大口決済システム改革1-時点ネット決済システムからRTGSシステムへ-:決済システムの基礎知識2

決済システムの基礎知識

更新日:2019年11月12日(初回投稿)
著者:麗澤大学 経済学部 教授 中島 真志

前回は、決済システムの重要性を解説しました。今回から、「決済高度化」といわれる改革の動きについて、大口決済システムの観点から解説します。今回は、時点ネット決済システムからRTGSシステムの流れについて取り上げます。

1. 大口決済から始まった決済高度化

決済システムの改革は、「大口決済システム」から始まりました。大口決済システムとは、銀行間の資金取引など、金融市場における大口資金の決済を中心に取り扱う決済システムです。各国の中央銀行がその運営に当たり、日本の日銀ネット、アメリカのFedwire、EUのTARGET2などがこれに相当します。

1980年代には、これらの大口決済システムのほとんどは、1日に1回の「ネット決済」を行う「時点ネット決済システム」でした。これは、決済システムに参加する銀行の間で、お互いの支払いと、受け取りの差額(ネット・ポジション)を算出し、その差額を1日の終わりに支払う(または受け取る)という決済システムです(図1)。

図1:時点ネット決済システムの仕組み

図1:時点ネット決済システムの仕組み

2. 時点ネット決済システムの脆弱性

しかし、時点ネット決済システムは「決済リスク」について2つの脆弱性ぜいじゃくせいを有しており、この点が問題となりました。

1つは、1日の最後に最終的な決済が行われるまでの間、未決済残高が次々と累積していき、決済リスクが1日の最後まで残ってしまうという点です。こうした状態で、最終的に、当日の負けポジションが支払えない銀行(デフォルト行)が出てきた場合、他の多くの銀行が資金を受け取れなくなり、深刻な事態が発生します。

もう1つは、「システミック・リスク」の問題です。システミック・リスクとは、ある参加者(銀行)が支払い不能となることで、決済システムの他の参加者の支払いが連鎖的にストップし、これが金融システム全体の混乱に波及するリスクのことです。時点ネット決済では、ある銀行が決済不能となった場合、その銀行を除いて差額の計算をやり直す「組戻し」(アンワインディング)という仕組みがあり、これを通じてシステミック・リスクが引き起こされる恐れがありました。

金融取引の拡大とともに決済ボリュームが増大し、それにつれて決済リスクが膨張する中で、大口決済システムを運営する中央銀行では、時点ネット決済システムが抱えるこうした2つの脆弱性に危機感を募らせるようになりました。

3. RTGSシステムのメリット

そうした中で、中央銀行が目を付けたのが、RTGS(Real-Time Gross Settlement)という決済方法でした。RTGSシステムは、個々の支払い指図を1件ごとにグロスで決済し、その場でファイナルなものとしていく仕組みです(図2)。このため、日中に未決済残高が積み上がることはなく、また、システミック・リスクが発生することもありません。つまり、RTGSシステムは「決済リスクに強い」という性格を有しています。こうした決済リスク面のメリットから、RTGSを採用する中央銀行は徐々に増え、「決済システムのRTGS化」が世界的に進展していきました。

図2:RTGSシステムの仕組み

図2:RTGSシステムの仕組み

4. EUにおけるRTGS化の進展

RTGS化の動きは、1980年代後半からスウェーデン、スイス、ドイツなどで見られ、1990年代の後半に、一気に進みました。意外なことに、これにはEUの通貨統合が深く関係しています。当時、単一通貨「ユーロ」を導入するに当たって、通貨ごとに作られていた各国の決済システム(ドイツの決済システムとフランスの決済システムなど)を相互につなぐ必要がありました。ユーロの金融市場を一体的に運営するには、例えば、イタリアの銀行とスペインの銀行が、国境を越えて、円滑にユーロの資金をやり取りできるようにする必要性があったのです。

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5. アジアでのRTGS化

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6. グローバル・スタンダートとしてのRTGSシステム

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