人材開発と組織開発の違い:組織開発の基礎知識3

組織開発の基礎知識

更新日:2022年3月9日(初回投稿)
著者:神戸大学 大学院経営学研究科 経営学専攻 教授 鈴木 竜太

前回は、組織開発の歴史を紹介しました。組織開発とは、組織を健全な良い方向に変えていく取り組みです。ただし、解雇や組織再編など、人を入れ替えることによって組織を変えていく取り組みは含みません。現有の人材を生かすことによって、組織をより良くすることが組織開発です。組織開発は、組織のさまざまなレベルに働きかけ、成し遂げられます。このうち、組織の個人に働きかけることは人材開発であり、組織開発でもあるといえます。今回は、この人材開発と組織開発の違いと関係性について解説します。

1. 組織開発のレベル

組織開発の中には、さまざまなレベルが存在し、人材開発はその一つに含まれます(図1)。組織開発と人材開発は、ともに当該組織がより良くなることを目指して行われる働きかけです(第1回)。ただし、人材開発は個々人に焦点を当て、それを成し遂げようと考えるのに対し、組織開発は個々人だけにとどまらず、職場や組織など、個人がよって立つ環境そのものに働きかけることを通じて、より良い組織を目指す取り組みです。

図1:組織開発が働きかける対象とするシステムのレベル

図1:組織開発が働きかける対象とするシステムのレベル

では、組織開発が個人だけに着目するのではなく、その背後にある職場や組織といった環境にも着目するのはなぜでしょうか。それは、組織開発にはクルト・レヴィンの法則(場の理論)による、B(個人の行動)=f(p(個人),e(環境))という考えがあるからです(第2回)。例えば、子供の教育において、子供の考え方や行動は、その子供自身だけに起因するのではなく、子供の家庭環境や、親の子供への接し方、学校のクラスの状況など、子供が置かれた環境にも起因します。これは、子供と家族、友人や教師などとの関係が変わることで、子供の行動が大きく変わることを考えれば自然のことです。むしろ、環境に働きかけずに、個人に働きかけるだけでは、一時的に変わってもすぐに元に戻ってしまうなど、根本的な変化につながらないことが多くあります。

このことからも、組織開発と人材開発は区別されながらも、大いに関係があることが分かります。これを踏まえれば、人材開発は、組織開発を含んで行うことがより有効であると考えることができます。

2. 組織開発と人材開発の関係性

人材開発を行う場合、環境への働きかけを含んだ組織開発を考えることが重要です。その理由は、個人を変えるには、環境にも働きかける方が有効であること以外にもあります。個々人の能力開発に焦点を絞った人材開発だけを行うことは、本来、組織全体の成果につながることを目的としていたにもかかわらず、自分がやるべきことさえやればよいという意識に止まってしまうことがあるからです。職場や組織に働きかけていくことで、個人が職場や組織にも目を向け、個々人の「自分さえ」という意識が、「私たち」、さらには「全ての人が」、「みんなが」という意識に変わる可能性を持ちます。

図2に、個人と環境(ここでは関係を含んだシステム)の両者の視点の関係を示します。ここでは、個人だけに焦点を絞ることの問題とともに、システムだけに焦点を絞ることの問題も示されています。4つのセルの左上は個人に焦点を絞った際のポジティブな側面、右上はシステムに焦点を絞った際のポジティブな側面、左下は個人だけに焦点を絞った際のネガティブな側面、右下はシステムだけに焦点を絞った際のネガティブな側面を示しています。

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