AIという手法:組織開発の基礎知識5

組織開発の基礎知識

更新日:2022年4月28日(初回投稿)
著者:神戸大学 大学院経営学研究科 経営学専攻 教授 鈴木 竜太

前回は、プロセスとしての組織開発の方法を紹介しました。今回は、近年注目されているAI(Appreciative Inquiry)の手法を紹介しながら、組織開発の実行について解説します。

1. 悪いところを直すという考え方はなぜ失敗するか

組織開発の方法や考え方はとても幅広く、どの組織開発の手法も理論的な基盤を持ち、コンサルティングなどによる手法も確立しています。しかし、これらを用いたからといって、必ずしも組織開発がうまくいくわけではありません。一般的に組織開発は、組織の良いとはいえない状態を直すために行います。しかし、このような姿勢が組織開発を進まなくしてしまう理由になることも少なくありません。

悪いところを直すという姿勢には、なぜ組織開発をうまく実行させなくしてしまう問題があるのでしょうか? 組織をより良くするために、今うまくいっていない理由を探し、それを改めるというのは、私たちが個人的にもよく使う手法です。

このようなアプローチは、ギャップアプローチ、あるいは問題解決アプローチと呼ばれます。ギャップアプローチの基本的な進め方は、問題の特定、原因の分析、可能な解決策の検討、行動計画の4つです(図1)。例えば、工場において製品の歩留まりが悪ければ、その原因を探り、もし技術的な問題であれば、その解決策を考えます。特定の社員やチームの問題であれば、その人やチームに対して何かしらの働きかけをすることになります。

図1:ギャップ(問題解決)アプローチ

図1:ギャップ(問題解決)アプローチ

このように、ギャップアプローチとは、あるべき姿、ある基準から劣っているものを探し、そのギャップを埋めるための方策を考えるやり方ということができます。しかし、マネジメント上の問題は複合的に起こっており、特定の原因に絞ることができるとは限りません。仮に原因を特定できたとしても、それが本当の原因かどうかは分かりません。先入観があれば、いわゆるスケープゴート的に原因が決まってしまうことも少なくありません。そのため、たとえ解決策が示され、実行に移されたとしても、変わるように言われた側は問題の責任を押し付けられたような格好になり、積極的に変わる気持ちが湧かず、前向きに変わっていこうという姿勢にはなりにくいのです。

また、もう一つの理由として、このギャップアプローチは、現在の体制における理想の姿と、これまでの自分たちの姿のギャップを念頭に置いています。そのため、そのギャップを埋めることが、未来においても、より良い姿になるとは限らないことがあります。言い換えれば、過去と現在の延長線上に未来があるとは限らないということです。例えば、ギャップアプローチでは、今の生産プロセスにおいてボトルネックになっているところを直そうという視点になりがちです。一方で、そもそも今の生産プロセスとは異なるプロセスを考える方がよいという視点には、なかなか至りにくいものです。人間は誰しもそうであるように、自分たちの悪いところを指摘され、それを直した方がよいといわれても、前向きに変えていこうとは思いにくいのです。

2. AIによるアプローチ

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