大口決済システム改革3-インテグレイテッド・システムへの進化-:決済システムの基礎知識4

決済システムの基礎知識

更新日:2019年12月18日(初回投稿)
著者:麗澤大学 経済学部 教授 中島 真志

前回は、大口決済システム革命のハイブリッド・システムを紹介しました。今回は、決済システムの第3の進化、インテグレイテッド・システムを取り上げます。

1. 決済システムの第3の進化:インテグレイテッド化

前回までに述べた、決済システムの「RTGS化」と「ハイブリッド化」に続く第3の進化が、「インテグレイテッド化」です。「インテグレイテッド・システム」とは、RTGSモードとハイブリッド・モードという2つの決済機能を有する決済システムをいいます。

従来の決済システムでは、決済処理の方法は、時点ネット決済やRTGSなど、1種類に限られていました。これに対して、インテグレイテッド・システムでは、2つの決済方法が用意されており、参加者(金融機関)は、自らのニーズに応じて、2つのモードを使い分けることができます。すなわち、緊急性の高い支払いについては、リアルタイムで決済を行う「RTGSモード」を使い、特に急を要しない支払いについては、流動性を大幅に節約できる「ハイブリッド・モード」を使います(図1)。

図1:インテグレイテッド・システムの概要

図1:インテグレイテッド・システムの概要

2. 流動性節約モード

インテグレイテッド・システムで使われる2つの決済方法のうち、ハイブリッド・モードは、少ない流動性で決済を進めることができるため、「流動性節約モード」と呼ばれます。また、流動性節約モードで決済処理を進める手法を、「オフセッティング機能」といいます。例えば「A行からB行への40の支払い」と、「B行からA行への100の逆方向の支払い」がある場合に、「両方向の支払いを同時に履行する」という仕組みです。オフセッティングを行うと、結果的には両方向の差額分について、両行の残高が増減することになります。下記の例でいうと、A行の残高が60だけ増加し、B行の残高は60だけ減少します。すなわち、支払いと受け取りの差額分を決済するネッティングを行うのと同じ効果が発生します(図2)。

図2:オフセッティングの仕組み(バイラテラルのケース)

図2:オフセッティングの仕組み(バイラテラルのケース)

ネッティングでは、一度、ネットポジションを算出した上で処理を行います。これに対し、オフセッティングでは、グロスのままで複数の支払指図を同時に履行します。この点において、両者の間には概念的に若干の違いがあるものの、最終的に得られる結果は同じであり、参加者の立場から見た経済的な効果は同一です。

3. 初のインテグレイテッド・システム:カナダのLVTS

世界で初めて2つの決済モードを有する画期的な決済システムを導入したのは、カナダの「LVTS」です。LVTS は、1999年に稼働を開始しました。LVTSには、「トランシェ1」と「トランシェ2」という2つの決済モードが設けられており、トランシェ1は、支払指図が1件ごとにリアルタイムで決済される「RTGSモード」です。一方、トランシェ2は、参加者間で連続的なネッティングが行われる「流動性節約モード」です(図3)。

図3:カナダのLVTSの仕組み

図3:カナダのLVTSの仕組み

このLVTSを嚆矢(こうし)として、その後、多くの決済システムが、この「2つの決済モード」というコンセプトに基づくシステムを構築しました。このようにLVTSは、世界の決済システムに多大な影響を与えました。

4. フランスのPIS

カナダに次いでインテグレイテッド化を達成したのが、フランスです。フランスでは1999年に、ハイブリッド・システム「PNS」と、RTGSシステム「TBF」との間に「流動性ブリッジ」を構築し、2つの決済システム間で流動性(資金)を自由に移動できるようにしました。

これにより、参加者は2つのシステムを一体化したシステムとして使えるようになり、「パリ統合システム」(PIS)と呼ばれるようになりました。これも、一種のインテグレイテッド・システムといえます。

5. ドイツのRTGSプラス

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6. TARGET2

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7. 日銀ネットの次世代RTGS

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8. 決済システムの進化パターン

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