プラスチック製品の設計手順:プラスチックの基礎知識6

プラスチックの基礎知識

更新日:2017年5月11日(初回投稿)
著者:田口技術士事務所 田口 宏之

前回は、プラスチックの二次加工を説明しました。今回から2回にわたり、プラスチック製品設計の進め方を取り上げます。今回は、プラスチック製品の設計手順の概要と、要求事項の抽出および分解を解説します。

1. プラスチック製品の設計手順

プラスチック製品の設計手順は、要求事項の抽出、材料・成形法・二次加工・形状の決定、図面・仕様書の作成の3ステップです(図1)。

図1:プラスチック製品の設計手順

図1:プラスチック製品の設計手順

製品設計というと、3D CADでのモデリングや図面の作成をイメージするかもしれません。しかし、よい製品を設計するためには、モデリングや図面より先に、要求事項の抽出を行うことが大切です。要求事項がしっかり抽出できたら、その情報をベースにして、材料・成形法・二次加工・形状を決定します。そして、決定した製品の詳細な仕様を、図面・仕様書の作成により後工程に伝えます。

今回は、要求事項の抽出を解説します(次回は、材料・成形法・二次加工・形状の決定、図面・仕様書の作成を解説)。

2. 製品の要求事項抽出

製品に対する要求事項には、耐久性やコスト、納期など、さまざまな種類があります。表1にその一例を示します。

表1:要求事項の例
  説明 要求事項の例
Q 品質、機能、性能など ・子供の手でも持ちやすい
・材料の再利用が可能である
・直射日光下でも劣化しにくい
・表面に傷が入りにくい
C 原価、投資、販売価格など ・製品原価:125円以下
・金型投資:200万円以下
・設計試作予算:50万円
・販売予定価格:350円
D 納期、ロット、設計期間など ・発売日:6カ月後
・発注ロット:500個/ロット
・年間発注予定数量:2万個
・設計期間:4カ月以内

要求事項に抜け・漏れがあると、どんなに優秀な設計者でも、満足できる製品に仕上げることはできません。実際、市場で起きる品質トラブルのかなりの割合が、要求事項の抜け・漏れが原因です。要求事項の抽出は製品設計において最も重要なプロセスといっても過言ではありません。

もちろん、これはプラスチック製品に限った話ではありません。しかしプラスチックの場合、材料の性能にあまり余裕がないことや、使用環境によって性能が大きく変化することから、要求事項抽出の重要性はより高いといえます。要求事項を抜け・漏れなく抽出するための考え方を2つ紹介します。

情報源から考える

要求事項は、社内外に点在する情報源から収集する必要があります。その情報源自体を明確にすることによって、要求事項の抜け・漏れを防止できます。表2に代表的な要求事項の情報源を示します。

表2:要求事項の情報源
項目 説明
商品企画書
(購入仕様書)
Q:機能、性能、意匠・外観、品質確保期間など
C:目標原価、投資予算、販売価格など
D:発売日、設計期間、販売予定数など
自社保有情報 過去不具合情報、設計基準、チェックリスト、類似品設計情報、評価試験レポート、お客様の声など
法規制・規格 法規制、知的知財権、業界標準、国際規格、監督官庁通達など
市場情報 競合他社、営業情報、類似品リコール情報など
その他 最新技術動向、自社方針、企業理念など

自社で企画する場合は、商品企画部門などが作成した商品企画書があります。顧客の仕様に基づき設計する場合は、購入仕様書に製品への要求事項が書かれています。これらは設計の方向性を決める最も重要な情報源です。また、これまで類似品を設計したことがあれば、過去の不具合情報や設計基準など、多くの自社保有情報があるはずです。長い歴史のある製品では、自社保有情報だけで高いレベルの設計を行うことができるでしょう。

法規制に関する情報源の確認を忘れた場合、リコールに直結する可能性が高くなります。決して忘れてはならない情報源です。情報源の確認忘れがないように、一覧表やチェックリストを作成するなどの対策をしておくとよいでしょう。

製品のライフサイクルから考える

製品の要求事項を抽出する場合、製品が実際に使用されるシーンばかりを想定しがちです。しかし、調達から使用、廃棄に至るまでのライフサイクル全体にわたり、さまざまな要求事項が存在します。

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3. 要求事項の分解

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