液膜転写法とは?:塗装・塗料の基礎知識3

塗装・塗料の基礎知識

更新日:2016年8月25日(初回投稿)
著者:元職業能力開発総合大学校 准教授 坪田 実

前回は、ローラブラシ塗りや浸せき塗りなどの直接法と、電着塗装法について解説しました。今回は、ロールコーターやカーテンフローコーターといった機械を使う液膜転写法について説明した後、塗料が受けるずり速度の求め方と、ロールコーターの仕上がり性に及ぼす塗料の粘弾性の影響を解説します。

1. 液膜転写法

液膜転写法は、ロールコーターまたはカーテンフローコーターという機械により、一定の厚さの塗膜を作り、転写していく方法です。カーテンフローコーターは、主として合板、スレート板や建具など平板状の被塗物しか採用されていません。ロールコーターは、金属製品のライン塗装で使用されています。平板の被塗物ではコイル状に巻かれた薄い鋼板の高速塗装(50~400m/分)や、曲面では製缶工程における円筒缶の表面塗装にも採用されています。

ロールコーター

ロールコーターには、ナチュラル型とリバース型の2種類があり、原理を図1に示します。まず、ピックアップロールで塗料を均一に巻き上げます。次に、塗料はドクターロールへと移送され、均一な厚みの液膜に調整されます。最後にコーティングロールに移送され、被塗物に塗料が転写されます。

図1:ロールコーターによる塗装の原理

図1:ロールコーターによる塗装の原理(引用:中道敏彦・坪田実、トコトンやさしい塗料の本、日刊工業新聞社、2008年、P.53)

ナチュラル型は、コーティングロールと被塗物の移動方向が同じで、リバース型は逆向きです。ナチュラル型は、均一化した液膜の断面をコーティングロールで引き裂きながら塗布します。一方、リバース型は、ロールに移送された液膜をそのまま被塗物に転写・塗布します。ナチュラル型は液膜を引き裂くために、リバース型に比べると平滑な塗装面が得られにくく、膜厚の調整も難しくなります。

カーテンフローコーター

カーテンフローコーターによる塗装の原理を、図2に示します。はじめに、塗料をポンプで吸い上げ、ヘッドへ送ります。吸い上げた塗料を、ヘッドの下の隙間(スリット)から押し流すと、カーテンのような液膜ができます。

続いて、コンベヤに乗せた被塗物を、液膜のカーテンに一定速度で通過させ、塗装します。カーテンの厚さが均一ならば、塗り付け量は均一になります。とても作業効率が良い塗装方法で、一定寸法の平板の塗装に適しています。

図2:カーテンフローコーターによる塗装の原理

図2:カーテンフローコーターによる塗装の原理(引用:坪田実、J.Jpn.Soc.Colour Mater.(色材)Vol.85、No.1、2012年、P.36)

カーテンフローコーター方式の欠点は、曲面を持つ被塗物には塗れない部分が生じることです。また、塗料を流すスリット幅を0.4mm以下にすると、カーテンが途切れやすくなってしまうので、最低でも0.5~0.6mm程度が必要です。そのため薄く塗るのは機構上難しいといえます。

塗膜の厚さは、被塗物の移動速度(コンベヤの速度)に依存します。例えば、カーテン状の塗料が流れる速度を0.5m/s、コンベヤの速度を2.5m/sとすると、塗料は5倍に引き伸ばされます。スリット幅が0.5mmとすると、塗付膜厚は0.5/5=0.1mmとなります。

2. 塗料が受けるずり速度

実際に使われている塗料は、多少なりとも弾性を持つ粘弾性体です。それゆえ、見かけの粘度ηaは、塗装時に塗料が受けるずり速度Dの増大に伴い、図3のように変化します。

図3:さまざまな作業でのずり速度Dと見かけの粘度ηaの関係

図3:さまざまな作業でのずり速度Dと見かけの粘度ηaの関係

塗装方法によって、ずり速度Dは大きく変わります。ずり速度Dが一番小さい塗装方法は、浸せき塗り(ディッピング)です。塗料槽から引き上げるときのずり速度Dの求め方を、図4で説明します。

図4:浸せき塗りにおける、ずり速度Dの求め方

図4:浸せき塗りにおける、ずり速度Dの求め方

次に、ロールコーター、カーテンフローコーターそれぞれで、塗料がどの程度のずり速度Dを受けるのかを解説します。

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3. ロールコーターでの仕上がりに影響を及ぼす要因

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