塗膜形成後に生じる欠陥:塗装・塗料の基礎知識7

塗装・塗料の基礎知識

更新日:2016年11月2日(初回投稿)
著者:元職業能力開発総合大学校 准教授 坪田 実

第7~9回では、塗膜形成後に起きる欠陥について解説します。塗装で大切なのは、何といっても、仕上がりの良い状態が長く維持されること、剥がれたり割れたりしないことです。今回は、仕上がりレベルの指標である鮮映性と、塗膜形成後の欠陥である「目やせ」と「しわ」について解説します。

1. 仕上げの良さを表す鮮映性とは?

ピアノや乗用車の塗装には、鏡面仕上げが求められます。新幹線と新車の車体塗装面を比較してみましょう(図1)。新幹線に比べて、新車の方が周りの景色が鮮明に映っており、鏡面仕上げのレベルが高いといえます。

新幹線と新車の車体塗装面の比較

図1:新幹線と新車の車体塗装面の比較

鏡面仕上げのレベルは、鮮映性という性能で比較します。写像が鮮明に見えるほど、塗装面の鮮映性は良いと評価します。ゆず肌になると鮮映性は明らかに低下します。新車の塗装の場合、研磨工程を設けずに、塗り重ねます。その際、塗装面の表面の粗さは、塗装工程を経るほど小さくなり、鮮映性が良くなります(図2)。

新車の塗膜表面の粗さ

図2:新車の塗膜表面の粗さ(引用:石田裕、化学と教育vol.35、No.6、1987年、P.26)

自動車補修塗装用の教材車を使って、鮮映性を向上させた手法を説明します(図3)。Aの部分はスプレーガンで吹き付けただけの塗装面、Bの部分はP2000 番の耐水研磨紙で水研ぎをした表面、Cの部分は水研ぎ面にクリヤを吹き付け塗装した表面です。Bには細かい傷が無数に入るために、つや消し面になっています。CはAに比べて鮮映性が向上しています。

教材車を使った鮮映性の向上

図3:教材車を使った鮮映性の向上(引用:坪田実、目で見てわかる塗装作業、日刊工業新聞社、2011年、P.54)

鮮映性により、仕上がりのレベルを測ることを説明しました。では、塗膜の形成後に鮮映性が低下する欠陥にはどのようなものがあるのでしょうか? 次の章以降で、目やせとしわを説明します。

2. 目やせ:塗膜が収縮して起こる欠陥

塗装後に起こる欠陥の1 つに、目やせがあります。目やせとは、素地面などの不均一によって、仕上げ塗面に細かなくぼみができることです。MDF(Medium Density Fiberboard:中密度繊維板)の板材に、紫外線(以下、UVとします)硬化塗料で塗装した事例を図4に示します。塗装直後は肉持ち感(漆塗りのように、厚みと鮮映性を合わせたむっくりとした質感)があり、高級建材のように仕上がります。しかし、時間経過により、目やせし、肉持ち感が持続しませんでした。

時間の経過により鮮映性が低下するMDF の例

図4:時間の経過により鮮映性が低下するMDFの例(引用:坪田実、塗料・塗装のトラブル対策、日刊工業新聞社、2015年、P.149)

被塗物は、MDFに意匠性のある印刷フィルムを貼り付けたものです。塗装仕上げは、UV硬化塗料のみです。塗装直後は高い鮮映性を示しましたが、数カ月経過後には蛍光灯の写像がゆがみはじめました。時間の経過により、塗装面に凹凸が現れ、鮮映性が低下したのです。1μm程度の凹凸があれば、鮮映性が低下します。塗膜が膜厚方向にランダムに変形すれば、写像にゆがみが現れます。

目やせの原因
凹凸のある素地に、UV塗料を厚塗りした場合を考えます(図5)。塗装直後は、表面は平滑に仕上がり、膜厚が大きい部分が200μm、小さい部分が100μmになったとします。膜面方向は固定されているため、体積収縮が起きた場合、寸法変化は膜厚方向に限定されます。1%の体積収縮が起きたとすると、塗膜のひずみは、膜厚が大きい部分で2μm、膜厚が小さい部分で1μmとなります。その結果、塗膜の表面層は、図5の点線のように変形し、写像がゆがみます。

図5:目やせが起きる仕組み

図5:目やせが起きる仕組み(引用:坪田実、塗料・塗装のトラブル対策、日刊工業新聞社、2015年、P.149)

UV硬化塗膜は塗膜が厚いため、少しの体積収縮は、鮮映性に影響しないと思う人がいるかもしれませんが、結構厳しいものです。わずかな目やせで図4のように、写像はゆがみます。印刷フィルム面を平滑にしてからでないと、上塗りができないことを肝に銘じておきましょう。

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3. しわ:下塗り塗膜の硬化不足による欠陥

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