組織開発の歴史:組織開発の基礎知識2

組織開発の基礎知識

更新日:2022年2月10日(初回投稿)
著者:神戸大学 大学院経営学研究科 経営学専攻 教授 鈴木 竜太

前回は、組織開発の定義を紹介しました。組織開発とは、組織を健全な、よい方向に変えていくための取り組みです。今回は、経営学の視点から組織開発の歴史を紹介します。組織開発を実現するために、これまでにさまざまな取り組みが行われ、多くの分野やアプローチが開発されてきました。本稿では、現在の組織開発の源流となった、2つの組織開発の源流と、それに続く4つの重要なアプローチ、また近年の動向を紹介します。

1. 組織開発の2つの源流

表1に、組織開発のアプローチを年代別に示します。表が示すさまざまな組織開発の背後にあるのは、B=f(p, e)という考え方です。これを、クルト・レヴィンの法則(場の理論)といいます。クルト・レヴィンは、組織開発のレジェンドであり、社会心理学者の父とも呼ばれています。B(Behavior)は個人の行動、p(Personality)は性格や能力、あるいは態度などの個人的要因、e(Environment)は現在の社会的環境を意味します。ここでいう社会的環境は、経営組織を念頭にいえば、一緒に働く仲間や同僚、マネージャーやその集団を指します。f(Function)は関数です。つまり、個人の行動は、個人的要因と職場や同僚の社会的環境の関数であると考えられます。

表1:組織開発のアプローチと歴史(Rothwell, W. J. et al.、Practicing Organizational Development、A guide for leading change 3rd edition、John Wiley and Sons, Inc.、2010を基に筆者作成)
    サーベイリサーチ グループダイナミクス 個人(間)の
スキル
組織変革
1940 第二次世界大戦        
1950 第二次世界大戦
復興期
サーベイフィードバック   コンサルティング  
1960 市民運動・
ベトナム戦争
チームビルディング リーダーシップトレーニング  
1970 女性解放運動 アクションラーニング ワークショップ プロセスリデザイン
1980 日本企業の躍進 組織風土サーベイ TQM/QWL ネゴシエーションスキル 学習する組織
1990 IT AI 自律型チーム アセスメント  
2000 グローバリゼーション アクションリサーチ   360度フィードバック  
2010   コーチング  

組織開発の念頭に置かれているのは、B(個人の行動)です。そのため、取り組みの働きかけは、個人に働きかけるか、個人が置かれている社会的環境に働きかけるかの2種類になります。もう少し踏み込んでいえば、組織開発では、より社会的環境への働きかけを意識しています。ここでは、現在の社会的環境に働きかけることで、個人の行動を変えていく例として、Tグループとコンサルティングの2つについて説明します。

・Tグループ

Tグループは、クルト・レヴィンを中心としたNTL(National Training Laboratories)研究所による手法です。Tグループは、現在でも研修などで行われるチームビルディングに似た手法です。議題を決めずに自由に対話し、お互いにフィードバックや気付きを共有することで、グループそのものやプロセスを見直し、コミュニケーションなどを改善します(図1)。

図1:自由に対話し、お互いにフィードバックや気付きを共有する

図1:自由に対話し、お互いにフィードバックや気付きを共有する

当初、クルト・レヴィンは、Tグループによって、アメリカ人とユダヤ人の雇用差別を解消しようと試みました。これ以外にも、Tグループの手法によって、さまざまな社会課題や経営課題が解決されています。また、現在でも、当事者同士がお互いのプロセスを見直すための手法として、Tグループは多く用いられています。このように、Tグループの手法は、p(性格や能力、あるいは態度などの個人的要因)とともにe(現在の社会的環境)にも働きかけることで、B(個人の行動)を変えていく取り組みと捉えることができます。

・コンサルティング

コンサルティングは、イギリスのタビストック人間関係研究所による、社会技術システム論をベースにした方法です。タビストック人間関係研究所といえば、南ヨークシャーの炭鉱における事例が最も有名です。この炭鉱では、かつて小さな作業集団による、短壁方式の採掘を行っていました。しかし、機械化技術の発展により、より大量に採掘ができる長壁方式による採掘に変更したところ、むしろ生産性が減少してしまいました。これは、長壁式採炭に置き換わったことで、短壁式採炭における作業集団の親密なコミュニケーションがなくなってしまったからです。

そこで研究チームは、両方のよさを取り入れた、混成型長壁方式の導入を提案します。これは、技術の発展だけではなく、それに伴う社会的な要素が必要であるという、社会技術システムの考え方のスタートにもなりました。現在でも、原発や鉄道など高度な技術と安全を扱う分野では、技術だけではなく、それを扱う人や集団の問題との兼ね合いが考えられています。すなわち、このアプローチは、主にe(現在の社会的環境)を変えることで、B(個人の行動)をよりよくしようとする取り組みといえます。

2. 組織開発の4つのアプローチ

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3. 近年の動き

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