工性 溶着、接着、溶接、印刷、塗装、めっき、蒸着、機械加工
その他 環境性、衛生性、意匠性、経済性
表2:プラスチック製定規に求められる特性
特性 内容
機械特性 強度 誤って踏んでも割れにくいこと
剛性 しっかり感があること
耐衝撃性 落としても割れないこと
光学特性 透明性 透明度が高く、定規下がよく見えること
二次加工性 印刷 目盛りやイラストが印刷でき、剥がれにくいこと

材料選定のイメージを理解するために、機械特性の剛性(変形のしにくさ)を考えてみましょう。剛性を図2のように、機能、性能、詳細仕様という順番で分解していきます。

図2:剛性の検討

図2:剛性の検討

分解を進めると、曲げ弾性率2,500MPa以上のように、剛性に関わる仕様の値を決めることができます。ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)を候補材料とするのであれば、ABS樹脂の原料メーカーが公表している物性表や、自社で測定したデータなどを用いて、曲げ弾性率2,500MPa以上の材料を探します(表3)。そして、成形、二次加工、形状との関連性、コストや他の性能などを考えながら、材料の候補を絞り込みます。このような作業を、抽出した要求事項全てで実施します。

表3:曲げ弾性率2,500MPa以上のABS樹脂の選定
ABS樹脂候補材料 曲げ弾性率
(ISO178/JIS K7171)
旭化成:スタイラック121 2,500MPa
デンカ:GR-1000 2,650MPa
UMG ABS:EX120 2,500MPa
テクノポリマー:テクノABS110 2,550MPa

成形法・二次加工の選定

成形法の基本的な考え方は、第3回で解説したとおり、同一断面・長尺の製品は押出成形、中空製品はブロー成形、それ以外の製品は射出成形で作るということです。しかし、ロットや予算、二次加工などの制約条件によっては、この原則とならない場合もあります。表4に定規の成形法と二次加工の組み合わせ例を示します。

表4:定規の成形法と二次加工の選択
成形法 二次加工 製品単価 金型代
射出成形 ゲート処理/目盛り印刷 ×
押出成形 定寸カット/穴あけ/端部加工/目盛り印刷
大判シートを加工 切り抜き加工/穴あけ/端部加工/傾斜面加工/目盛り印刷 ×

定規は基本的に同一断面なので、最初に押出成形が候補に挙がります。今回の定規の場合は、押出成形後、定寸カット、穴あけ、角やエッジの端部処理など、二次加工の費用が発生します。射出成形を選ぶと、二次加工は必要ありませんが、金型代が比較的高価です。特に30cmを超えるような長い定規の場合、金型代が非常に高価になります。

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2. 図面・仕様書の作成

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